「TORQUE G06」は海上でも使えるアウトドアギアか 実際にヨットに乗って試してみた海で使うIT(1/3 ページ)

» 2023年11月21日 10時00分 公開
[長浜和也ITmedia]
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 京セラの「TORQUE G06」は、2023年9月28日に発表されて11月から個人ユーザーに向けた出荷も始まったアウトドア志向のスマートフォンだ。

 京セラは2023年5月に個人向け携帯端末事業からの撤退を発表しており、個人向けモデルについは「方針としてコンシューマーの通信端末は事業を収束させていく」となっているが、TORQUEシリーズは「法人向けでも多くのお客さまにご愛顧いただいており、個人・法人のお客さま双方のご期待に応える」と継続することになっている。“タフネス”という強烈で唯一無比な個性がTORQUEの存続を決めたといえる。

 というわけで、TORQUE G06に対して、これまでの一連の連載と同様にアウトドア、特にパワーボートやセーリングクルーザー(この記事では日本で主に使われている「ヨット」という単語を用いる)で操船操帆しながら使用する状況を想定して使い勝手を評価する。

TORQUE G06 海上レビュー タフネスデバイスはこの船にやってくる。TORQUE G06も例外ではない
TORQUE G06 海上レビュー ディスプレイは5.4型(1080×2160ピクセル)の有機ELを採用した。TORQUE 5Gと比べてディスプレイサイズはわずかにシュリンク(しかしその差は0.1型)して解像度は同等だが有機ELのおかげでより明瞭な画質となった
TORQUE G06 海上レビュー 左側面にはユーザーが任意の機能を割り当てられるダイレクトボタンと音量調節ボタン(大、小それぞれ)を備える
TORQUE G06 海上レビュー 右側面には電源キーと初期設定ではカメラのシャッター機能を割り当てたダイレクトボタンを用意する
TORQUE G06 海上レビュー 上面にはTORQUE G06で新たにダイレクトボタンを追加した。遭難時に緊急通報機能を割り当てることでエマージェンシーボタンとしても利用できる
TORQUE G06 海上レビュー 下面はUSBを搭載する
TORQUE G06 海上レビュー USBは端子の金属部材を海水の腐食から守るためにカバーを備える。防水パッキンはカバー側でなく本体側にある

堅牢性能は必要にして十分 金属板への落下試験もクリア

 キャビンの中で操船するパワーボートはまあいいとして、露天甲板で波をかぶりながら操船操帆する状況が少なくないヨットやシーカヤック、SUPなどでスマートフォンを使う場合、当然ながら堅牢(けんろう)性能は重要な要素となる。従来のTORQUEシリーズでも製品登場時において最新のMILスペックに準拠した耐久テストの他、京セラが独自に考案した耐久テストも実施している。

 TORQUE G06ではMIL-STD-810Hに準拠した21項目テスト(これはTOUQUE 5Gと同等)の他、京セラ独自耐久テストではTORQUE 5Gで実施していた項目に加えて、打撃試験を追加した他、落下試験ではテストのレギュレーションを従来品と比べて強化した。

 新たに実施した打撃試験では、約40gの先端のとがった金属製のおもりを1mの高さからディスプレイ面(!)の中央に落下させている。また、強化された落下試験では、ローレット加工の金属製の板に高さ2mから製品を26方向で落下させる試験を実施するようになった。

 どちらも山岳での利用を想定して岩肌の固いとがった状況を再現しているが、ヨットやパワーボートでも金属製の船具(それはクリートであったりブロックであったりパルピットであったりエンジンであったりアイであったりアンカーであったり)にぶつけたり落としたりというのはよくあることなので、このような耐久試験レギュレーション強化は船乗りにとってもメリットといえる。

 以上、TORQUE G06における耐久試験はTORQUEシリーズで最多の29項目に上る。この中で、特に海利用で重要となる項目が「耐海水」「温水シャワー」「塩水噴霧」「防塵(じん)」「浸漬」「雨滴」「湿度」「高温動作」といった防水防塵試験だ。それぞれの試験内容は以下の通りだ。

  • 耐海水[独自試験]……人工海水の水深約2.0mに約60分沈める
  • 温水シャワー[独自試験]……シャワーの温度程度のお湯(43℃以下)を端末にかける
  • 塩水噴霧……連続24時間の5%塩水噴霧後、24時間乾燥させる
  • 防塵……連続6時間(風速8.9m/s、濃度10.6g/立方m)の粉塵を噴霧
  • 風雨……降雨量1.7mm/分、6方向各30分間の降雨と風速18m/sの環境下で30分間の降雨を再現
  • 浸漬[独自試験]……約3mの距離から約12.5リットル/分の水を3分以上注水&約2.0mの水中に60分間浸漬
  • 雨滴……高さ1mから雨滴を15分かけ続ける
  • 湿度……連続10日間(95%RH)の高湿度状態を維持
  • 高温動作(1)[独自試験]……高温動作環境60℃で連続3時間の動作
  • 高温動作(2)……32〜49℃まで3サイクル温度変化させる
  • 高温保管(1)[独自試験]……70℃で連続4時間保管
  • 高温保管(2)[独自試験]……30〜70℃まで変化させて保管
  • 温度衝撃……-21〜50℃の急激な温度変化で連続3時間動作
  • 太陽光照射……連続20時間1120W/平方mの日射後、4時間オフを10日間繰り返す

 この中で特に耐海水試験は実施しているケースがほとんどなく、海で利用する機会が多い船乗りには貴重なモデルといえるだろう。なお、防塵試験は防水と関係ないと思うかもしれないが、砂粒や不純物の析出など粒状の異物が含まれる海水に対するプロテクションとしては必須といえる。太陽光照射試験や温度(特に高温)関連の試験も炎天下での利用が多い海利用では重要な堅牢指標だ。

 さらに、浸漬は「海に落としたらまず回収できないもん。意味ないよね」ではなく、「バケツ1杯、なんなら、たらい1杯分の“塊になった水”が頭の上に“ドシャッ”と落とされたような波がたたきつけられる」ような海況では、その塊の水の重さ=水圧に耐える堅牢性を実現する要素としてこれまた重要になる。そのような意味と可能性において、TORQUE G06で実施している耐久試験の内容は決して過度ではなく、アウトドアギアとして使うスマートフォンにとってどれも必要なレベルと考えるべきだろう。

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