上期決算「KDDI・ソフトバンク」と「ドコモ」で明暗が分かれたワケ 鍵を握る“メインブランドへの移行”石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)

» 2024年11月09日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]
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減収が続くドコモ、ARPU向上やネットワーク品質改善が課題か

 一方で、サブブランド対抗のirumoを2023年7月に導入したドコモは、少々事情が異なる。KDDIやソフトバンクが早くからサブブランドでユーザーを獲得し、メインブランドへの移行を促進してARPUを向上させるフェーズに入ってきたのに対し、ドコモはirumoによる減収が現在進行形で直撃している状況に置かれている。

 上期のモバイル通信サービスの収入は、前年同期比で354億円の減少。端末などの機器収入もこれを補いきれず、コンシューマー通信全体でも208億円の減収となった。また、営業利益はモバイル通信サービスの収入減に加え、機器販売収支や販売促進強化でのコスト増が響き、減益幅は472億円に拡大している。原因について、ドコモの代表取締役社長、前田義晃氏は「irumo導入当初、多くの方にご加入いただいた影響」と語る。

ドコモ 導入直後より影響は低減しているものの、依然としてモバイル通信料の減収は続いている

 ARPUは3910円で第1四半期から横ばいで下げ止まっているが、これは旧料金プランからeximoやahamoへの移行率が上がっている効果が大きい。また、irumoやeximoといった段階制の料金プランについても、「データ利用量が年々増加しており、容量の大きい方(段階)に移行する傾向がある」(前田氏)という。

ドコモ ARPUは3910円を維持したが、どちらかといえば旧料金プランからの料金プラン変更の影響が大きい

 これは、ドコモが「将来の収益の礎となる顧客基盤の獲得、シェアの拡大に注力すべきである」(同)という方針を打ち出した影響も大きい。若年層に照準を合わせた施策を家電量販店などで展開することで、純増数は増加。「足元では、10月のMNPが想定を大きく上回るプラスになっている」(同)としており、流入も増えている。スマホなどのハンドセット解約率も低下した。

ドコモ
ドコモ 将来の顧客基盤獲得を目指し、新規契約やMNPを重視するドコモ。この点は、他の2社と方針が異なる点といえる

 とはいえ、コンシューマー向けの通信事業での増収幅が拡大し、ARPUも上昇基調に入ったKDDI、ソフトバンクと比べると、回復が遅れている印象も受ける。サブブランド的な料金プランの導入が遅かったこともあり、2社とは時間差で料金値下げの影響を受けている格好だ。irumoやahamoからeximoへの移行を進めていくには、まだ時間がかかる可能性もある。

 また、こうした大容量プランは、高品質なネットワークがあってこそ生きてくるものだ。ドコモは体感品質の改善に取り組んでいる最中。年度末までにSub6と転用周波数帯を使った5Gのどちらも拡大し、エリアとネットワーク容量を両立させていく方針だが、結果が出るにはまだ時間もかかる。一方で、前田氏は「全体の設備投資も通常のコストも、品質対策に振り向けている」(同)といい、チューニングが中心だった従来以上にコストをかけ、本格的に対策を進めていることを示唆した。通信品質は増加するデータトラフィックを支える要ともいえるだけに、その成果にも注目しておきたい。

ドコモ
ドコモ 大容量、無制限の料金プランを支えるのが、快適なネットワークだ。ドコモは、この改善が目下の課題。エリアと容量の両にらみで通信品質を強化していく
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