ノキアソリューションズ&ネットワークス(以下、ノキア)が2019年12月11日、日本の企業や自治体に向けてローカル5GやプライベートLTEを提供し、IoT産業向けの活用を促進するため、日本企業5社と戦略的エコシステムパートナーシップを構築することを発表。同日に実施された記者発表会ではノキアと、提携する各社の具体的な取り組みについて説明がなされた。
ノキアのグローバルエンタープライズ シニアバイスプレジデントであるクリス・ジョンソン氏は、同社がプライベートLTEやローカル5Gに力を入れる理由と、その強みについて説明。ジョンソン氏によると、ノキアの主力事業は携帯電話事業者向けが中心だが、今後大きな成長が見込まれるプライベートモバイルネットワークを活用したエンタープライズ事業に力を入れており、エンタープライズに関連した部門を設けるなどして市場開拓を進めている。
その背景には、IoTなどを活用した製造業のデジタル化を進める「インダストリー4.0」が急速に進んでいることがある。ノキアが現在この分野に力を入れるようになった理由についてジョンソン氏は、1つは周波数帯域の利活用の幅が広がったことを挙げる。免許不要な周波数帯の活用に加え、世界各国で産業用途にプライベートLTEやローカル5G用の周波数帯を確保する動きが進み、プライベートなモバイルネットワークの構築がしやすくなったことが大きいようだ。
2つ目は携帯電話以外のデバイスの拡大であり、ウェアラブルデバイスやセンサーなど、モバイル回線に接続できるデバイスが2500種類にまで増えているとのこと。そしてもう1つは、IoTを活用した産業用のソリューションを提供する企業が増えていることだという。
そうした環境が整ったことを受け、ノキアでは既に世界各国で、120以上のプライベートモバイルネットワークの導入を手掛けている。導入した業種・業界も、運輸からエネルギー、製造業から公共事業に至るまで幅広い。それだけに、プライベートLTEやローカル5Gの基地局数は、携帯電話産業の2倍となる1400万にまで広がる可能性があるとジョンソン氏はみており、この市場に大きなビジネスチャンスがあると同社は見込んでいる。
一方で、プライベートLTEやローカル5Gは、炭鉱や港湾など一定の範囲だけをカバーするものから、携帯電話会社と連携して全国をカバーする必要があるものまで、業種や業界に応じて多様なケースへの対応が求められる。携帯電話事業者向けのネットワークとは異なり、個々のユースケースに応じた複雑な対応が求められるのも事実だ。
そんな中でノキアは、長年携帯電話事業者とビジネスを展開してきたことから無線通信技術に強みを持つだけでなく、端末から基地局、コアネットワークからエッジコンピューティングに至るまで、全てをカバーできる製品やソリューションを保有している。それに加えてさまざまな産業に強みを持つ専門家を雇用したり、幅広い業種・業界の企業とパートナーシップを強化したりすることで、幅広いケースに対応できる体制を整えていることも強みだと、ジョンソン氏は話す。
ではなぜ、ノキアは日本でのプライベートモバイルネットワークに力を入れるようになったのだろうか。執行役員社長であるジョン・ハリントン氏によると、そこにはやはり周波数帯の開放が大きく影響したようだ。
日本では、28GHz帯と4.5GHz帯の一部をローカル5G用の周波数帯として活用すべく制度整備が進められており、特に28GHz帯の一部は2019年末から2020年早期の免許割り当てがなされる予定だ。ハリントン氏によると、ノキアでは米国や韓国、オーストラリアで28GHz帯を活用した5Gネットワークの構築に携わった経験を持つことから、日本のローカル5Gでもその経験が生かせると判断したという。
そこでノキアは、ローカル5GやプライベートLTEの国内展開に向け、さまざまな分野に強みを持つ企業と提携。具体的には、産業向けIoT分野では日鉄ソリューションズ、グローバルIoT分野では丸紅、フルMVNOの分野ではインターネットイニシアティブ(IIJ)、マルチクラウドおよびグローバルデータセンター分野ではエクイニクス、そしてスマートシティーや社会インフラ分野では日立国際電気と、それぞれパートナーシップの締結を発表している。
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