「Galaxy Z Fold8」の極薄ボディーを実現した新技術「Flex Titanium」開発秘話 一方でトレードオフの機能も(1/2 ページ)

» 2026年09月04日 13時10分 公開
[田中聡ITmedia]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 折りたたみスマートフォンのパイオニアとして市場をけん引してきたサムスン電子。同社は2026年7月に、8世代目となる最新の「Galaxy Z」シリーズを発表した。ラインアップは「Galaxy Z Fold8」「Galaxy Z Fold8 Ultra」「Galaxy Z Flip8」の3機種だ。特にGalaxy Z Fold8は、開くとパスポートのような横長のディスプレイになる新しい形が注目を集めている。

Galaxy Z Fold8 開くと4:3比率の横なディスプレイを利用できる「Galaxy Z Fold8」。折りたたみスマートフォンの新たな形として注目される

 このGalaxy Z8シリーズのディスプレイには、より薄く、耐久性を向上させる新技術「Flex Titanium(フレックスチタニウム)」を導入している。このFlex Titaniumを採用するにあたり、どのような工夫を施したのか。

 開発を主導した、サムスン電子 副社長 兼 Core Component Technology Team Byung-Duk Yang(ヤン・ビョンドク)氏が来日して報道陣からのインタビューに応じた。

サムスン電子 ヤン・ビョンドク サムスン電子のヤン・ビョンドク氏。Galaxy Z8シリーズで新たに取り入れた、Flex Titaniumの技術について詳細に解説いただいた

7世代の知見を集結させ「理想の折りたたみ」を追求

 サムスン電子は初代「Galaxy Fold」の投入以来、より薄く、軽く、高耐久の折りたたみデバイスを目指して技術革新を重ねてきた。そのために、ディスプレイやヒンジ、バッテリー、放熱設計に至るまで世代ごとに改善を施している。

 理想的な折りたたみ体験について、ヤン氏は「大画面の没入感」「薄型・軽量化」「妥協のない性能」の3つを挙げる。そして、これらを高次元で融合させることこそが最大の挑戦だったと振り返る。

 「7世代にわたる技術革新を通じて明確になったのは、理想的な折りたたみは1つの形状だけでは定義できないということだ」

 そこで、今回はは3つの異なるフォームファクターを用意した。創作と生産性を追求したフラグシップ「Galaxy Z Fold8 Ultra」、エンターテインメント体験に特化した「Galaxy Z Fold8」、そしてコンパクトに持ち運べる「Galaxy Z Flip8」だ。

 ヤン氏は「折りたたみでは全ての構成部品が相互に密接につながっている。ディスプレイ構造は厚さ、ヒンジは耐久性と開閉感、バッテリー構造は放熱やフォームファクター全体に影響する」と語る。単に形状を変えるだけでなく、素材から内部構造に至るまで製品全体をシステムレベルで再設計したことが、今回の進化を支えている。

Galaxy Z Fold8 新製品のGalaxy Z Fold8 Ultra、Galaxy Z Fold8、Galaxy Z Flip8いずれも、ディスプレイ、ヒンジ、バッテリーなどで共通の技術を取り入れ、統一された完成度を目指した

Flex Titaniumがもたらした薄型化と耐久性

 今回の技術革新において中核をなすのが、新たに開発されたFlex Titanium技術だ。ディスプレイパネルを保護しながら強度と耐久性を維持し、薄型化を実現するために生み出された。

 数々の衝撃テストや信頼性検証を経て同社が選んだ素材が「チタン」だった。チタンは強度と構造的安定性に優れ、過酷な環境でも変形しにくい特性を持つ。しかし、固く強固なチタンを折りたたみに適した柔軟な形状へと加工することは、極めて困難な課題だった。

 この課題に対し、サムスン電子は「チタンプレート」と「チタン合金フィルム」という2つの素材で解決を図った。

Galaxy Z Fold8 ディスプレイパネルの下部にチタンプレートとチタン合金フィルムを用いて、薄さと耐久性を両立させている(画像はサムスン電子のニュースリリースより)
Galaxy Z Fold8 右端がチタンプレート、その隣がチタン合金フィルム
Galaxy Z Fold8 展示されていたチタン合金フィルムに触れてみたが、紙のようにペラペラだった

 下部を支えるチタンプレートには、ウェットエッチングとレーザーカッティングを組み合わせたハイブリッド製造工程を採用。下部に微細なパターンや大きめの穴を設けることで柔軟な動きを可能にし、上部には安定感のある支持構造を採用した。

