FCNTに聞く「arrows Alpha2」 10万円未満を死守できた理由、メモリ8GBでも体験価値を守るチューニングの裏側(3/3 ページ)

» 2026年09月09日 11時14分 公開
[石野純也,ITmedia]
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「最低限」の10万円を下回れるかが判断基準に

―― これだけやりつつも、メモリ以外のところでもコストを10%削減しているというのはすごいなと思いました。

外谷氏 泥臭く、血なまぐさい取り組みをしています。詳細までは言いづらいのですが、arrows Alpha2を作るにあたり、途中から、ハードウェアやソフトウェアを問わず、全ての部門でいかにコストを削減できるかの割り付けがありました。コスト削減は普段からやってはいますが、普段以上に神経を使ってやったのも事実です。メンバーにはかなりの負担をかけてしまいましたが、相当な緊張感をもってやった部分で、その積み重ねとして10%という数字を出せています。

 もちろん、調達に関しても相当頑張りました。メモリ価格がアンコントローラブルな分、他の部品のコストをできるだけ下げる。ただ、バッテリーにシリコンカーボンを使うのも、グローバルとまったく同じものをはめるだけならいいのですが、この筐体用に作ると新規になってしまいます。これが高いんですよね。それを使ってでも安くする努力をし、グループシナジーも生かしてきました。

 また、デザインを作るときには、コンセプトから入り、試作1号機、試作2号機、量産という形でステップがあります。そのブラッシュアップをする際には、量産性や歩留まりを加味した上でデザインを決めています。無駄がないようにするという観点でもすごく気を付けて、CMF(カラー・マテリアル・フィニッシュ)の管理をしてきました。こういった積み上げは、日本メーカーが得意とするところかもしれません。

―― 価格は10万円以下を意識したというお話でしたが、10万円にはやはり大きな壁があるのでしょうか。

外谷氏 本当はもっと安くしたいのですが、最低限の10万円です。このラインが変わってくる可能性はありますが、今の断面では10万円という基準が1つあると思っています。10万円を超えると、販路によっては割賦も組みづらくなってしまう。そういった制限があると、お届けできる方が減ってしまうので、1つのバーとして持っています。

 言葉として伝わるかは分かりませんが、“実需”で買われる方の限界点も10万円です。例えば、iPhoneがどうしても欲しくて買いたい人は、20万円が25万円になっても買います。リセールバリューで端末を回している人も、買うかもしれません。そういう人たちを除いてスマホのハイエンドを実需で買う人のマックスがどれぐらいかを考えると、そこには一定の価格があります。

 実際にはもう少し高くても買われるかもしれませんが、10万円だとまだリーズナブルに見える。時代ごとにその価格は相対的に変わるかもしれませんが、10万円には相当なこだわりを持って設計しました。ただし、われわれは販売価格をコントロールできる立場ではありません。その中で、1つ1つパートナーとどういう形でご販売いただけるかを協議してきました。

arrows Alpha2 左から春藤氏、久保氏、外谷氏、高橋氏

SIMフリーの販路が広がるも、シェアは考えられない

―― IIJの割引も、そういった取り組みの成果なんですね。

外谷氏 IIJさんは、われわれを応援してくださっているところがあります。SIMフリーに再参入するときにやらせていただいてから、非常にいいコミュニケーションを取ってきています。われわれの考えも共有していく中で、IIJさんの最終的なお考えもあり、あのような形になりました。

―― 今回は、最初からau Flex Styleでの販売も発表されました。

外谷氏 去年は途中から扱っていただくことが急きょ決まりましたが、あれも反響が大きかったですね。途中からでしたが、販売はかなり好調でした。そこでお買い求めになった方が結構いらっしゃったというフィードバックもいただいています。今回、より広く面でお伝えできるよう、ショップにもデモ機を置いていただけることになりました。auやUQ mobileのユーザーからは、arrows Alphaを出さないのかというお声を多くいただきました。販売できる機会をいただけたので、ご期待にこたえることができます。

―― SIMフリーの販路がどんどん広がっていますね。

外谷氏 ソフトバンクさんでも、SoftBank Free Styleで扱っていただけるようになり、私としても非常にうれしく思っています。今回は、Y!mobileでもお取り扱いいただき、乗り換え施策も付いている。そういった選択肢があることを一緒に訴求していければ、いい取り組みになるのではないかと考えています。

―― arrows We3もかなり踏み込んだ価格設定をしていましたが、シェアを上げていくことを目指しているのでしょうか。

外谷氏 正直に申し上げると、今はシェアの話を考えられない状況にあります。何とか調達を行い、お客さまにご迷惑をおかけしないことを第一に考えています。われわれに限らず、他のメーカーも含めて、今はどういう市場になるのかが分からないのではないでしょうか。

 全体的に価格が上がったとき、マーケットはどう変わるのか。シェアは今までのままで総販が落ちることもあれば、そうではないこともあります。ですから、社内でもあまりシェアの議論にはなっていません。数字も含めて、第4四半期ぐらいにならないと見えてこないかもしれません。このニューノーマルが一般化したときが、本当の競争です。

取材を終えて:執念の価格維持が正解と評価されるか

 初代arrows Alphaが好評だったことを受け、急ピッチで投入が決まったarrows Alpha2だが、その前に立ちはだかったのがメモリの高騰だった。開発の各工程で徹底的なコストダウンを図りながら、最小構成のメモリを8GBに減らすことで、何とか価格を維持できたというのが実態だ。10万円以下という価格設定では、プロセッサを維持できただけでも御の字だったという。

 一方で、特に要望が多かったデザインは大幅にブラッシュアップされており、見た目はもはや別物といえるほどの端末に仕上がっている。持ち前の耐久性を維持したまま、ベゼルを細くしたり、ガラスをフラットにしたりすることで、“今っぽさ”が大幅に増した格好だ。カラバリも増し、初代arrows Alphaに抵抗があった人でも選びやすくなったことは間違いない。

 メモリが高騰する中、端末のカテゴリーを見直したり、値上げしたりするメーカーも多い。FCNTの判断は、その真逆と考えていいだろう。どちらが正解かは不透明だが、arrows Alpha2への反響を見る限り、価格維持の方向性は間違っていなかったようにも思える。この機種は、そんな混沌(こんとん)としたスマホ市場の動向を読み解く上でも重要な1台といえそうだ。

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