Qualcommのウェアラブル新チップが「Elite」を冠する理由 最新モデム「X105」は衛星通信100Mbpsへ(1/2 ページ)

» 2026年03月11日 06時00分 公開
[房野麻子ITmedia]

 Qualcommは、世界最大級の通信系イベント「MWC26 Barcelona」に合わせて、複数のニュースリリースを発表した。MWCのブースでは、それらについてデモを交えて説明していた。ここではその中から、モバイルに関する機能と展示について紹介しよう。

Qualcomm MWC26のQualcommブース。6GやAIに関する展示が多かった

より低消費電力になった「Snapdragon Wearable Elite」 Galaxy Watchに搭載へ

 Qualcommは、パーソナルAIデバイスを駆動するために設計された最新のウェアラブル向けチップセット「Snapdragon Wearable Elite」を発表した。Wearable Eliteは、メーカーやAIクラウドプロバイダーがウォッチ、ピン、ペンダントなど、新領域を含め幅広いデバイスにAIエージェントを搭載できるように設定されている。

Qualcomm ウェアラブル向けチップセットのSnapdragon Wearable Elite

 ウェアラブルカテゴリーに「Elite」ブランドを導入するのは今回が初めてで、低消費電力を維持しながら、強力な処理能力とオンデバイスAIを実現している。説明員は「非常に電力効率がよく、かつしっかりと仕事をこなす」と紹介していた。

 オンデバイスで最大20億パラメーターのAIモデルを実行できる。なお、クラウド接続が必要な場合のために、5G RedCapや超低電力Wi-Fiもサポートしている。この低電力Wi-Fiは「必要な電力がBluetoothと同様で済む。Qualcommにしかできないこと」だと胸を張った。消費電力を抑えることは開発チームにとって大きな優先事項だったという。

 低消費電力でも高い処理レベルを誇り、前世代の「Snapdragon W5+ Gen 2」と比較すると、CPUのパフォーマンスは5倍、GPUは7倍、電力効率は30%向上しているという。CPUの構成も、4つのリトルコアだけだった前世代と異なり、1つのビッグコアと4つのリトルコア、計5つのコアを搭載している。「前世代からの大きな飛躍。だからこそ『Elite』を付けた」と説明していた。

 NPUは、ウェイクワードなどを待機する低電力のNPUと、チップセットに内蔵され、AI処理の重い負荷を担当するQualcomm Hexagon NPUの2つのNPUを搭載している。2つの使い分けはメーカーの実装、ソフトウェアによって決定されるという。

 Snapdragon Wearable Eliteが搭載される製品は2026年夏登場予定で、サムスン電子の「Galaxy Watch」が最初の市販品になるとのことだ。なお、MotorolaがコンセプトモデルとしてCESで披露したペンダント型AIウェアラブルデバイス「Project Maxwell」にもWearable Eliteが搭載されている。

Qualcomm Motorolaのペンダント型AIウェアラブルデバイス「Project Maxwell」。Snapdragon Wearable Eliteを採用しており、MWCのLenovoブースにも展示されていた。

最新モデム「Qualcomm X105」は衛星通信で最大100Mbpsに対応

 「Qualcomm X105」は、前世代「X85」に次ぐ最新のモデムとして発表された。今回、数字が3桁になったのは「非常に大きな飛躍を遂げているから」だと説明員。飛躍の1つは、標準化団体3GPPの仕様、Release 19に世界で初めて対応したモデムであることだ。Release 19は6Gに向けた基盤技術の強化を目的とした規格で、X105はベースバンドが再設計され、モデム専用の第5世代AIプロセッサを搭載している。

Qualcomm 最新モデム「Qualcomm X105」。AIと衛星通信への対応が強化されている

 Qualcommは、このAIプロセッサを世界で初めてモデムに搭載した。また、世界初の6nm RFトランシーバーを搭載し、従来モデルより基板フットプリントが15%小さくなり、電力効率が30%向上している。

