「AIBO」から「aibo」へ――ソニーが12年ぶりに登場した犬型コミュニケーションロボット「aibo」(アイボ)は、AIとロボティクス技術によって大きく進化していた。
外観は、以前のようなロボット然としたデザインではなく、全体的に丸みを帯びて本物の犬に近づいた。ただしリアリティー志向ではなく、目に有機ELパネルを採用してさまざまな表情を作るなど、全体としては適度にデフォルメされている。
動きはスムーズだ。新開発の1軸/2軸小型アクチュエーターにより全身22の自由度を持ち、小気味よい反応と動きを実現。とくに“腰を左右に振る”、“首をかしげる”といった犬らしい動きを身につけた。
そして以前のAIBOとの大きな違いは、aiboが好奇心旺盛なところだろう。オーナーからの呼びかけに反応するだけではなく、能動的に働きかけるという。4つのマイクは声のする方向を捉え、鼻先の魚眼レンズ付きカメラはオーナーをしっかり区別(画像登録が可能)。優しい声や笑顔まで認識し、オーナーが喜んでくれることを学習する。愛情をかければ、より深い愛情を返すようになるという。
「ソニーには伝統的なメカトロニクス技術がある。センサーやコンテンツを組み合わせ、AIロボティクスで生活をより刺激的、豊かにする。これからもさまざまな提案をしていきたい」(ソニーの平井一夫社長)
aiboの学習と成長を実現したのが、「3つのシステムで構成されるAI」だ。本体内蔵のAIとクラウド上のパーソナルAIに加え、上層に各aiboの動作状況をまとめるCommon AIが存在する。例えば、あるaiboがとった行動によってオーナーがとても喜んだ場合、ほかのaiboにも情報を共有して行動パターンを増やす。「クラウド上にある複数のAIが集積することで、aiboはさらに賢くなる。“集合知によるAIの進化”だ」(開発チームの川西泉さん)
またaiboのモーションを作成できるWindowsソフト「Action Maker」を提供し、モーションを共有するためのストア展開など、オーナー参加型の成長システムを構築する考え。aiboがダンスを踊るモーションなども出てくるかもしれないという。
ネットワーク端末としてのaiboは、かなり高機能だ。スマートフォンなどにも使われる64bitクアッドコアプロセッサ(クアルコムのSnapdragon 820)とモーションプロセッサを搭載し、組み込みLinuxの上でリアルタイムOSが動く。Wi-FiやLTE(SIM内蔵)でネットワークにつながり、クラウド上のAIと連携すると同時にソフトウェアバージョンアップやモーションの追加といった各種ネットワークサービスを利用できる。
今のところaiboの用途はエンターテインメントがメインになっているが、ソニーではB2B(business to business)向けの需要も喚起する方針。まずインターネットに接続されたデバイス間でローカルコンピューティングやデータキャッシュ、同期などをセキュアに実行できる「AWS Greengrass」を導入し、aiboをIoT機器連携に対応させるほか、時期は未定ながらパートナー企業向けソフトウェア開発環境を提供する計画も示した。
「教育、見守り機能、パーソナルアシスタント機能の追加も検討している。パートナー企業と一緒にオープンなソフトウェア開発環境を作っていく」(川西さん)
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