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Teslaロングドライブ、横浜から岡山まで1400km 残り5%予測ギリギリ旅の乗り切り方走るガジェット「Tesla」に乗ってます(5/5 ページ)

» 2021年12月08日 09時11分 公開
[山崎潤一郎ITmedia]
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ガソリン車なら2万3000円だったところを6650円で走破

 旅の最終日は、京都観光の後、そのまま横浜に帰りますが、途中で充電しなければたどり着けません。そこで、新東名高速道路の下りの浜松SAの商業施設に隣接した浜松のスーパーチャージャーを利用することにしました。ただ、SAの商業施設に隣接しているとはいえSA外の駐車場にあるので、浜松スマートICから高速道路を一時退出しなければならないのは大津と同じです。

 バッテリー残量50%で到達しプラグインした後、時間にして約50分、98%まで回復した時点で充電を停止して出発しました。浜松スーパーチャージャーは、開設が2016年7月と古く、最大充電出力が120kWと遅いため、大津の250kWと比較して時間がかかります。充電時間を利用して夕食をとりました。

photo 充電開始時は筆者のModel 3だけが停まっていたが、終了時には後から到着した1台のModel Sが充電していた。後ろの建物がSA内の商業施設。人間だけが行き来できる仕組み

 途中、東名高速道路の集中工事による大渋滞に巻き込まれながらも無事に帰宅しました。1400kmを走破し消費電力は約190kWh、電気代はおおむね6650円といったところです。自宅充電、宿充電、スーパーチャージャー、公共充電と複数の料金体系による電力が混在しているので計算が複雑ですが、まあ、当たらずといえども遠からずといったところです。

 以前は、同様の旅をV6エンジンを搭載した燃費の悪いメルセデス・ベンツで行っていました。11月末は、ちょうどハイオクガソリンの単価が1L当たり175円程度だったことを考えると、前車なら2万2000〜2万3000円のエネルギーコストを費やした計算になります。

 筆者はもともと、時間をかけて余裕をもったクルマ旅をする人間なので、EVの最大のネックとされる充電時間は苦に感じませんでした。実際、充電中であってもクルマを離れて食事や買い物を済ませることができますからね。ただ、先を急ぐ旅やせっかちな性格の人にはEVは向いていないのかもしれません。

13時間以上尿意を我慢し電費との戦い

 冒頭でもご紹介したように、Model 3のロングレンジで776kmを走破した猛者がいます。ハンドルネーム「yanoshi」さんは、青森からスタートして東北自動車道→首都圏中央連絡自動車道→関越自動車道→高崎スーパーチャージャーという経路でロングドライブの記録を樹立しました。

 「TeslaFi」という約2万6000人のTeslaオーナーが参加する車両データ記録するクラウドがあります。TeslaFiは、Teslaのサーバが公開しているAPIを利用しており、オーナーは自車の走行距離や充電履歴などのログデータを閲覧することができます。筆者も利用しています。

 yanoshiさんはTeslaFiの「Longest Drives By Distance」ランキングで世界のTeslaFiユーザーにおいて原稿執筆時トップに輝いています。スペック性能で航続距離580kmのEVを13時間25分かけて776kmも走らせたのですから、その中身を聞くと壮絶な記録との戦いといった印象です。

photo TeslaFiの1回充電あたりの最長ドライブ記録ランキング。yanoshiさんを含めベスト10に日本人ユーザーとおぼしき人物が3人もいる

 TeslaFiでのデータ記録は、ドアを開けドライバーが運転席から離れた瞬間にそれまで積み上げた距離データがリセットされてしまいます。従って、運転席を離れることはできません。「尿意との戦いです。人生初の“ボトラー”に挑戦するつもりで準備していましたが、いざとなると出す気が失せて結局我慢しました、健康に悪いので二度としたくありません」と13時間を超える死闘を振り返ります。

 さらに「空気抵抗を意識しながら速度変化はなるべく少なく、左車線を他車を気にしながら走りました。空気圧は適正値にして、下り坂では微妙なアクセルコントロールを駆使して運動エネルギーの蓄積に回しました」と、電費を稼ぐコツについて語ってくれました。

 他にも、エアコン、カーステレオ、標準のスマホ充電は使わず、「アウトドア用の大型バッテリーを持ち込んでスマホを充電し、iPadで音楽を流しながら走行していました」と、ここまでくるとEV電費無双の気迫に圧倒されます。下り坂以外では、基本的にオートパイロットで走行したそうです。

 最後に「きつかったので正直、もう挑戦したくありません」といいつつ、「この想定で822km走れるはず」という、標高1000メートルの山梨県の道の駅でスタートした後、関東平野の平坦路を走り、最後は盛岡スーパーチャージャーでゴールするルートを教えてくれました。

 挑戦してみれば、と言われているような気分でしたが、還暦を過ぎてトイレが近い筆者には到底無理な話です。ただ、男性用の尿漏れパンツをはいて挑戦するという手もありますね。いや、無理無理……。

著者プロフィール

山崎潤一郎

音楽制作業の傍らライターとしても活動。クラシックジャンルを中心に、多数のアルバム制作に携わる。Pure Sound Dogレコード主宰。ライターとしては、講談社、KADOKAWA、ソフトバンククリエイティブなどから多数の著書を上梓している。また、鍵盤楽器アプリ「Super Manetron」「Pocket Organ C3B3」「Alina String Ensemble」などの開発者。音楽趣味はプログレ。Twitter ID: @yamasakiTesla


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