Sunの幹部のほとんどは買収に際して高い報酬を得ることになっていたが、買収後の従業員のことも考えていた。IBMがここ数年、一連のレイオフを実施していることを考えれば、その懸念はもっともなものだった。とはいえ、OracleによるSun買収完了が発表されるまでには、何回かのレイオフが行われたとゴスリング氏は言う。
ゴスリング氏の場合は、SunがIBMに買収された方がうまくいっていただろう。同社は優れた技術者を優遇する。例えば、IBMがRational Softwareを買収した際、Rationalで統一モデリング言語(UML)を共同開発していた主任研究員のグラディ・ブーチ氏はIBMフェローになり、優遇された。ブーチ氏も壇上に立ってIBMのために講演するような仕事もしたが――同氏はそういうことが得意で好きでもある――、IBMのソフトウェア部門と研究機関を仲介するという重要な役割を担い、技術革新に深くかかわっている。ゴスリング氏も同様になっていたかもしれない。
ゴスリング氏は、IBMの方がマイクロマネジメントの問題が小さかっただろうと言う。同氏によると、Java関連のほとんどすべての決定にラリー・エリソン氏の影響を感じたという。確かに、IBMの会長兼CEOであるサム・パルミサーノ氏なら、買収に際して細かい状況に直接口を出すことは、たとえSunのような重要な企業の場合でもしないだろう。Oracleはエリソン氏の創造物だが、IBMはパルミサーノ氏が創り上げた企業ではないのだ。そこに大きな違いがある。
取材者の視点から見ると、ゴスリング氏が描くエリソン像はスポーツ界の大立者、アル・デイビス氏のようだ。NFLのオークランド・レイダーズのオーナーであるデイビス氏は、自分のチームを仕切るためにひたすらコーチを雇い、選手をドラフトで獲得する。だが、Oracleと違ってレイダーズはここしばらく勝っていない――わがボルティモア・レイブンズがスーパーボウルを制した2000年、トニー・シラグサがレイダーズのクオーターバック、リッチ・ギャノンの肩に痛烈なタックルを食らわせ、レイダーズの希望も打ち砕いて以来。
ゴスリング氏はエリソン氏と直接話し合ったことはないそうだが、「彼は不気味な人だ」という。「Sunの幹部全員が、報酬に関して一杯食わされた。肩書きは変わらなくても、決定権は無くなった」
同氏は、“不気味さ”はエリソン氏だけでなくOracleの権力構造にもあると主張する。ゴスリング氏は、Oracleによる買収を我慢しているSunの忠実な社員らの士気を高めることを考えた。Sunはサンタクララにある遊園地、グレートアメリカを借り切って、Sunの従業員に1日楽しんでもらうことにしたという。マクニーリー氏とジョナサン・シュワルツCEO(当時)はこの予算内のプロジェクトを承認し、計画は進んでいたとゴスリング氏は説明する。ところがイベント開催の数日前に、Oracleのサフラ・カッツ共同社長がこのイベントの計画をかぎつけ、中止させた。
「サフラはこの計画を知ってカンカンになった」とゴスリング氏は語った。「Oracleは従業員感謝イベントはしない、ということだった。サフラはイベントをキャンセルさせた。だが、支払いは済んでいたので、何の節約にもならなかった。結局、われわれはチケットを慈善団体に寄付した。そうしたイベントは“オラクル流”ではないという理由で、われわれはあきらめさせられたのだ。その一方で、Oracleはレース用ヨットに2億ドルも費やしている」
また、ゴスリング氏はマクニーリー氏がOracleからほのめかされた“残虐さ”について言及し、OracleがAndroidでのJava利用をめぐって米Googleを提訴したのは、予測できたことだったと語った。実際、ゴスリング氏は自身のブログで、SunがJava特許の状況について説明したとき、Oracleの弁護士らが目を輝かせたと書いている。
だが、法廷争いの結果がどうであれ、Googleが意図的に悪意を持っていたとも、“若いMicrosoftのように”Javaを使って世界征服をもくろんでいたとも言えないとゴスリング氏は語った。また同氏は、Googleに移ってAndroidの開発に従事している元Sunの従業員を非難することもなかった。
「われわれは、Googleがやっていることとそのやり方にかなり腹を立てた。だが、訴訟は非常に高くつく。金銭だけでなく、幹部の時間も犠牲になる。米政府とMicrosoftの裁判では、わたしの人生の1年が忙殺された」とゴスリング氏。
それに、「Googleには世界中に愛される子どものようなオーラがあり」、そんな子どもを訴えることなど、Sunとしてはしたくなかったと同氏は説明した。ゴスリング氏は別のブログ記事で、SunがAndroidの問題にどう対処しようとしたかをさらに詳しく説明している。
ゴスリング氏は、Oracle支配下で働く筋合いはないと決めはしたが、Oracleの下にあるJavaの将来は心配していないと語った。
「JavaがOracleの手にあることについては心配していない。Javaは本当に価値のあるものだからだ」とゴスリング氏は言う。「Oracleのビジネスの多くはJavaによって立っているから、OracleはJavaを損なうことはできない。Javaを大切にするのがOracleにとって得策なのだ」
だが、「しばらくは難しい状態が続くだろう。Oracleには非常に傲慢なところがある。彼らは、Java Community Process(JCP)との問題を解決できるとしているが、JCPは対立姿勢をくずしていない」(ゴスリング氏)
タスク指向フレームワーク「Mylyn」の開発者であり、米Tasktop TechnologiesのCEOを務めるミック・カーステン氏は、「プラットフォームとしてのJavaの将来には不安がある。Javaプラットフォームを足場としている企業や組織にとっては、Javaが特定のベンダーの下に収まっていないことが安心感を生み出している」と語った。
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