 AIプロセッサはモデム内のエージェントAIを活用し、ユーザーシナリオに基づいてデータトラフィックのタイプを検出・分類・最適化する。接続品質を改善し、ゲーム、通話、動画視聴など全般でユーザー体験を向上させるという。

Qualcomm AIプロセッサが信号の状態に基づいてビットレートを調整し、ビデオ映像が途切れるなどの影響を受けないようにする。デモでは、4K動画を流し、電波が弱まったり通信品質が低下したりしても、映像が途切れないことを紹介していた。

 また、ハンドオーバーが高速化される他、L4S(Low Latency, Low Loss, and Scalable Throughput)にも対応する。L4Sにより遅延を最大60%削減できるとしている。

 衛星通信はX105で大幅に進化する。NR‐NTN上でビデオ通話、ビデオストリーミング、高速データ通信、音声通話、メッセージが可能。データ転送については最大100Mbpsまで対応する。デバイスの観点からはNR-NTNの準備は整っており、「ネットワークが商用利用可能になれば、Qualcommはいつでも対応できる」と説明していた。

Qualcomm 米国でSkylo、Verizonと共同で行った衛星通信によるビデオ通話のテストが紹介されていた。Snapdragon 8 Elite、X85モデムを搭載した最新のGalaxy S26 Ultraを使用。衛星通信はSkyloが提供した
Qualcomm ナローバンドNTN(NB-NTN)を介したリアルタイム音声通話も紹介。QualcommのナローバンドNTN最適化ソリューションを利用して、Viasatとテストを行った
Qualcomm Celesteとも提携。Celesteは衛星に実装可能な5G基地局(gNodeB)向けのソフトウェアを開発しているソフトウェア企業。ソフトウェアのアップグレードによって、宇宙空間に5G基地局を構築できるという

 Sub-6GHz帯の周波数については、5G NRで6つの周波数をアグリゲーション(束ねる)できること、Sub-6とミリ波を使用したデュアルコネクティビティについても紹介し、さらに高速な通信が可能なことを示していた。

Qualcomm 6つの周波数をアグリゲーションしてさらなる高速通信を実現

 NB-IoTを利用する「Range Extension(距離延長)」という新機能も紹介されていた。エリアカバー範囲が限られている場所でも、未使用のNB-IoTリソースを活用してメッセージを送信することができるという。

Qualcomm 未使用のNB-IoTリソースを活用してメッセージを送受信可能にするRange Extension

 上り通信においては、高出力端末仕様HPUE(High Power User Equipment)のPower Class1をサポートしていることを強調していた。HPUEは、端末の高出力化によって上り通信のカバレッジを改善することができる技術。Power Class 1は特にミリ波でのFMA(固定無線アクセス)用の仕様とされている。

 X105は2026年後半に市場に投入され、最初のデバイスは10月に登場する予定とのことだ。

 DSDA(Dual SIM Dual Active)の事例として「Turbo DSDA」と呼ばれるものも紹介されていた。この機能は既にX85 5Gモデムに搭載されており、デュアルSIM端末で同時に2つの5Gデータ通信を行うことで、高速な5G SA通信を実現するものだ。

 QualcommのTurbo DSDAでは、3CCと1CCをアグリゲーションし、より高速かつ効率的なデータ通信を実現する。

Qualcomm Xiaomiの端末を使ってTurbo DSDAで通信した場合と、Turbo DSDAをオフにして通信した場合の通信速度の比較。300Mbps程度の差が出ている。

 なお、市場で最初のAIエージェントスマホとして、中国ZTEとTikTokの運営会社であるByteDanceが共同で開発した端末「Doubao(豆包)フォン」の活用事例も紹介されていた。ワンボタンでAIエージェントが起動し、音声によって航空券の予約、フードデリバリーの注文、TikTokのコンテンツを検索して要約、写真の編集などが行える。

Qualcomm ZTEとByteDanceが共同開発したDoubaoフォンのAIエージェント活用事例
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