バルミューダがスマホ撤退に追い込まれた理由 寺尾社長「存分に戦えなかったことに悔しさが残っている」

» 2023年05月12日 18時34分 公開
[石井徹ITmedia]

 バルミューダ(BALMUDA)は5月12日、スマートフォン開発・販売事業からの撤退を発表した。同日実施された決算会見において、寺尾玄社長が今後の方針を説明した。

 バルミューダは2021年11月に「BALMUDA Phone」を発売し、携帯端末事業に参入した。ソフトバンクが大手キャリア独占で販売した他、自社販路でのSIMフリー端末の販売も行っている。

 BALMUDA Phoneでは、京セラが製品開発に協力し、製造を担当している。手に収まる小型ボディー、曲線だけで構成されたフォルム、独自開発のユーティリティーアプリなどが特徴となっていた。バルミューダは発売後に表示フォント追加などいくつかの機能アップデートを実施している。2022年には専用ワイヤレス充電器も発売するなど、BALMUDA Phone専用の周辺機器を複数投入していた。

BALMUDA BALMUDA Phone

カレンダーアプリ「BALMUDA Scheduler」のサポートは継続

 BALMUDA Phone向けに開発されたアプリのうち、カレンダーアプリ「BALMUDA Scheduler」については、Google Play ストアで無料アプリとして公開されている。バルミューダはこのアプリについて、継続的なアップデートを実施する方針を示している。

「BALMUDA Scheduler」 BALMUDA Scheduler

 BALMUDA Phoneや周辺機器は、在庫限りで販売される。製品サポートはSIMフリーモデル、ソフトバンク版とも2026年9月30日まで継続される。

 定期的なセキュリティアップデートは2023年11月まで提供される。以降も致命的な脆弱(ぜいじゃく)性が見つかった場合は、対応を検討するとしている。プリインストールアプリについては、アップデートでの大きな機能追加は行わない方針としている。

IoT製品の開発へ舵を切る

 バルミューダの寺尾玄社長は、「特にソフトウェアの部分のクオリティーの作り込みが非常に困難だった。時間と根性だけではなく、多大な資金が必要だった。自分たちの規模、スマートフォンというビジネス全体が持っている大きさ、そのスケール感の違いにより、存分に戦えなかったことに悔しさが残っている」と反省の弁を述べた。

BALMUDA バルミューダの寺尾玄社長

 BALMUDA Phoneの次期モデルとして、2号機、3号機の投入計画も存在していたが、製造費の増加などの要因を受けていずれも開発を断念した。寺尾氏が撤退を決断したのは4月で、5月12日の取締役会で会社としての撤退の方針が決議された。

 BALMUDA Phoneのみが属する携帯端末事業の売上高は、2021年度が28億4700万円、2022年度が8億6800万円となった。2023年度1Q(2023年1〜3月)は200万円にとどまっている。BALMUDA PhoneはSIMフリー版の販路がバルミューダの旗艦店やオンライン販売に限られていたため、売上高の大部分はソフトバンク向けと推測される。

 バルミューダは撤退に関わる費用として、同社は2023年度1Q決算において5億3600万円の特別損失を計上している。

 事業継続は断念する結果となったが、寺尾社長は「チャレンジを続けるのはBALMUDAのDNAだ。ちゅうちょせず挑戦したのは良きことだと思う」と前向きに表明する。また、「私は今でも、BALMUDA Phoneが大好き。手に持ってストレスが少ないので、結果使いやすいんです。黒と白があるのですが、それぞれ5台ずつ自分用の在庫を確保しています」とBALMUDA Phoneへの愛を語った。

 バルミューダはBALMUDA Technologiesブランドについては存続する方針を示している。BALMUDA Phoneでアプリを開発した知見を生かして、今後は新たなコンセプトのIoT製品を開発・販売する考えだ。

BALMUDA 今後は主力事業の家電に注力しつつ、IoT製品を投入する方針という

 寺尾社長は「これまで『家電をIoT化してもしょうがないです』と言っていたが、今の考えは違う。生活家電や生活にまつわる道具と、インターネットテクノロジーをこれまでとは異なるレベルで組み合わせられるのではないか。いろいろなものがネットにつながって、これまでになかった便利さ、楽しさを生活の中に届けられるのではないかと考えて、真剣に取り組んでいる」と表明した。

 IoT対応の製品の家電や道具について、12日時点では具体的な製品イメージは明らかにされなかった。寺尾氏は「年内にはなんらかのご案内できるのではないか、したいなという思いでいます」と説明している。

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