10月29日、KDDIは決算会見を開催した。料金値下げの影響でマルチブランド通信ARPU収入は下がったが、グループMVNO収入とローミング収入でモバイル通信料収入は117億円の増加となった。
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2021年10月30日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。
ただ、楽天モバイルは10月に39都道府県の一部でKDDI網へのローミングを打ち切るなど、今後、ローミング収入は減少する傾向になる。その点について高橋誠社長は「楽天のローミングについて粛々と対応している状況。楽天モバイルも『非常に早いスピードで広げます』と言っていたり、あるいは今度は『半導体不足で遅くなります』と言ってみたり、さらに『ローミング費用が高すぎる』と言ってみたり、いろんなことをおっしゃるので、ちょっとどうなのかなと思うところはありますが粛々と対応している。
基本的なルールは70%を達成されたエリアから順次解除を行っている。この間、楽天さんがどこのエリアでローミングを終了すると発表されているが、あのようなイメージになります。
ただ、思っている以上に『70%を達成したエリアでも引き続き貸してほしい』という基地局数が結構多く、我々が今年度、想定していたよりもローミング収入が増えるという風に思っている。
今年度でピークアウトしていき、来年度から徐々に減っていくが、(楽天モバイルは)結構、大変だろう。
ドコモやソフトバンク、我々は99.9%のエリアカバーを持っていて、楽天モバイルは96%を目指している。70%を超えたところからローミングを解除する。そういうエリアから基地局を打っていかないといけない。結構大変だと思うが、エリアができていない部分も出てくるので、引き続き対応していく。
一方で、来年度は3G停波をするので、これまで撤去費などがかかっていたが、今年度中に引き当ててしまうので、来年からの負担は軽くなる。ローミング収入の減少と3Gを巻き取るコストが減るので、バランスがとれるのではないか」と語った。
KDDIは2022年3月末までに3Gサービスを停波する。総務省では3Gで使わなくなったプラチナバンドを新規事業者に割り当てるという議論を進めつつある。真っ先に停波するKDDIが最初のターゲットになりそうな気もするが、KDDIとしてはこの問題をどう捉えているのか。
高橋社長は「3G停波は順調に進んでいる。総務省のなかでは電波政策がいくつか走っているが、そのなかの重要なテーマ。去年の11月から今年の8月までデジタル変革時代の電波政策懇談会で議論されていて、我々もパブリックコメントを出している。
この業界が長い方はご存じだと思うが、800MHzの上下の再編など国の政策によって、電波の入れ替えをやってきた。あのころ、今ほどお客さんは少なかったけど、かなり大変だった。周波数の再配置というのは帯域が開いたからと言ってすぐに使えるわけではなく、お客様に多大な影響を与えるので、そのあたりを丁寧に議論いただきたいと申し上げているところ。
この多大なるコストを各事業者が確保しながらやっていくことが、5Gの展開の速度を緩めることにならないのか。国力を上げることにつなげようとしているBeyond5Gにつながっていくのかというのを考えていかないといけない。そう簡単な問題ではないと思っている」とした。
プラチナバンドにおいてはソフトバンクが長年、獲得できずに苦労してきたイメージが強いが、KDDIは海外と異なる周波数帯の上下割り当てをされていたことがあり、すんなりと海外の端末を調達するということができなかったのだ(CDMAを採用していたベライゾンがiPhoneを導入しても、すぐにKDDIが採用できなかった)。KDDIは上下を入れ替えるため、相当な苦労をしてきたのであった。
ソフトバンクもKDDIもプラチナバンドを使えるよう耕すために相当なコストを負担してきた。そのため、3Gが終わるからといって、すぐに「他社に渡しなさい」といわれても、釈然としない思いがこみ上げてくるのかもしれない。
© DWANGO Co., Ltd.