 一方のチタン合金フィルムは、チタンにバナジウム、アルミニウム、クロムなどを加えた独自合金だ。超薄型加工と熱処理技術により、強度を保ちながら髪の毛の約3分の1(数マイクロメートル単位)という驚異的な薄さを実現した。

Galaxy Z Fold8 2つのチタン素材を活用することで、薄さと耐久性を両立できた

 また、本体の薄型化に伴い「端末が開けにくくなった」というユーザーの声に応え、ヒンジやマグネットの磁力、ディスプレイの張力を繊細に調整。端部に微細な溝を刻むことで、スリムな形状を維持したままスムーズに開閉できるようにした。

 こうした内部構造の進化により、Galaxy Z Fold8 Ultraは折りたたみスマホとして世界最薄の厚さ4.1mm(開いたとき)を達成。Galaxy Z Fold8も201gというサムスンのFold史上最軽量の重量を実現している。

Galaxy Z Fold8 Galaxy Z Fold8を閉じたときの奥行きは9.7mm。他のスマホよりやや厚いが、折りたたみゆえか、より薄く感じる
Galaxy Z Fold8 Galaxy Z Fold8 Ultraよりやや厚いが、開くと4.5mmという薄さのインパクトは大きい

薄型化とトレードオフにしない バッテリーと急速充電の進化

 デバイスの薄型化を進める上で、最大の壁となるのがバッテリーのスペースだ。サムスン電子は長い駆動時間と急速充電を両立しつつ、安全性と耐久性を妥協しない方針を掲げる。

 Galaxy Z Fold8 Ultraでは、内部のディスプレイモジュール厚を10%削減して空間を捻出し、薄型ボディーに5000mAhの大容量バッテリーを搭載することに成功した。

 エネルギー密度を高めるため、負極材には新たにシリコンカーボンを導入。さらに、膨張を抑える薄型カーボンコーティング、高電圧下でも構造を維持するドーピング技術、セルの安定性を保つ添加剤の適用など、セルシステム全体に精密なチューニングを施している。ヤン氏は「バッテリーシステム全体を再設計する難易度の高い開発だった」と振り返る。

 充電性能においては、Galaxy Z Fold8/Fold8 Ultraは、同社のFoldシリーズとして初となる「45W超急速充電」に対応した。発熱を効果的に制御しながら充電速度を向上させ、バッテリー容量が15%増加しながらも、薄くて軽いボディーを実現した。

 「完成したシステム全体は、実際の使用環境を想定した100種類以上の信頼性テストを通じて徹底的に検証している。単にテストに合格するだけでなく、ユーザーが日常で使う環境でどう動作するかが最も重要だ」(ヤン氏)

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年09月04日 更新
  1. 楽天モバイルが「自動解約」を予告 11月末までに楽天ID連携しないと電話番号失効へ (2026年09月02日)
  2. スマホで久しぶりにワクワクさせられた「Galaxy Z Fold8」のカタチ パスポートサイズで完全に恋に落ちた (2026年09月03日)
  3. スマホのメイン利用キャリアは「ドコモ」が圧倒、満足度トップは「povo」 MMDの調査より (2026年09月03日)
  4. モトローラ初の横開き「razr fold」はなぜ生まれた? FeliCa搭載やIIJmio「10万円引き」の狙いを直撃 (2026年09月02日)
  5. あなたの街の「スマホ決済」キャンペーンまとめ【2026年9月版】〜PayPay、d払い、au PAY、楽天ペイ (2026年09月02日)
  6. IIJmioでガラケー型「MIVE ケースマ」発売、MNPで3万2800円 「OPPO Reno16 5G」も (2026年09月02日)
  7. 【ニトリ】2990円の「マグネット・角度調整スタンド付きスマホ防水ケース」 目線に合わせて高さや角度を調整できる (2026年09月03日)
  8. なぜ? Suicaが使えない「クレカ乗車・QR専用改札機」設置の意図 東京メトロに疑問をぶつけてみた (2026年08月30日)
  9. スマホスタンドにもなる3in1ワイヤレス充電器「CIO NovaWave 3Way+」がセールで10%オフの4480円に (2026年09月03日)
  10. JR東日本「分かりにくい」新幹線券売機を改善へ なぜ、スマホではなく「駅での最短1分購入」を実現? (2026年07月04日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー