なぜ? まるで“ガラケー”の「ケースマ」を日本に投入するワケ 異色の韓国メーカーALTに聞く戦い方(1/3 ページ)

» 2026年03月06日 10時22分 公開
[石野純也ITmedia]

 韓国から異色のメーカーが日本に上陸し、話題を集めている。ALTが、そのメーカーだ。同社は、韓国で2017年に設立されたスタートアップ。サムスン電子とAppleがシェアを二分する韓国市場で、ニッチともいえるシニア向け端末や子ども向け端末を投入し、徐々に販売を伸ばしてきた。そのALTが、初めての海外市場として選んだのが、日本だった。

 日本市場での初号機となる「MIVEケースマ」は、テンキーを備えたスマートフォン。一見するとその形状は“ガラケー”とも呼ばれる従来型携帯電話に近いが、タッチパネルを搭載しており、Google Playも利用できる。アプリをインストールすれば、スマホとほぼ同じ使い方も可能だ。ドコモの3G停波に合わせ、ギリギリのタイミングで投入した格好で、ケータイユーザーをどこまで取り込めるかに注目が集まる。

MIVEケースマ
MIVEケースマ ALTが日本で投入する第1号機「MIVEケースマ」。スマートフォンではあるが、その形状から、従来型ケータイのように活用できる

 では、ALTはなぜ日本市場に参入したのか。同社の強みや日本での勝算を、ALTの日本法人でCOO(チーフ・オペレーティング・オフィサー)を務める金希哲(キム・ヒチョル)氏に聞いた。

スマホはレッドオーシャンだが、まだやれることがある

MIVEケースマ ALT Japanの金希哲(キム・ヒチョル)氏は、かつてLGエレクトロニクスの日本法人に在籍しており、日本の端末ビジネスに精通している

―― 改めて、ALTという会社についての成り立ちを教えてください。

金氏 創業者は李尚洙(イ・サンス)という者で、LGを皮切りに、サムスン、パンテックで勤務し、キャリアのSK TelecomではシニアVP(バイスプレジデント)を務めて独立しています。創業は2017年で、韓国でもまだ10年たっていない若い企業です。

―― 韓国メーカーをコンプリートしていますね(笑)。

金氏 メーカー、特にスマホメーカーはレッドオーシャンになっていますが、まだやれる方法があると考えたのが、李が起業したきっかけです。製品もそうですし、会社の成り立ちもそう。既存のメインプレイヤーとはバッティングしない分野でセグメントすることを第一にしています。

 設立当初はシャープさんやノキアさん(HMD Global)の端末を韓国に輸入し、オンラインで販売したり、MVNOに販売してもらったりしていました。そこでキャリアとの関係を築き、その後は特定のユーザーに向けた端末をやらないかとお声がけいただいて今に至ります。当初は、キッズ向けの端末からスタートしました。

―― 韓国では、それなりの台数が出ているとうかがいました。

金氏 シニア向け端末の「STYLE FOLDER」を2022年に発売し、2025年には第2弾として「STYLE FOLDER 2」(ケースマのベースモデル)を出しました。 実は僕らもこんなに売れるとは思わなかった。韓国にもガラケーを使っているユーザーはいましたが、こんなにいるということが分かりました。

MIVEケースマ 左がケースマ、右がケースマの1世代前のモデルで韓国発売の「STYLE FOLDER」

―― 韓国だとLGやパンテックがスマホから撤退し、メーカーが減っています。サムスンとAppleはシニア向けやキッズ向けは作らないと思うので、そういった市場にはまった部分もあったのでしょうか。

金氏 LGがいたときですら、圧倒的な2強+LGという感じでした。最近ではXiaomiさんやZTEさんも(韓国に)入ってきていますが、まだMNOとはビジネスを始められていません。そのような中で僕らがビジネスを開始し、3、4年でいいときにはシェア10%ぐらいまで行きました。製品的にも、メーカーのポジショニング的にも、スポッと差別化されていて、参入してみたら思ったより需要があり、台数が出たのだと思います。

日本法人の立ち上げから2年で初号機の投入に 少数精鋭で動きやすく

―― 日本進出は2年前ぐらいから計画していたとうかがいました。いきなり進出したように見えましたが、かなりじっくり研究されてからの参入だったんですね。

金氏 日本法人の設立は2024年7月で、1年半ぐらいがたっています。自分が正式にジョインしてからはそこまでたっていませんが、その前からお手伝いはしていました。最初は日本に興味があるというところから始まり、どういう製品がいいのか、何が必要なのかというディスカッションをしてきました。実際に製品を何にするのかを決め、お客さまの意見を聞きつつ、開発に動いています。

 また、商品だけがあればいいというわけではないので、法人を立ち上げて修理拠点を作ったり、カタログを作ったりということをやってきたら、2年かかったのが実態です。どの商品を投入するかを決めるまでに紆余(うよ)曲折があり、時間がかかりました。

―― 会社としての機能を持つところまで考えると、確かに時間はかかりそうです。

金氏 初めての日本進出だったので、アフターサポートの立ち上げも必要です。まったく何もないところから始まっているので、コールセンターだったり、修理の受付だったりも作る必要がありますし、そもそもそれ以前に倉庫もありませんでした。ゼロからの立ち上げということで、商品とは別の部分での準備も必要でした。

 MNOに提供する場合、日本に倉庫を持つ必要性がなく、海外で作ったものをドンと納品することもできますが、SIMフリー(オープンマーケットモデル)の場合はメーカーが倉庫を持ち、細かな受発注に対応しなければなりません。そういったところの整備もしてきました。

―― 修理は韓国でやるのでしょうか。

金氏 そうです。ただし、まずはスワップ(交換)対応になります。

―― 拠点が韓国という点だと、日本と近いのでやりやすそうですね。

金氏 ほぼ半年ぐらい、開発メンバーが日本に常駐していました。業務委託で製品の検証をする会社の方にも常駐していただき、検証を繰り返しています。

―― 思ったよりも体制がしっかりしているようにも思えましたが、日本法人はどのぐらいの規模なのでしょうか。

金氏 まだ設立して間もないので、日本のメンバーは10人以下です。基本的に、開発は韓国からの出張者が対応していて、検証系も業務委託です。本国でもまだまだ小さい会社ですから。

 ここはいいのか悪いのかちょっと微妙なところですが、私自身もLG(LGエレクトロニクス・ジャパン)にいたので、固定費が大きな大企業だと、1つのモデルを発売するのに大きな数を出さないと大変なことになるのはよく分かっています。それに対し、僕らは少数精鋭で、協力できるところは外注とも協力しながら、小さく、速く、筋肉質にやっていくことをモットーにしています。

―― 同じメーカーでも、LGのような大企業とはまったく違うということですね。

金氏 そうですね。1人の人間が複数の役割を担っているような感じです。

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