「手に届くハイエンドスマホ」にも“値上げ”圧力――FCNTは「arrows Alpha2」の価格をいかに抑えようとしたのか?(1/4 ページ)

» 2026年08月19日 16時30分 公開
[井上翔ITmedia]
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 FCNTは8月18日、新型スマートフォン「arrows Alpha2」のオープン市場(SIMロックフリー)版(arrows Alpha2 M10)を発表した。先行発表済みのNTTドコモ向けモデル(arrows Alpha2 F-51G)と共に、8月27日に発売される。

 オープン市場版の想定価格は、8GBメモリ+256GBストレージ構成が9万4000円、12GBメモリ+512GBストレージ構成が11万8800円となっている。先代の「arrows Alpha」のオープン市場版と比べると、ある程度の割高感は否めない。

 しかし、8月18日に行われた本製品の発表会でFCNTの担当者が語ったことを総合すると、これでも価格は“抑えられた”上に、機能改善も図れたのだという。どういう工夫をしたのだろうか。

arrows Alpha2 arrows Alpha2はIndigo、White、Red、Blue Greenの4色展開となっている
発表会の登壇者 発表会の登壇者。左からFCNTの高橋知彦氏(統合マーケティング戦略本部 マーケティング統括部 担当部長)、外谷一磨氏(統合マーケティング戦略本部 本部長)、桑山泰明社長、正能由紀氏(統合マーケティング戦略本部 マーケティング統括部 副統括部長)

「手の届くハイエンド」が特徴だった先代モデル

 arrows Alpha2の話をする前に、先代のarrows Alphaについて話をしておきたい。

 arrows Alphaは「手の届くハイエンド」をキーワードに、ハイエンドモデルの“価値”を10万円未満の価格で実現することを目標に開発された。スマホの心臓部たるプロセッサ(SoC)に注目すると、本機は明らかにミドルレンジの上位(ミドルハイ)モデルなのだが、アウト側のメイン(広角)カメラを高スペックなものにするなど、要所でハイエンド部材も使っていることが特徴だ。

 “本当の”ハイエンドモデルの価格がどんどん高騰していく中、arrows Alphaの掲げた「手の届くハイエンド」路線は一定の成功を収めた。

 MM総研が実施した調査によると、2025年7月から2026年6月の期間において、販売価格が8万円以上のオープン市場向けスマートフォンでは販売台数が1位となったという。

 またFCNTが購入者を対象にアンケート調査をしたところ、7万円未満のスマホからの乗り換えと、7万円以上のスマホからの乗り換えの比率が半々ずつとなったそうだ。ある意味で「ハイエンドスマホ高すぎ問題」への答えとなった様子が伺える。また、arrows意外のスマホからの買い換え(買い増し)が6割に達したそうで、arrows(FCNT)ユーザー層の拡大にも貢献したと思われる。

販売台数 arrows Alphaの販売は好調で、オープン市場版については販売価格8万円以上のオープン市場向けスマホとしては出荷数でトップとなったという
狙い通り ハイエンドスマホを使っていた人と、エントリー(ローエンド)スマホを使っていた人の両方から支持を受けたようで、ある意味でコンセプト通りの販売状況となったようだ
ユーザーや識者からも好評 購入後のユーザーアンケートでも満足度は高めで、ITmedia Mobileの「スマートフォン・オブ・ザ・イヤー 2025」のハイエンド部門第2位となった

2代目を襲った「メモリ価格の高騰」

 arrows Alphaの次世代モデル、つまりarrows Alpha2の開発において大きな課題としてのしかかったのが、昨今のメモリ価格の高騰だ。データセンターにおけるAI(人工知能)処理需要の高まりを受けて、メモリメーカーはより多くの利益を見込めるサーバ向けメモリの生産を重視するようになり、そのあおりをうけてPCやスマホ/タブレットで使われるクライアント機器向けのDRAM/NANDメモリの価格も値上がり傾向が続いている

 現在のFCNTは、世界中で事業を展開するLenovoのグループ企業だ。メモリを含む部材の調達では、グループの持つスケールメリット(規模の経済)を生かすこともできる……はずなのだが、そのスケールメリットをもってしてもメモリの価格高騰の影響は避けがたいようだ。

 AIを身近なものにしているインタフェースとして、スマホの役割は大きい。FCNTではメモリ価格の高騰した現状を「AI時代の“ニューノーマル”」と捉える一方で、「危機感を覚えている」ともする。「AIは誰もが恩恵を受けられるテクノロジーであるべき」なのに、「(AIを)活用するスマートフォンの価格は今後も上昇していくと考えられる」という、ある種の矛盾した状態だ。

 FCNTとしては、これが「新たなデジタルデバイド」につながりうると危機感を抱いている。だからこそ、arrows Alphaで掲げた「手の届きやすいハイエンド」という方向性が重要性を増したともいえる。

ニューノーマル メモリ価格の高騰を「AI時代の“ニューノーマル”」としている所からも、メモリ価格の高止まりはしばらく続くという見立てをしていることが分かる
デジタルデバイド メモリ価格の高騰で、AIに触れるインタフェースたるスマホの価格も高騰している中、「手に届きやすいハイエンド」への挑戦は重要だとFCNTは語る

 しかし、メモリ価格の高騰は想定以上で、arrows Alpha2の企画を“根底”から揺るがすほどだったという。まずFCNTが販売価格を抑えるために検討した選択肢は以下の通りだ。

  • 現行モデル(arrows Alpha)からスペックを下げる
  • 現行モデルから機能を削る
  • 現行モデルを継続販売する

 ただ、3つ目の「現行モデルの継続販売」という選択肢を取ったとしても、追加生産の際には部材調達が必要で、従来の価格を維持することは困難な状況だったという。

部材 部材の中でもメモリの価格高騰は非常に急激で、現行モデルの継続販売を選択したとしても、価格の維持は困難(≒値上げは不可避)という状況だった
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