スマホ時代に「写ルンです」が再ブームのワケ 富士フイルムに聞く40周年モデル投入の狙い

» 2026年08月24日 10時00分 公開
[金子麟太郎,ITmedia]

 富士フイルムは「写ルンです」の発売40周年を記念し、新モデルの「写ルンです Active」を8月7日に発売し、「写ルンです Black and White」を9月以降に発売する。スマートフォンで誰もが手軽に高品質な写真を撮影できる現代において、同社はなぜあえて新モデルを市場に投入するのか。同社に書面で取材した。

富士フイルム 写ルンです 発売40周年を記念して登場する新モデルとして、防水性能を備えた写ルンです Activeと黒白フィルムの写ルンです Black and Whiteの2機種を用意する

 デジタル化により一時は下火になった同市場だが、富士フイルムによると、2015年頃から需要の下げ止まりが見られ、2021年頃からは拡大傾向が続いており、2025年度の販売実績は前年度比で約1.5倍となった。現在の再ブームの要因について、同社は次のように回答した。

 「スマートフォンでは撮影後すぐに写真を確認・削除・加工できる一方で、写ルンですは撮影枚数に制限がある中で、フィルムを巻き、ファインダーをのぞいて1枚1枚を大切に撮影し、現像して初めて写真を見ることができます。一連の手触り感ある撮影体験や、現像を待つ時間、フィルム特有の粒状感のある画質、時間がたってから写真を見返し共有する体験が、現在において新鮮な価値として受け止められています」

 新モデル投入の狙いについては、スマートフォンとの二者択一ではないと位置付ける。

 「日常を気軽に記録するスマートフォンと、思い出をより特別なものとして残す写ルンですと役割が異なるため、シーンや目的に応じて使い分けていただけるものと考えています。写ルンです Activeと写ルンです Black and Whiteは、撮影できるシーンの拡張や表現の幅の広がりを通じて、より多くの場面で撮影を楽しんでいただくことを狙いとしています」

 富士フイルムは、水深10mまでの防水に対応した写ルンです Activeのメインターゲット層を、20代後半の女性に据える。

 「お客さまが撮影したいと思いながらも、スマートフォンの使用をためらうようなシーンはどこにあるのかを検討しました。水や砂、衝撃などを気にしてスマートフォンの使用を控える場面でも気兼ねなく持ち出し、その場の体験に集中しながら撮影を楽しんでいただきたいという思いから防水モデルの価値を再定義しました」

富士フイルム 写ルンです 水中や手袋をしたままでも操作しやすいよう、通常モデルより大きく設計されたフィルム巻き取りノブと、シャッターレバーを採用している

 一方、黒白モデルの写ルンです Black and Whiteは、10代後半の男性層を主なターゲットとした。

 「ターゲット層の方々がどのように写真を楽しんでいるのか、ユーザー調査を実施したところ、SNSなどで写真をあえて黒白加工して投稿されている方々がいらっしゃることが分かりました。黒白(モノクロ)写真は、色に左右されない分、被写体や光と影、質感などが際立ち、普段見慣れた風景や何気ない日常のワンシーンも印象的に残すことができます。特別な撮影技術や複雑な設定がなくても、日常をアーティスティックな作品のように表現できることが魅力です」

富士フイルム 写ルンです 写ルンです Black and Whiteの作例。特別な設定をしなくても、光と影が際立つ印象的な写真を簡単に撮影できる

 同社は、若年層へのアプローチを強化する中で、現像ハードルの高さという課題に対して、2025年に日本で提供を開始したスマートフォン専用アプリ「写ルンです+」で対応する。

 「現像できる店舗が近くにない、営業時間内に店舗へ行くことが難しいといった声がありました。写ルンです+は、アプリで現像を注文後、コンビニから撮影済みの写ルンですを発送するだけで、約1週間後に現像した写真の画像データを受け取ることができるサービスです。新商品の展開に加え、現像をサポートするサービスの充実を通じて、初めて使う方にも、以前から親しんでいただいている方にも、より気軽にフィルム撮影を楽しんでいただきたいと考えています」

富士フイルム 写ルンです 2025年から提供を開始した専用アプリの写ルンです+はコンビニから本体を発送するだけで約1週間後にデータを受け取れる
富士フイルム 写ルンです 1986年に発売した初代写ルンですは当時はフィルムにレンズを付けるという逆転の発想で写真文化に変革をもたらした(出典:写ルンです公式サイト)

 富士フイルムが1986年7月に発売した写ルンですは、世界で累計17億本以上を販売し、現在は海外売上比率が7割を超える。グローバル全体で需要が拡大する中、同社は今後の展望を次のように明かす。

 「デジタルが進化するからこそ、アナログの価値が際立つと考えています。写ルンですに求められる役割は時代とともに変化しています。かつては日常を気軽に記録するための製品でしたが、現在では現像するまで仕上がりが分からない楽しさや、フィルムならではの表現、ファインダーをのぞいて1枚1枚を大切に撮影する体験を通じて、思い出をより特別なものとして残すための存在として楽しまれています。今後も写ルンですならではの撮影体験を広げる商品サービスを展開していきます」

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