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「AIBO」から「aibo」へ 人とふれあい成長する“3つのAI”とは?

» 2017年11月01日 19時48分 公開
[芹澤隆徳ITmedia]

 「AIBO」から「aibo」へ――ソニーが12年ぶりに登場した犬型コミュニケーションロボット「aibo」(アイボ)は、AIとロボティクス技術によって大きく進化していた。

“aibo”「ERS-1000」。カラーはアイボリーホワイトのみ
1999年に発売された初代AIBO

 外観は、以前のようなロボット然としたデザインではなく、全体的に丸みを帯びて本物の犬に近づいた。ただしリアリティー志向ではなく、目に有機ELパネルを採用してさまざまな表情を作るなど、全体としては適度にデフォルメされている。

目には有機ELを採用

 動きはスムーズだ。新開発の1軸/2軸小型アクチュエーターにより全身22の自由度を持ち、小気味よい反応と動きを実現。とくに“腰を左右に振る”、“首をかしげる”といった犬らしい動きを身につけた。

 そして以前のAIBOとの大きな違いは、aiboが好奇心旺盛なところだろう。オーナーからの呼びかけに反応するだけではなく、能動的に働きかけるという。4つのマイクは声のする方向を捉え、鼻先の魚眼レンズ付きカメラはオーナーをしっかり区別(画像登録が可能)。優しい声や笑顔まで認識し、オーナーが喜んでくれることを学習する。愛情をかければ、より深い愛情を返すようになるという。

aiboの魚眼カメラで発表会場を見た映像。人を複数認識していることが分かる

 「ソニーには伝統的なメカトロニクス技術がある。センサーやコンテンツを組み合わせ、AIロボティクスで生活をより刺激的、豊かにする。これからもさまざまな提案をしていきたい」(ソニーの平井一夫社長)

各種センサーを搭載

 aiboの学習と成長を実現したのが、「3つのシステムで構成されるAI」だ。本体内蔵のAIとクラウド上のパーソナルAIに加え、上層に各aiboの動作状況をまとめるCommon AIが存在する。例えば、あるaiboがとった行動によってオーナーがとても喜んだ場合、ほかのaiboにも情報を共有して行動パターンを増やす。「クラウド上にある複数のAIが集積することで、aiboはさらに賢くなる。“集合知によるAIの進化”だ」(開発チームの川西泉さん)

集合知によるAIの進化

 またaiboのモーションを作成できるWindowsソフト「Action Maker」を提供し、モーションを共有するためのストア展開など、オーナー参加型の成長システムを構築する考え。aiboがダンスを踊るモーションなども出てくるかもしれないという。

ソフトウェア開発環境も提供

 ネットワーク端末としてのaiboは、かなり高機能だ。スマートフォンなどにも使われる64bitクアッドコアプロセッサ(クアルコムのSnapdragon 820)とモーションプロセッサを搭載し、組み込みLinuxの上でリアルタイムOSが動く。Wi-FiやLTE(SIM内蔵)でネットワークにつながり、クラウド上のAIと連携すると同時にソフトウェアバージョンアップやモーションの追加といった各種ネットワークサービスを利用できる。

システム構成

 今のところaiboの用途はエンターテインメントがメインになっているが、ソニーではB2B(business to business)向けの需要も喚起する方針。まずインターネットに接続されたデバイス間でローカルコンピューティングやデータキャッシュ、同期などをセキュアに実行できる「AWS Greengrass」を導入し、aiboをIoT機器連携に対応させるほか、時期は未定ながらパートナー企業向けソフトウェア開発環境を提供する計画も示した。

ソフトウェア開発環境も提供する

 「教育、見守り機能、パーソナルアシスタント機能の追加も検討している。パートナー企業と一緒にオープンなソフトウェア開発環境を作っていく」(川西さん)

開発チームの川西泉さん(左)と平井社長(右)

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