専用機材や専門用語なし! ソフマップが「Zoom×書画カメラ」で離島のスマホ相談会を成功させた理由

» 2026年08月29日 06時00分 公開
[金子麟太郎,ITmedia]

 ソフマップは鹿児島県奄美市と連携し、情報格差対策に向けた「遠隔スマホ相談会」を7月に開催した。この取り組みの概要、背景から裏側の工夫に至るまでをソフマップに取材した。

 今回の取り組みでは、現地の対面講習と遠隔相談の2つのアプローチできめ細かくサポートした。対面式のスマホ相談会とスマホ講習会は7月16日と17日に奄美市役所で開催。遠隔相談は秋葉原と奄美の会場を結び、専門スタッフがマンツーマンで対応した。7月21日から31日までの計7日間、奄美市役所2階の相談ブースで実施した。参加費は無料で、7月1日から専用電話で事前の予約を受け付けた。

ソフマップ 奄美市 「遠隔スマホ相談会」のイメージ(出典:ソフマップのニュースリリース)
ソフマップ 奄美市 秋葉原の拠点と奄美市役所をオンラインで直結して実施された遠隔スマホ相談会の概要(出典:ソフマップのニュースリリース)

 開催の背景について、ソフマップはニュースリリースで次のように説明している。デジタル技術の進化により生活が便利になる一方、シニア層を中心にスマートフォンの使い方が分からないという不安の声が多かった。同社は東京都豊島区での実証実験で得た成功事例を踏まえ、秋葉原の拠点と奄美市の会場をオンラインで直結したという。奄美市を最初のパートナーに選んだ背景について、ソフマップ広報は「支援を必要とする方々に、地域を問わずサービスを届けたいという課題意識と、奄美市様との協定による連携がありました」と語る。

奄美市の会場と秋葉原の拠点、どうつないだ?

 では、離れた場所をどうつないだのだろうか。ソフマップ広報は「奄美市の会場と秋葉原の拠点は、インターネットを利用し、オンライン会議システムのZoomで接続しました。奄美市公衆無線LANを利用しており、特定の専用回線やローカル5Gなどの構成ではありません」と説明する。また、受講者の手元やスマートフォンの画面を遅延なく確認できる高フレームレートの書画カメラを活用して、個別の操作状況をリアルタイムに把握したという。

 「高度な専用機材を前提にした仕組みではなく、自治体が継続的に導入から運用まで行いやすいシンプルな構成を重視しました」とソフマップ広報。遠隔サポートにおいては映像の高精細さ以上に、受講者がどのボタンを押したか、画面がどのように変化したかをリアルタイムで把握できることが重要なだけに、特別な通信環境や高価な設備に一切依存せず、一般的なインターネット環境で実現可能にした格好だ。

専門用語を使わない直感的な指示で、ユーザーに寄り添ってサポート

 操作を教える際の工夫について、ソフマップ広報は「スワイプやインストールといったIT用語をできるかぎり使用せず、受講者の皆さまが実際に見えているものや日常的に使っている言葉を基準にご案内しました」と明かす。

 例えば、「スワイプ」を「画面を指で横にゆっくり動かす」という表現に置き換えた他、アプリを起動する操作も、「受話器などの絵が描かれたボタンを軽く押す」と具体的に説明できるよう工夫した。

 受講者が独自の表現を用いた場合の対応についても徹底した。ソフマップ広報は「受講者さまがタッチ、押す、プッシュするなど独自の表現を使われた場合は、できるだけその言葉に合わせて説明を行いました。教える側の言葉に合わせていただくのではなく、受講者さまが理解しやすい言葉に寄り添うことを重視しました」と述べた。相手の生活言語に置き換えて分かりやすく伝えるため、技術的な知識だけでなく親身に寄り添う姿勢を持ってサポートしたことが分かる。

 言葉だけでなく視覚的なサポートも積極的に取り入れた。「担当者は音声で説明するだけでなく、共有画面上に直接マーキングや書き込みを行い、操作していただきたいボタンや位置を視覚的に示しました」

 さらに、カメラの設置角度を細かく調整し、端末の持ち方や指の動きまで確認可能にした。どこを押したのかや、なぜ意図した画面に遷移しなかったのかというつまずきの原因を素早く把握し適切な案内へつないだ。

 先行する豊島区での実証実験で得た教訓も数多くあったそうだ。「画面を上に動かしてくださいといった一般的な案内でも、どの指を使えばよいのか、どのくらいの距離を動かせばよいのかが伝わりにくい場面がありました」とソフマップ広報。利用経験や理解度が異なるため、同じ説明でも伝わり方に差が生じることをはっきりと確認し、操作そのものを説明するだけでなく、つまずきの段階を丁寧に把握できたというわけだ。

ソフマップ スマホ操作 専門用語を日常的な言葉に言い換えシニア層の操作不安を解消するマンツーマンの遠隔指導。リテラシーのない人にとって分からない専門用語や言葉は分かりやすい表現に置き換えているそうだ(出典:ソフマップのニュースリリース)
ソフマップ オンライン相談 本取り組みの特徴をまとめた記述(出典:ソフマップのニュースリリース)

 これらの教訓は奄美市での運用に生かされたという。「一度に複数の操作をお願いするのではなく、見る、押す、確認するといったステップに分けてご案内しました。小さな成功体験を積み重ねながら進めることで、不安なく操作していただけました」という。1つ1つの手順を確実に確認しながら進め、画面への書き込み機能などで視覚的に示すことで、より分かりやすく安心できる遠隔サポートを現地の相談会場で実現できたようだ。

奄美市との協定でデジタル機器の再生と活用にも注力

 この相談会は参加費が無料での開催となったが、実は持続可能な事業展開を見据えたものだそうだ。「本取り組みは、相談会単体での短期的な収益化を目的としたものではなく、自治体と連携しながら情報格差の解消という社会課題に取り組むための実証・展開事業として位置付けています」(ソフマップ広報)

 自治体向け事業や通信サービスを含めた総合的な事業の一環としてしっかりと取り組み、社会的価値と事業性の両立を目指し継続的な利用支援を構築した。

 ソフマップは奄美市との協定でデジタル機器の再生と活用にも力を入れている。「リユース端末の流通そのものを目的とするのではなく、端末を必要とする方へ届け、その後も継続的に活用していただくことが重要だと考えています」(ソフマップ広報)

 既に協定に基づき、6月に奄美市が使用していた機器のデータ消去を実施し、リユースタブレットを寄贈する予定だという。機器提供と利用支援の組み合わせにより実効性の高い格差解消を目指せる。

 ソフマップは、離島でも都市部と同等の支援が提供できることを実証し、全国の自治体や地域へ展開する道筋を示した。今後、どのような場所や人へサポートを広げていけるのか注目したい。

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