個人向けMVNOでトップシェアを誇るIIJmioだが、どちらかといえば、フルMVNOやeSIMといった技術面、制度面で他社をリードしている印象が強い。インターネットを先駆けてビジネス化したIIJなだけに、MVNO事業にもその実力が発揮されている。一方で、IIJmioでは端末の販売にも注力しており、回線数の伸びとともに規模を拡大している。「IIJmioサプライサービス」が、それだ。
その名の通り、当初はIIJmioのユーザーに限定して端末を提供していたIIJmioサプライサービスだが、2022年8月に提供条件を変更。同社の回線を契約していないユーザーも、SIMフリースマートフォンなどを単体で購入できるようになった。もちろん、回線とひも付けた割引の提供も積極的に行っている。
【訂正:2022年12月19日16時15分 初出時、端末購入の提供条件変更時期を「2022年7月」としていましたが、正しくは「2022年8月」です。おわびして訂正いたします。】
特筆すべきは、そのバリエーションの多彩さだ。IIJの決算説明会では、代表取締役社長の勝栄二郎氏が「今は端末の品ぞろえを増やしているが、恐らくMVNOの中では一番たくさんの端末を供給していると思っている」と自負したほど。スマートフォンにとどまらず、タブレットやスマートウォッチ、PCといった周辺ジャンルにもラインアップを拡充している。そのバリエーションは、あたかも通信機器に特化した量販店のようだ。
なぜIIJはここまで端末販売に力を入れるのか。また、スマートフォン以外に製品を広げている目的はどこにあるのか。その狙いを、MVNO事業部 コンシューマサービス副部長 サービス企画課長の辻久司氏と、課長代理の永野秀太郎氏、久保田真朗氏に聞いた。
―― 最初に、MVNOであるIIJmioが端末の販売を始めたきっかけや、今のようにバリエーションを増やしている理由を教えていただけないでしょうか。
永野氏 SIMフリーのスマートフォンを取り扱い始めたのは2015年7月のことで、今年で7周年を迎えています。長い間やってきましたが、最初のころは、出てくるSIMフリースマートフォンにも限りがあり、年に数機種を販売するので精いっぱいでした。
根幹としてあったのが、可能な限りユーザーに求められるデバイスを提供したいということです。これは端末の数が増えた原因でもあります。IIJは通信サービスをやってきましたが、「格安スマホ」と総称されるようになったことからも分かるように、お客さまに使っていただくデバイスも合わせて盛り上がらないと、市場として成長しません。MVNOという立場から、SIMフリーデバイスの市場を盛り上げていけるようなショーケースになりたい。このような思いで、端末を取りそろえてきました。
IIJは創世記から通信サービスをやっているので、ユーザーにはガジェット好きが多い一方で、IIJmioはデータをシェアできることも特徴の1つになっているため、ファミリーでお使いいただくユーザーも徐々に多くなってきました。そこで老若男女が安心してお使いいただけるよう、ミドルレンジを中心にしつつも、性能のとがったものやフラグシップにも手を伸ばしていきました。お子様がスマホデビューできるようなローエンドもそろえ、価格帯やジャンルが広がっていった経緯があります。
辻氏 2015年は参入しているメーカーがすごく少なかったですね。HuaweiやASUSなど、ごく一部でした。その中で、端末メーカーとの関係を作っていきました。お客さまの選択肢を増やしたいと思っていたからです。
―― 通信サービスと両輪という意味で、スマートフォンを扱うのは分かるのですが、最近ではSIMカードの入らない周辺機器も販売しています。これはなぜですか。
永野氏 SIMフリースマホを扱っているメーカーといっても、スマホだけを開発しているわけではないですからね。スマホはインターネットに接続するコアとなるデバイスで、周辺のデバイスと幅広く連携することでデジタルライフが豊かになります。であれば、周辺機器も取りそろえておきたかった。IIJは、オフ会(IIJmio meeting)でユーザーの声を直接聞く機会を設けていますが、そういうところでも同じような声が挙がっていました。それがきっかけで、時代もあり、ユーザーが求めているのであればということでスマホ以外もそろえていくようになりました。
―― とはいえ、タブレットやスマートウォッチはまだ分かるのですが、ポータブル電源が売られていたのを見たときには、噴き出してしまいました(笑)。
久保田氏 デバイスの幅を広げたいというオーダーは、会社からも聞いていました。投入はしましたが、ある意味、チャレンジングである自覚はあります(笑)
辻氏 真面目に販売戦略を考えてというより、若干ですが突っ込んでいただきたいところはありました(笑)。これはポータブル電源だけでなく、モトローラの限定パッケージもそうで、お客さまのニーズがあることは大前提ですが、笑っていただけるようなことも地味にやってきました。
永野氏 ただ、突拍子がないように見えつつも、背景には2台目のスマホとして5000mAhの大容量バッテリーを搭載したスマホが売れているということがありました。だったら、その延長線上でポータブル電源も扱ってしまえ、となりました。
―― 実際、ポータブル電源は売れたのでしょうか。
永野氏 数で言えばそこまでたくさんというわけではありませんが、意外と売れました。
久保田氏 スモールスタートと言い換えることもできますが、ゼロではありません。
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