KDDI高橋社長インタビュー 「料金値上げ」示唆の意図、利益は投資に回して「世界一のネットワーク」に(2/2 ページ)

» 2025年03月07日 18時31分 公開
[石野純也ITmedia]
前のページへ 1|2       

衛星通信には+メッセージではなくRCSを導入する

―― 間もなく、StarlinkとのD2C(スマホとの直接通信)が始まります。一方で、イーロン・マスク氏の行動が読めず、リスクと捉える向きもありますが、KDDIはいかがでしょうか。

高橋氏 僕らも基幹網には使ってはいけないとは思っています。災害や非常時に何かできることがあればいい。極端な話、もしそれがなくなっても国家として問題がないようにしなければいけないと思っています。ただ、空が見えればつながるというのはやはり楽しいですよね。春のものはRCS(Rich Communication Services)やその先にあるGeminiとつながります。データ通信はできませんが、(メッセージアプリの中で)Geminiに聞けば、回答が来る。そのテキストメッセージの延長で、写真ぐらいは送れるようになりますし、位置情報も送信できます。今はRCSでGeminiですが、APIを空けて、いろいろなプレイヤーが作れるようにした方が面白いとは思っています。

Starlink Starlinkとの直接通信サービスも、間もなく始まる。高橋氏は、その上でRCSを介したGeminiを動作させていく方針を示した

―― +メッセージではなく、ですか。

高橋氏 インフラが高いので、どうしても。(GoogleやAppleが用意する)RCSにすると、そこが安くなります。iPhoneに入ってくる、それは大きいですね。

―― ネットワークという観点だと、Sub6の基地局が全て5G SAになっているというのは驚きました。

高橋氏 周波数的に、うちはSub6がすごく有利。隣接バンドですからね。ドコモは5Gで先行したかったからか、隣接バンドを取りに来なかった。うちは干渉問題がありましたが、衛星通信事業者が動いてくれたので、そこが強くなりました。今はすごくいい感じです。

au Sub6 Sub6の基地局数が多く、出力増強やチルト角調整の結果、5Gエリアが一気に拡大し、通信品質が向上した

―― 4Gが詰まらず、端末がスムーズに5Gをつかめるという点で、UQコミュニケーションズがあったのは大きかったですか。

高橋氏 それは、でかい。ソフトバンクにもWCP(Wireless City Planning)がありますが、あれも大きいと思っています。もとは僕のミスかもしれませんが、(WCPのベースになっている)PHSを手放したのは間違った判断でした。当時はここまで基地局がいるとは思っていませんでしたが、結果としてソフトバンクに塩を送ることになってしまいました。

ユーザーを見ない値上げは問題になる

―― 先日の決算説明会の最後に、値上げを示唆するようなコメントがありました。改めて、その真意を教えてください。

高橋氏 あれは値上げというより、好循環な環境を作りたいということです。これは総務省からも言われていることですが、(基地局の)建設会社などのパートナーとは、購買交渉の過程で値上げの必要がないかを聞きなさいと言われています。ここが厳しいと、下を締め付けることになってしまうからです。政府としても、物価が上がるのはいいことで、価格転嫁はしなさいと言われています。電気代も上がっていますしね。

 ただ、それで通信料を値上げするというと、大変なことになります。一方で、どのキャリアも料金はアメリカの2分の1ぐらいになっているので、さすがに何とかしなければいけない。投資し続けなければいけない中で、人口も増えていないので、純増数も増えません。これは国にとってもよくないので、われわれがD2Cや5G SAなどで価値を提案し、そういうことを分かっていただいた上で価値のある価格設定にできれば、一番ハッピーですよね。

 もちろん、われわれはそれを利益として残すのではなく、すぐに投資に回します。その方が日本国民のためになるからです。トラフィックが上がり、もうかりますが、そのもうけを使ってどんどん投資をした結果として、3G、4Gは世界で一番いいネットワークになりました。結果としてネットワーク品質は僕らが一番になりましたが、ドコモ、ソフトバンクも投資をし続けています。

―― どんな価値提案をすればその方向に持っていけるでしょうか。

高橋氏 そこは工夫がいりますよね。以前、「さよなら、au」と言われてしまったことがありますが、お客さまの方を見ずに値上げというのは、それはそれで問題になります。ということを、次期社長がやっていきます(笑)。

高橋誠 通信料金をどうしていくのかは、次期社長である松田氏に託したと笑顔で話す高橋氏

取材を終えて:ネットワークの上に価値を乗せて提供する姿勢が根底に

 ざっくばらんに今の思いを語った高橋氏だったが、ネットワークを作り、その上に価値を乗せて提供することで収益を上げ、それをさらに投資に回していくという視点は全ての話に通底していた。社長就任後にそのネットワークを強化し、好循環を作れたことは自身でも評価していることがうかがえた。一方で、それをコンシューマーにどう落とし込むかは、次期社長である松田氏に託された課題といえる。新体制になる4月以降のKDDIがどのような手を打ってくるのかも、楽しみになってきた。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年07月26日 更新
  1. 「0.2秒で冷却」をうたうペルチェ素子搭載の腰掛けファン Amazonで53%オフ (2026年07月24日)
  2. ドコモが「iPhone 17」シリーズや「iPhone Air」を値上げ 一部機種は残価も引き上げ、実質負担額の影響は? (2026年07月24日)
  3. JR東日本「分かりにくい」新幹線券売機を改善へ なぜ、スマホではなく「駅での最短1分購入」を実現? (2026年07月04日)
  4. 330円で手に入る「足元灯」「非常灯」 充電式になって利便性向上 (2026年07月25日)
  5. 従来の健康保険証は7月31日で利用不可に 8月1日以降は「マイナ保険証」の利用を (2026年07月24日)
  6. サムスンが「Galaxy Z Fold8」で横長折りたたみを投入する理由 AIの進化にもマッチ、“iPhone包囲網”も万全か (2026年07月25日)
  7. 界面活性剤とマイクロファイバーでタッチパネルをきれいに! ダイソーで220円の「スクリーンクリーナー」を試す (2026年07月25日)
  8. なぜ「LINE VOOM」は嫌われたのか 保護者を悩ませた“子供たちの抜け道” (2026年07月24日)
  9. モトローラから新しいミドルレンジスマホ「moto g37」シリーズ登場 ソフトバンク、楽天モバイル、ドコモも取り扱い (2026年07月24日)
  10. ドコモ販売ランキング:新発売の「Xperia 1 VIII」が上位にランクイン【2026年6月】 (2026年07月25日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー