5Gが創出する新ビジネス
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» 2019年12月26日 11時49分 公開

5Gビジネスの神髄に迫る:京セラのローカル5G戦略を聞く 基地局と端末を同時開発、5Gのみのスタンドアロンで勝負 (1/2)

次世代通信規格「5G」を用いた通信サービスを、企業や自治体などが限られたエリア内で提供する「ローカル5G」。そのローカル5Gに参入を計画し、基地局や端末の開発を進めているのが京セラだ。どのような戦略で市場開拓を進めようとしているのだろうか。

[佐野正弘,ITmedia]

 次世代通信規格「5G」を用いた通信サービスを、企業や自治体などが限られたエリア内で提供する「ローカル5G」。そのローカル5Gに参入を計画し、基地局や端末の開発を進めているのが京セラだ。スマートフォンや、PHSの基地局などを長年手掛けてきた同社だが、その強みを生かし、どのような戦略で市場開拓を進めようとしているのだろうか。基地局と端末の開発者に話を聞いた。

大手に対抗せず小規模なニーズを狙う

 2019年12月24日に総務省がローカル5Gの免許申請を受付開始したことで、盛り上がりを見せているローカル5G。京セラは2019年10月に開催された「CEATEC 2019」でローカル5G用の基地局や端末を公開、ローカル5Gへの参入姿勢を明らかにしている。

 確かに京セラは、これまでPHSの基地局を手掛けたり、スマートフォンを開発したりするなど、通信事業に強みを持つ企業の1つだ。だがそれらは携帯電話会社向けが主体で、ローカル5Gのように特定の企業や法人に向けたものではない。では、京セラはなぜローカル5Gへの参入を打ち出したのだろうか。

 京セラの研究開発本部 コミュニケーションシステム研究開発部長の福島勝氏によると、同社は通信業界だけでなく、医療やエネルギー、ヘルスケアなど幅広い事業に取り組んでおり、それらを組み合わせることで、スマートシティーの実現につながってくることが、ローカル5Gへの参入背景にあるという。

京セラローカル5G ローカル5Gを展開することで、スマートシティーの実現に貢献したいという思いがある
京セラローカル5G ローカル5Gのユースケースやネットワークについて語っていただいた、福島氏

 ローカル5Gといえば、工場や港湾、ショッピングモールなどでの利活用が主に検討されているが、京セラでは、小規模な自治体でのローカル5G活用を目指して事業化を進めてきたとのこと。大企業や都市部の自治体など「大きな所は大手がやる」(福島氏)とのことで、同社ではあくまで小規模なニーズを狙った機器開発を進めることで、すみ分けを図りながらも新たな需要開拓を進める狙いがあるようだ。

 具体的には、移動弱者を支えるモビリティや、「エネルギーの地産地消」といった形で、小規模で展開しているエネルギー関連事業者などを想定しているとのこと。ローカル5Gを地域の社会課題解決に結び付け、京セラが持つ強みを生かしたサービスを包括的に提供することにより、事業を拡大していきたいとしている。

京セラローカル5G 工場、オフィス、商業施設など限られたスポットでの展開を想定している

 とはいえ、現時点では同社にもいくつか引き合いは来ているものの、5Gで「何かやりたい」「何か試したい」という漠然とした要望が多く、具体的な取り組みはまだ明確に見えていないという。「(携帯キャリアの)5Gサービスがある中で、ローカル5Gで何をやるのかというのはキーポイントだと思っている。それをどう打ち出していくかのせめぎ合いになるのではないか」と福島氏は話しており、やはりローカル5Gを生かせる明確なアプリケーションを、いかにして生み出せるかがビジネス上ポイントになると捉えているようだ。

基地局は28GHz帯に非対応、その理由とは

 京セラは、ローカル5Gへの参入に向けて「基地局」と「端末」の双方を開発しているが、それにも同社の狙いが大いに反映されている。

京セラローカル5G ローカル5Gでは、基地局と端末を開発している

 まず基地局となる「ローカル5Gシステム」を見ると、福島氏が「屋内に設置する上では大きさが効いてくる。小型に作っていることを特徴にしたい」と話す通り、大きさが5リットル、200(幅)×250(高さ)×100(奥行き)mmと、非常にコンパクトなサイズを実現。PHS基地局などの開発経験を生かし、密閉型のボディーを実現していることもポイントとなっている。

京セラローカル5G 「CEATEC 2019」で展示された「ローカル5Gシステム」。ローカル5Gの帯域のうち4.5GHz帯に対応したコンパクトな基地局になる

 また、ローカル5GシステムはO-RAN(Open Radio Access Network)に準拠していることも大きな特徴といえる。O-RANの仕様に準拠することで、分かりやすく言えば同じモバイルネットワークの中に、異なるベンダーの基地局を混在できるようになる。

 O-RANへの準拠は開発当初より念頭に置いていたそうで、あえて共通規格に対応することで顧客の機器導入の選択肢を広げることにより、京セラの機器を導入してもらいやすくする狙いがあるようだ。それゆえ福島氏は「いいもの(基地局)があれば、他社から買ってきて追加してもらってもいい」と、大手ベンダーのように自社製機器のみの採用にこだわらない姿勢を示している。

京セラローカル5G 「ワイヤレステクノロジーパーク2019」でNTTドコモが展示した、O-RANによるマルチベンダーの基地局構成。複数ベンダーの機器を1つのネットワークに混在できるのが大きな特徴となる

 しかしながら、ローカル5Gシステムが対応する周波数帯は4.5GHz帯のみとなっている。先に総務省が免許申請の受付を開始した28GHz帯(28.2〜29.1GHz帯)には対応していないことから、現時点では使うことができない。なぜ、早期にサービス提供できる28GHz帯に対応しなかったのか。

 その理由について福島氏は、28GHz帯がノンスタンドアロン(NSA)での運用となるためだと話している。28GHz帯は携帯電話会社との調整が必要で、上りと下りの帯域幅を自由に調整できないなど、ネットワークの自由度が低いことに加え、NSAでは4Gのネットワークも必要になるため「コストが相当高くなる」(福島氏)という。

 そうしたことから京セラでは、もともとターゲットとしている小規模の自治体や企業への対応を重視すべく、自由度が高くて低コスト、なおかつ5Gのみのスタンドアロン(SA)運用で利用できる4.5GHz帯のみの対応に絞ったのだそうだ。先にも触れた通り、現在はローカル5Gの活用法がまだ明確になっておらず、当面はPoC(概念実証)が続くことから、他社に遅れることはあまり気にしていないと福島氏は話している。

京セラローカル5G 5Gのみのスタンドアロンで、4.5GHz帯に対応した基地局を開発している
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