ミッドレンジモデルの大本命ともいえるシャープの「AQUOS sense10」が、2025年11月13日に発売された。各キャリアのオンラインショップにおける販売ランキングなどでは早速上位にその名を連ねており、好調なスタートを切ったことがうかがえる。ミッドレンジスマホの代名詞になったAQUOS senseシリーズだが、AQUOS sense10では従来モデルにはなかった取り組みも見受けられる。
その1つが、デザインを先代モデルである「AQUOS sense9」から踏襲したことだ。デザインの“テイスト”を受け継ぐモデルも多い中、AQUOS sense10では、寸法まで完璧に一致させており、ケースなどのアクセサリーはそのまま使い回すことができる。チップセットやカメラのセンサーなどは一新している別モデルで、ここまで形を変えていないのは異例だ。
機能面では、ハードウェアスペック以上にAIで音声通話機能を進化させており、周囲のノイズを完全に消して自分の声だけを届ける「Vocalist」などに対応している。では、AQUOS sense10はなぜ形状を維持しながら、中身だけの進化に振り切ったのか。同モデルを企画、開発したメンバーに話を聞いた。
インタビューには、商品企画を担当した通信事業本部 パーソナル通信事業部 商品企画部 係長の小野直樹氏と主任の河野太一氏、デザインを担当したデザインスタジオ デザイナーの龍華紫穂氏に加え、設計、開発を担当した回路開発部 技師の三島啓太氏、第一ソフト開発部 技師の奥谷紀子氏が答えている。
―― 最初に伺いたいのは、デザインをAQUOS sense9からキープした背景です。スマホで、世代が変わってもデザインはそのままというのは珍しいですよね。
小野氏 AQUOS sense10の寸法に関しては、AQUOS sense9とまったく同じです。デザインを刷新した方が、お客さまの目を引くんじゃないかという考え方もありますが、背景に、機種変更のサイクルが長くなっていることが挙げられます。AQUOS sense9を買われた方が、AQUOS sense10を買う確率は低い。一方で、AQUOS sense9のデザインは、miyake designに監修いただき、評価が高かった。このデザインをもっと認知させたいという思いがありました。
ただ、まったく同じデザインだと、手抜き感も出てしまいます。同じデザインを用いながらも、色に対する考え方やカメラリング周りの細かな処理では、新しい仕様を作ってきました。
龍華氏 24年に一新したデザインが好評をいただいていた一方で、1台で終わらせてしまうと、AQUOSのデザインとは何だったのかとなってしまいます。世代を経て続けていくことで、市場に反映できる。記号性を統一することは、当初から決めていました。ただ、マイクの位置など、少しでも形状を変えてしまうと使えるケースも変わってしまいます。
シャープでは、「AQUOS sense8」のときに純正のケースを始めましたが、そのころからケースを付けたときの見栄えや、ケースを組み合わせて楽しんでいただくことの訴求をしています。AQUOS sense9では、カメラパネルに色を付けてあることで、ケースとの組み合わせでいろいろなスタイルをオリジナルで作れるようにしました。
Androidスマホはケースが少ないと言われることがありますが、AQUOS sense9のユーザーにも、AQUOS sense10のケースを選べる選択肢があるようにしたかった。そうすれば、逆に、AQUOS sense10ユーザーがAQUOS sense9のケースを選ぶ選択肢があります。そのため、ケースが使える範囲でのデザインにとどめました。
―― 逆に大きく変わっているのがカラーリングです。
龍華氏 今回は、「カジュアル」「キレイ目」「モノトーン」という3つのファッションスタイルで分けています。そのスタイルの方がどういうスマホを持つのか、どういったものを持ってほしいのかというところからカラーを決めているので、よりお客さま像を想像しやすかったですね。AQUOS sense9のときもそうでしたが、AQUOS sense10ではさらに突き詰めて、“仮想コラボ”のようなものまで考えてデザインしてきました。
3グループで色構成はそれぞれ変えていますが、AQUOS senseシリーズはたくさんの方が手に取る商品なので、ふり幅を用意しておき、「こういうのが欲しい」という声にこたえられるようにしています。スマホはコモディティ化してどれも同じ色になってしまっていますが、思い出になる色に出会えるようにしています。
―― デザイン的には、カメラ周りも変わっています。
龍華氏 デザイン的には、カメラリングを太くしています。カメラリングの一番の目的はカメラを保護することですが、徐々にその目的は変わっています。AQUOS sense9では、バイカラーを初めて採用しましたが、ひと塊に見せるためにカメラリングを極力細くしました。それに対し、今回はカラーリングを楽しんでいただけるよう、存在感が出るようにどんどん太くなっていきました。リングを太くすると言っても、カメラの位置自体は変わらないので、どこまでできるかは機構と話をしながら進めています。
―― カラーリングは変わっていますが、AQUOS sense9用のケースを使っても違和感はないデザインになるのでしょうか。
龍華氏 デザインは変更していますが、(ケースの)内側に来るので、どれもピッタリとハマります。
小野氏 「DESIGN FOR AQUOS」で純正ケースを出していますが、9用に6色、10用に6色あるので、本体との組み合わせは1000通り以上になるんですよ。
―― そこにコラボもののケースも加わるということですね。
小野氏 今回は、デニムネイビーをプロモーションカラーにしています。スマホにはなかなかない色だったので、これを印象づけたいと思いました。デニムというところから発想し、まずはジーンズメーカーを当たってみようということになりました。といっても、われわれにはツテがなかったので、サイトにアクセスして、お問い合わせフォームから入っていったのですが(笑)。ジーンズといえば、たまたまシャープと同じ中国地区ですが、児島はジーンズの聖地にもなっています。そこのジーンズメーカーに片っ端から連絡していきました。
AQUOS sense10は、ミッドレンジの端末なので、仕様とお値段のバランスを重視しています。ですので、選択のポイントとしては、同じように品質はいいけど買いやすいお値段に取り組んでいるメーカーを探していきました。そこで行きついたのが、児島ジーンズとBLUE SAKURA JEANSの2社です。
また、もう1つスピングルの純正ケースもあります。ジーンズに合うのは何かというと、やはりシューズです。スピングルはカラーバリエーションの展開が多く、中国地区になるということもあり、掛け合った結果、お話がまとまりました。スピングルも品質に対するこだわりがあり、一度購入されたら革がダメになったときにリペアしてくれたりもします。
―― ケースは、背面の色や素材だけじゃなく、側面とソールの形状も合わせているんですね。スピングルからも、コラボシューズが出るとか。
小野氏 ソールのサンプルをいただき、それに近い色にしていきました。逆に、こちらからもカメラパネルのサンプルを送り合って色を合わせていきました。ソールの形状が独特なので、何パターンかデザイン案を作り、どれが合うかを決めていきました。ソールは広い反面、ケースの側面は面積が狭いので、ディテールをどこまで再現できるかは悩みましたが、お互いにやりとりしながらお話しして今の形に決めていきました。
龍華氏 児島ジーンズは、(ケースもケースのベースにしたジーンズも)ヒッコリーとデニムを組み合わせたデザインになっています。異素材を組み合わせると、洗ったときの収縮率が違うなど難しいのですが、技術を衰退させないということでアイデンティティーにしていたので、それを再現したケースにしています。
BLUE SAKURA JEANSは、まだ世にないものを作るということで、通常、セルビッチはどちらも赤くなるところを、1本だけブルーにしています。ここがBLUE SAKURA JEANSのオリジナリティーなので、ケースも裾を折り返している様子を再現しました。
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