続いて、「売れていない」という実感(肌感覚)の根拠をもう少し踏み込んで聞いてみた。
さっきも言った通りで、「指名買い」と「ふらっと見に来る」というお客さまは減ってしまっています。ただ、ここ数年は指名買いの台数はおおむね横ばいで、それほど減っていません。
問題はふらっと見に来るお客さまです。このようなお客さまは、発売日やその直後の週末を過ぎるてしまうと「在庫があるなら買おう」とはならなくなりました。その場で買えるなら買う、というお客さまが本当にいなくなったのです。
売れていない理由を求めると、やっぱり「端末価格」でしょうね。
最近であれば、話題姓のある新モデルは10万円超が当たり前です。今使っている機種が「3〜4年前の上位モデル」だとすると、その系譜を受け継ぐモデルを買おうとすると15万円超で、場合によっては20万円を超えてしまうこともあります。「ダウングレード」は避けたいという心理ゆえに、買い換えを見送ってしまうお客さまが多いのです。
最近では、手頃な価格で良い性能のスマホも増えました。私も「こちらの機種ならお手頃です」と勧めることも多いのですが、実はその「性能が良い」は3〜4年前の上位モデルと同等か、少し上くらいだったりします。お客さまから「あまり性能が変わらないなら、買い換えなくてもいいよね」と言われて、私も個人的に「そりゃそうですよね」と思ってしまうこともあります。
価格に注目すると、やっぱりキャリアを通さないで販売されるモデル(販路)との価格差を気にするお客さまが増えています。
端末を手元に残さない前提で考えると、24カ月(2年)ごとに機種変更する場合は、キャリアの販売プログラムを適用して分割払いで買った方が安上がりになるケースも多いです。私もそのことをお客さまにお伝えするのですが、実は買い換えること自体が“重労働”と考えるお客さまもそれなりに多く、そのような場合は24カ月で手放した場合の「実質価格」よりも、「その場で支払う価格」が安いものを選びたいと考える人が増えているようです。あえて言い方を選ばなければ、計算するのが面倒なので、ぱっと見の購入総額が安い方を選ぶということです。
あと最近、価格面でいうと「どうせそのうち『月々1円』になるんでしょ?」みたいな声も多いです。2024年12月26日のガイドライン改正では「お試し割」の導入や「ミリ波対応端末の割り増し割引」も可能になりますから、その辺の動向をよく知っているお客さまは、あえてそれを待つこともあります。総じて、発売直後に買うと「損」であると思うお客さまが増えたのだと思います。
こういうお客さまを想定してか、キャリアも無理せず「月々1円」にできる手頃な端末を用意してはいますが、そういうのに限ってストレージの容量が少ないなど、売れ線の(客に勧めやすい)スペックではないんですよね……。「上位モデルを少しでも安く買いたい」という心理もあってか、繰り返しですが“待ち”なお客さまが本当に増えています。
「なぜ売れないのか?」という理由を求めると、やはりスマホ(端末)の“価格”に行き着くようだ。
総務省の政策もあって、昨今は条件付きでも「一括0円」「一括1円」といった販売施策を実施することは難しい。スマホの本体価格が年々高騰していることもあり、「新機種は高い」という観念も定着してしまっている。
「なら分割払いで買えば?」という意見もあるだろうが、その点でいうとキャリアの分割払いを組み合わせた購入プログラムの認知もある程度は進んでいる。ゆえに購入自体を“重労働”と考える人が増えた反面、逆に少しでもお得に買いたいという人はプログラムを使って低価格で使える(買える)タイミングを狙う傾向も見受けられる。購買意欲の高い「指名買い」を行う人を除くと、新機種が“新しいうちに”に買うことはない人が大勢を占める状況になっているのだ。
加えて、販売プログラムを考慮に入れなければキャリアを通さない方が安く買えることも、広く知られるようになってきている。このことも、店頭での購入意欲を“そぐ”一因となっているようにも思える。
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