「らくらくホン F-41F」はFCNTが約6年ぶりに発表し、NTTドコモが8月7日に発売したフィーチャーフォンだ。ドコモの3G停波を2026年3月末に迎えることから、3Gからの受け皿として役割を果たしそうな1台だ。らくらくシリーズとしては「らくらくスマートフォン」も存在しているが、らくらくホンはそれとは異なり、物理キーでの操作が基本となる。
横幅が約52mmと片手で握りやすく、ボタン操作で電話がしやすいからこそ、らくらくホンにはまだ往年のファンがいる。「加齢による身体能力の低下などの理由から、どうしてもらくらくホンでないと使えないという、さまざまな事情を抱えた人」がおり、FCNTでは製品発表会でシリーズ継続の考えを示していた。開発時のこだわりや苦労はどこにあるのか、FCNTでらくらくホンの企画や開発に携わった方々に話をうかがった。
―― らくらくホン F-41Fのサブディスプレイが従来機比で約1.25倍に拡大しました。この意図があれば教えてください。
正能氏 今回のモデルでサブディスプレイを大きくしたいという意図があったわけではありません。基本的に、らくらくホンのターゲットのお客さまが、今らくらくホンをお使いで同じ使い勝手を維持したいという方なので、旧モデルと同じサイズ感で作る中で、部品の供給性やサイズの維持することを優先しつつも、選定された部品がこちらのディスプレイサイズでした。結果として大きくなり少し見やすくなっています。
近藤氏 部品調達の観点で、最適な部品選定をしたということです。ユーザーさんの価値向上というところにもつながる変更だったかなと思います。
―― ボタンの押しやすさや、画面の見やすさ、耐久性など、コンセプトやスペックとしては大きく変わっていないように思いますが、これはあえてそうしたのでしょうか。
近藤氏 らくらくホンは、昔の機種と同じ設計を流用しており、「変えないこと」がコンセプトです。
正能氏 本当はそのまま使い続けていたいけど、壊れてしまったので次の機種が欲しいというお客さまがいらっしゃいます。そうした方々には、今から新しい何かを覚えていただくことよりも、同じものをそのまま提供できることが、らくらくホンにおいては最も重要です。
ワンタッチダイヤルについても「これだけを使っているお客さまがいる」くらい重要です。長押しでボタンに割り当てられた人にダイレクトに発信できるので、「1番のボタンを困ったら押してね」と親に渡して使っている方もいらっしゃるので、ボタンの位置が変わってしまうと戸惑います。それに、ディスプレイ直下に位置するのも、画面を見た際に視界に入るように、という工夫からです。
―― シリーズとしては初めてUSB Type-Cポートを搭載しています。
近藤氏 近年では、USB Type-Cが主流になってきていますので、USB Micro-Bのまま変更しないのは厳しいと判断しました。通常のフィーチャーホンでも既にUSB Type-Cに変更していますので、遅すぎるぐらいだったと思います。
―― USB Type-Cケーブルをアンテナ代わりにしてFMラジオが聞けますが、ワンセグ機能を廃止した理由を教えてください。
外谷氏 ワンセグのご要望は認識していましたが、コストや部品の供給性、そして持続性の観点から、今回は搭載を見送りました。
―― FMラジオほど求められていないのでしょうか?
外谷氏 ワンセグを求めるお客さまは約10%ほどだったと思います。数としては決して小さくないと思いますが、らくらくホンをグローバルサプライチェーンになったFCNTとして作り上げる中で、どうしても取捨選択が必要になります。あとは、5年後、10年後にワンセグチューナー部品の供給もなくなる見込みですので、その先のアフターフォローも考えた結果でもあります。これは他メーカーさんも同様だと思います。
―― FMラジオを聴く際に必要なUSB Type-Cのイヤフォンや、3.5mmイヤフォンジャックから変換するアダプターが付属していません。
近藤氏 USB Type-Cの変換アダプターは100円ショップでも買えますので、入手性がいいというところで、付属しないという判断になりました。
正能氏 実際に使われるお客さまのことを思うと、当然、付属した方がいいです。ただ、いろいろな物を付属していくと、価格にも反映されていくのもまた事実です。取捨選択をしながら判断しています。
―― 製品のポジショニングのところで、らくらくホンとらくらくスマートフォンの役割、および対象ユーザーはどう違うのかを教えてください。
正能氏 らくらくホンに関しては「旧機種から変えない」点を先ほどもお伝えした通りですが、らくらくホンのユーザーさんにステップアップしてらくらくスマートフォンへ移行してもらいたい思いはあるものの、どうしてもらくらくホンでなければ使えないという方も多くいらっしゃるので、同じ使い勝手のらくらくホンを使い続けたいという方がらくらくホンのターゲットです。
一方、らくらくスマートフォンは、AIなどの新しいサービスが出てくるので、使いやすく使いこなしていただくことを考えております。ターゲットのくくりとしては、らくらくホンと同じシニアの方ではありますが、「新しいことに取り組みたい」「もっと使いこなしていきたい」といったモチベーションを持った方に手に取っていただけるような仕立てです。
外谷氏 少し補足しますと、シニアの方々だけでなく視覚障害者の方やフィーチャーホンしか使えないお客さまに、しっかりと使っていただけることも重要です。
―― らくらくホン F-41Fはオープン市場向けには発売されないのでしょうか。
外谷氏 現状では計画はありません。今後、ご要望が増えれば検討しますが、まずはNTTドコモをご利用のお客さまに訴求していくことを第一に考えています。
―― らくらくホン F-41FはSIMフリーですよね?
外谷氏 SIMフリーです。ただし、バンドの対応範囲が狭いです。
近藤氏 具体的には、KDDIやソフトバンクで利用されている「プラチナバンド」には対応しません。
外谷氏 NTTドコモ系MVNOのSIMであれば、全く問題なく使えると思います。ただ、ドコモのサービスと連携してる部分がありますので、他社のSIMですと「SIM判定」で利用できない場合があるかもしれません。
―― 今後、他のキャリアかららくらくホンが出る可能性はありそうですか?
外谷氏 開発は相当大変でした。キャリアによってお客さまが異なりますし、これを出せば売れると一概にはいえないので、状況を見ながらですね。ただ、らくらくホンのようなフィーチャーフォンがないと生活に困ってしまうお客さまがいますし、ドコモ以外のお客さまに対して、われわれとしてできることがあれば前向きに考えていきたいです。
電池パックを取り外して、nanoSIMを搭載することが可能だ。らくらくホンは、SIMフリーではあるものの、ドコモ向けモデルとなっており、基本的にはドコモのネットワークに対応するMVNOのSIMで運用できそうだ
なぜ今“ガラケー”新機種? FCNTが「らくらくホン」を継続する理由
約6年ぶり「らくらくホン」がドコモから 迷惑電話・迷惑メール対策機能付き、FMラジオも
ドコモ、「らくらくホン F-01M」を11月22日発売 3万8016円(税込み)
新生「らくらくスマートフォン」で戦略転換、ドコモだけでなくY!mobileやSIMフリーで出す狙いは? FCNTに聞く
約3年ぶり「らくらくスマートフォン」は“変えない”ことにこだわり SIMフリー戦略で販路も積極開拓Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.