岐路に立つシャープのスマホ戦略 AQUOS proモデルは「白紙」、wish新機種は「プランニング中」

» 2026年06月17日 16時46分 公開
[田中聡,ITmedia]

 シャープが、ハイエンドスマートフォン「AQUOS R11」を、7月9日から順次発売する。

 AQUOS R11は先代の「AQUOS R10」から1.2倍明るくなり、より額縁が狭くなった6.5型有機ELディスプレイを備える。ライカと共同開発したカメラは新たに望遠カメラが追加され、AIを活用した自動ズーム機能も搭載。日本メーカーらしい取り組みとして、着信や通知があると、カメラリングの中央部が光る「アカリウム」を用意した。

AQUOS R11
AQUOS R11 シャープが2026年度のフラグシップスマートフォンとして投入する「AQUOS R11」

 AQUOS R11は同社が自信を持って送り出すハイエンドスマホだが、オープン市場向けモデルの価格は、メモリ12GBとストレージ512GBで16万3900円。2025年に発売した「AQUOS R10」(512GB)の10万7800円から、約5万6000円の値上げとなった(いずれもシャープ直販サイト、COCORO STOREでの価格)。

 この価格差はメモリ価格や原材料費の高騰を受けたものだが、通信事業本部 パーソナル通信事業部 事業部長の川井健氏によると、スペックの向上も値上げの要因に含まれるという。とはいえ、5万円以上の値上げのインパクトは大きく、購入をためらうユーザーも多いだろう。

2026年もproモデルは出さず ハイエンドはAQUOS R11で勝負

 こうした価格高騰の影響もあり、シャープは2026年もAQUOSのproモデルを発表していない。proモデルは2024年12月に発売した「AQUOS R9 pro」を最後に登場しておらず、2025年のAQUOS R10シリーズでも見送られた。2025年11月に「AQUOS sense10」を発表した際、通信事業本部 本部長の中江優晃氏は「2025年度モデルとしては、AQUOS sense10で完結するため、2025年度までproモデルは発売しない」とコメントしていた。

AQUOS R9 pro 2024年12月に発売した「AQUOS R9 pro」以降、proモデルは登場していない

 では、2026年度はどうなのか。6月16日は、スマートフォンではAQUOS R11の発表にとどまったが、隠し球として「AQUOS R11 pro(仮)」も準備しているのだろうか。中江氏はこれを否定し、2026年度もproモデルは投入しないことを明言した。理由はやはり、価格高騰にある。

 「proというシリーズは特別なラインであり、私たちが自信を持って、これがAQUOSの最上位機種だといえるものを出したい」という考えは今も変わらない。しかし、「外部環境が例年になく大きく変わっていく中で、今までと同じ考え方でproを出すと、お客さまに手に取って使っていただけるのか? という懸念がある」(同氏)

 今、proモデルを投入して仮に20万円を超えるとしたら、購入のハードルは確実に上がる。中江氏も「AQUOS R9 proを出したときに感じたが、やはり20万円を超えてくると、1つの大きな差になる」と認める。AQUOS R9 proは19万円台前半で発売し、20万円を超えないよう配慮したが、今だとそのラインを超えてしまうということだろう。「10万円、15万円、20万円それぞれでハードルがあり、意識する価格帯ではある」(川井氏)

 このように、価格のベースが1段上がってしまったため、proモデルは開発の見直しを強いられている。「『AQUOS R pro』と名乗るものがどういったものかを、昨年(2025年)ここでお話ししたときから白紙に戻って考えている。今の時点で、私たちのフラグシップは何か? と聞かれると、AQUOS R11になる」(中江氏)

 2026年度にproモデルが登場することはないが、ラインアップから消えると決まったわけではない。価格高騰の収束を待つのか、RとR proのラインアップ設計を見直すのか、さまざまな可能性が考えられるが、シャープの判断を待ちたい。

AQUOS R11 6月16日に発表した「からだメイト」シリーズのウェアラブル製品とAQUOS R11の開発陣。左から、通信事業本部の田中陽平氏、中江優晃氏、川井健氏、福永萌々香氏、清水寛幸氏

AQUOS wishの新機種は先延ばしも、既存モデルは値上げせず

 もう1つ、今回はAQUOS wishの新モデルも発表されなかった。2023年の「AQUOS wish3」から2025年の「AQUOS wish5」まで、シャープは毎年5〜6月にRシリーズの新機種と一緒にwishの新機種も発表してきたが、2026年はまだ発表していない。

 シャープは6月9日の事業説明会で、2026年度はAQUOS RのハイエンドとAQUOS senseのミッドレンジのシェアを7割に上げていくことを表明しており、この戦略が影響しているのは明白だ。wishは数こそ出るが、AQUOSだからというよりは「安さ」のメリットが強く、シャープの製品を長く愛用する「ロイヤルカスタマー」になりにくい側面がある。そして、価格高騰の影響はローエンドほど大きく、これまでのように3万円台で出すことは困難になる。

 「メモリ価格の高騰や、中東情勢を含めた原材料費の高騰は、スマートフォンにおいてはローエンドが一番影響を受ける。われわれがスマートフォンで提供する価値は、ハイエンドとミドルレンジを中心としたい。wishは法人で活用いただいているが、どちらかというとRやsenseに注力していく」(中江氏)

 ただ、wishをやめるわけではなく、中江氏は「AQUOS wishのお客さまから信頼いただいている価値がある。(新機種を)今、プランニング中なので、しかるべきタイミングでご紹介したい」とした。

AQUOS wish5 AQUOS wishの後継機はまだ発表されていない。写真はAQUOS wish5

 一方、既存のAQUOS wish4とAQUOS wish5は、シャープの直販サイト「COCORO STORE」では販売されているので(2026年6月中旬時点)、今から買うならこれらのモデルを狙うのも手だ。特にAQUOS wish5は3万4980円で発売時から価格を維持しており、2026年のローエンド機種としてもお買い得だ。

 今後、AQUOS wishは販売サイクルを伸ばしていくのかが気になるが、長期で販売する場合、中江氏は「価格を維持することが難しい」と打ち明ける。一方で既存モデルの値上げについては、「お客さまが納得しがたい」という理由から現時点では行わない方針だ。wishの新機種は先になるが、スペックにこだわらないユーザーは、値上げされないAQUOS wish5も依然として有力な候補になるだろう。

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