スポーツイベントの「動画SNS投稿禁止」はアリかナシか――SNS全盛時代に無視できない配信権問題石川温のスマホ業界新聞

» 2023年11月26日 10時00分 公開
[石川温]
「石川温のスマホ業界新聞」

 11月16日から19日にかけて「フォーラムエイト・ラリージャパン2023」が愛知県豊田市で開催されているので、取材に行ってきた。とはいっても、モータースポーツ取材は二の次で、実はKDDIが大会にスポンサーしつつ、新しいラリーの観戦スタイルを実現しようというので足を運んだのであった。

この記事について

この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2023年11月16日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。


 KDDIではWellpine Motorsportとともにラリーカーにセンチ単位で位置情報を測位できるデバイスを搭載。車両の位置情報だけでなく姿勢などのデータを取得し、走行後、データを抜き出し、デジタル空間にラリーカーが疾走する様子を再現するという取り組みを行っていた。

 KDDIが開発したというデバイスは測位するアンテナを2つ搭載しており、若干、設置位置がズレているため、クルマが向いている方向を再現できるというのが特徴だ。これにより、カーブの進入がどれくらいの角度なのかなども再現でき、デジタルツイン上での再現性が増しているのだ。

 ここで「もったいない」と感じるのが、走行データをリアルタイムに取得できないという点だ。

 実はレギュレーションによって、走行データを通信経由でリアルタイムに抜き出すのは禁止されているという。ラリーというレースは広大な面積を疾走して、タイムを競うものであり、観客からすればリアルタイムで様々なクルマの情報を知れれば、レースの見方が一気に変わってくるだろう。

 ただ、国内で最も人気のレースカテゴリーである「スーパーGT」もリアルタイムの情報取得は禁止されているのだが、これをやると参戦するためのコストが上がるからというのが理由らしい。確かにチームに継続して参戦してもらうため、コストをできるだけセーブするというのも理解できなくはない。

 ただ、クラッシュした瞬間も手元のスマホですぐに状況を確認できれば「ここの操作を誤ったのか」とレースの理解も深まり、さらに楽しくなるだろう。

 実はリアルタイムの情報共有に積極的なのが、Netflixでのドキュメンタリー配信が好調で、アメリカを中心に人気が高まったF1と、今年、「SFgo」というアプリを配信し、リアルタイムに映像や車両データを配信しているスーパーフォーミュラだ。スーパーフォーミュラは数年前までスタンドで閑古鳥が鳴くほど、人気の無いカテゴリーであったが、今年はキッザニアをタッグを組んでファミリー層の取り込みを強化するなどして、最終戦は2日間合計で4万3000人が訪れるなど大盛況のシーズンとなった(観客を集めすぎて鈴鹿サーキット周辺が大渋滞し、予選を見られない観客が続出するなどの不手際も発生)。

 また、スーパーフォーミュラはABEMAでも無料配信したことにより、ファン層を一気に拡大した模様だ。

 スーパーフォーミュラが凄いのはSFgoで配信されている動画をキャプチャしてSNSに投稿してもOKというルールになっている。配信権に関してつべこべ言わずオープンな状況になっていることで、SNSで盛り上がりを見せているようだ。

 その点、ラリージャパンは、スタジアムや公道でラリーカーを見つけて動画を撮影しSNSに上げるのは禁止されているという。

 スポーツ中継に関しては、放送権や配信権が高額なため、SNSでの動画共有をNGにしたくなるのも理解できるが、もはやそんなことを言っていては、SNS全盛時代に取り残され、ファン離れが起きてしまうのではないだろうか。

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