「見通し」ながら決算を公表した東芝。次の見どころは、2016年度の「有価証券報告書」だ。
有価証券報告書には独立監査人の監査報告書を添付する必要がある。この報告書でPwCあらたが「否定的結論」あるいは「結論の不表明」を表明した場合、東証は基準に基づき同社の株式の上場廃止を検討する可能性が高い。
「無限定の結論(適正意見)」「限定付結論」のいずれかを得られるように、同社はPwCあらたと協力して決算作業を進める必要がある。
また、報告書を法定期限の6月30日までに財務局に提出できるかどうかも焦点だ。東証のルールでは、財務局に提出した日から1カ月以内に東証にも有価証券報告書を提出しなければならない。先述の通り、財務局の承認を得られれば提出を延期できるが、その場合は、延長期限から8日以内に提出しなければならない。
提出期限延期の有無を問わず、期日までに有価証券報告書を提出できなかった場合、東証は東芝の株式の上場廃止を決定する。
もう1つ、見どころがある。それは「債務超過」だ。
債務超過は株主資本(純資産)額よりも債務額の方が多い状態。今回東芝が発表した通期決算見通しでは、債務超過額が5400億円となっている。2017年度決算でこれを解消できない場合、東証は東芝の株式の上場廃止を決定する。
東芝は、4月に分社した東芝メモリの売却益を原資として債務超過を解消する方針だ。しかし、東芝メモリ売却をめぐって、NANDメモリ事業で協業している米Western Digitalが5月14日(現地時間)付で国際仲裁裁判所に仲裁を申し立てたため、売却手続きが予定通りに進まない可能性が生じた。
2018年3月31日までに東芝メモリの売却手続きを完了できなければ、東芝が上場廃止となる可能性はより高まる。
東芝をめぐる経営環境は、より厳しさを増している。今後、同社の経営陣がどのような判断をしていくのか、注目したい。
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