バルミューダ初のスマートフォン「BALMUDA Phone」が、2026年9月30日をもって全ての製品サポートを終了した。大型画面化が進む市場に一石を投じた異色の端末は、事業撤退を経てついにその歴史に幕を下ろした。独自デザインで異彩を放ちつつも撤退を余儀なくされたプロダクトの軌跡をここで振り返る。
2021年8月、バルミューダは新ブランド「バルミューダ テクノロジーズ」の立ち上げとスマホ市場への参入を発表した。寺尾玄社長は画一化されたスマホ市場へ疑問を投げかけ、持ちやすさを追求した4.9型コンパクト画面の端末を提示した。
手のひらに収まる曲線美をまとった本体には、QualcommのプロセッサSnapdragon 765を搭載していた。背面の単眼アウトカメラは4800万画素を誇り、日常の使い勝手を考慮したミッドハイレンジの仕様で構成した。
しかし、独自アプリのBALMUDA Schedulerや計算機などの開発費が想定を大きく上回った。本体価格は10万円を超え、同社が最も届けたかった体験価値が消費者の間に十分浸透しないという大きな壁に直面した。独自路線を貫いた端末だったが、市場の厳しい評価と採算面の課題は重くのしかかった。
バルミューダは2023年5月12日、スマートフォン開発および販売事業からの撤退を正式表明した。そのわずか3日後の5月15日には、製造を担当していた京セラが個人向け携帯電話事業の終了を発表した。携帯電話業界全体を揺るがす衝撃が駆け抜け、時代の大きな区切りを印象付けた。
事業撤退後も段階的な整理が進められ、2024年9月2日に販売終了のお知らせを公開した。同年9月30日には直営旗艦店のBALMUDA The Store Aoyamaを含む全店舗で本体や保証サービスBALMUDA Phone Careの販売が終了した。ソフトバンクモデルや各種取扱店におけるSIMフリーモデルも在庫限りで展開を終え、新規の安心保証登録も同年10月14日に受付を締め切った。
販売終了の発表から2年が経過した2026年9月30日、ついに独自アプリやアクセサリーを含めた全ての製品サポート期間が満了を迎えた。
この節目の日に、開発の最前線に立ち続けてきた関係者が発信した言葉が印象深かった。バルミューダのプロダクトデザイン部の高荷隆文氏は、サポート終了当日に自身のXアカウントへ胸の内を投稿した。
高荷氏はサポート終了について報告し、この端末が人生を変えたプロダクトだったと振り返った。製品が得た称賛だけでなく、成果が上がらなかった苦悩や厳しい批判も含めて大きな経験になったと素直な心情を明かした。波乱に満ちた開発と運用の年月を支えてくれたユーザーに対し、高荷氏は心からの感謝を伝えた。
賛否両論が巻き起こった端末ではあったが、その独特な世界観やコンパクトな操作性を愛用したユーザーの存在が、開発陣の大きな支えとなっていた。厳しい指摘から逃げずに受け止めた真摯(しんし)な姿勢が、投稿された言葉から溢れ出ていた。
そして高荷氏は投稿の最後を、新しいチャレンジを準備中であり引き続き頑張るという力強い意気込みで締めくくった。巨大な挑戦と失敗から学んだ教訓は、バルミューダのモノづくり魂を消し去るどころか、次なる革新を生み出す強固な糧へと変化を遂げている。困難を乗り越えたデザイナーたちが準備を進める新しいチャレンジが、再び世の中を驚かせる日の到来を期待したい。
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