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ときはまさにNFT元年 3D、動画、画像、音楽、印鑑、漫画、チケット、小説――何でもNFT化される時代に

» 2021年12月28日 17時00分 公開
[谷井将人ITmedia]

 2021年は「NFT」(代替不可能なトークン)躍進の年といって間違いないだろう。3月に米Twitterの共同創業者ジャック・ドーシー氏が世界初のツイートをNFT化して出品したのを皮切りに、一気に注目を集め始め、日本でもゲーム、VR、イラスト、音楽など、ありとあらゆるものがNFTとして売りに出されるようになった。

 NFTは、ブロックチェーン技術を活用してデジタルアート作品などの唯一性や、制作者・所有者情報などを証明できる技術。改ざんにも耐性があり、コピーが簡単なデジタルイラストでもNFT化すれば真贋(正しい所有者)を見分けられるようになる。実際の絵画と同様に二次流通させることも可能だ。

 本記事では21年に日本で発行された数多くのNFTを紹介する。

VRアーティスト・せきぐちあいみさんの作品が約1300万円で落札

 3月にはVRアーティスト・せきぐちあいみさんのVRアート作品「Alternate dimension 幻想絢爛」が、NFTマーケットのOpenSeaで約1300万円で落札された。せきぐちあいみさんはVRペイントソフトでVR空間内に3Dイラストを描くアーティストで、絵画の中に入り込むような表現が特徴。

NFTアートが約1300万円で落札 世界的VRアーティストのせきぐちあいみさんに、“VR一点もの”オークションに挑戦した経緯を聞いた

photo せきぐちさんのNFTオークションページ

VTuber・キズナアイさんの3D人形

 9月にはバーチャルYouTuberのキズナアイさんが、人形のような3DモデルをNFTアートとしてOpenSeaで数量限定販売した。NFTマーケットではVTuberの3Dモデルやファングッズの出品も散見される。

キズナアイが公式NFT 3Dコラボモデルを200個限定で販売

Perfumeは振り付けデータをNFT化 現在の価値は当時の2倍に

 音楽ユニット・Perfumeはメンバーの振り付けデータをNFT化してオークションに出品した。最高落札価格は2万MATICで、当時のレートで換算すると日本円で約300万円だった。MATICは高騰が続いており、現在の価値は日本円で600万円を超える。

Perfume、初のNFTアート販売 メンバーの振り付けを3Dデータ化

Perfume、NFTアート第2弾をオークション出品 第1弾は約300万円で落札

photo 販売されたNFT

テレビ朝日は懐かしのロボットアニメをNFT化

 テレビ業界もNFT事業へ進出している。12月にはテレビ朝日が超電磁ロボ コン・バトラーV」「ビデオ戦士レザリオン」など東映が手掛けたロボットアニメの名シーンをデジタルトレーディングカードとして限定販売を始めた。

テレ朝がNFT事業に本格参入 「コン・バトラーV」など東映ロボットアニメをデジタルトレカ化

パ・リーグは名試合をトレーディングカード風に

 パ・リーグ6球団もNFT事業に参入し、パ・リーグの名場面動画をNFT化してコレクターアイテムとして販売した。選手や場面によってレアリティーを設定しており、星2は2000円、星3は5000円、星4は2万5000円で販売。発売から約2週間で星4は全て売り切れている。

メルカリとパ・リーグがNFT事業に参入 名場面をコレクターアイテムに

 NFTの取引ではイーサリアムなどの暗号通貨が使われることが多いが、パ・リーグのNFTは現金のみ対応。通常は禁止している公式映像のダウンロードを限定的に許可するなど、NFTの提供方法について工夫が見られる。

photo 益田直也選手のNFTはすでに売り切れ

NFTと相性がいい? シヤチハタの印鑑

 シヤチハタもNFT事業への参入を発表している。印影のデータを利用者の情報を結び付けてNFT化し、偽造のリスクを減らした電子印鑑「NFT印鑑」を開発するとしている。押印した瞬間に、いつ誰がどの書類に電子印鑑を押したかという情報を記録できるようにするという。

シヤチハタが「NFT印鑑」開発へ 印影データと持ち主を結び付け偽造防止

NFTチケットは転売されてもアーティストに利益還元

 電子チケット販売サービス「ZAIKO」を運営するZAIKO(東京都港区)は3月にNFT化した電子チケットを発行・販売できるサービスを始めた。NFTは二次流通時に発生した利益の一部を発行者が受け取れる仕組みを作れる。

転売もOK、電子チケットの「NFT」を販売するサービス登場 ライブの視聴権などをブロックチェーンで証明

「北斗の拳」「ONE PIECE」など名作漫画もNFTに

 10月には「北斗の拳」「ONE PIECE」などの名作漫画もNFT化された。北斗の拳は「南斗六聖拳」6キャラクターの“死に様”名シーンに、アニメクリエイター・小美野雅彦氏による描き下ろし演出を加えた「『北斗の拳』漢の死に様シリーズ 南斗六聖拳ボックス」(4910円)を発売した。

「北斗の拳」NFT即日完売 “漢の死に様”漫画+動画+保有証明 クレカで買える

 ONE PIECEでは、名場面を活版印刷した作品と、NFT化した所有証明書をセットで抽選販売。価格は49万5000円。

「海賊王に 俺はなる!!!」 「ONE PIECE」活版印刷、美術品として販売 NFTで真贋証明

photo 作品案内ページ

漫画の“描き文字”もNFT化

 オタクコイン協会は9月に「ネジネジ」「ブニブニ」などマンガの擬音語をモチーフにしたNFTアート「マンガ擬音NFT」を先着3300人に限定配布。約1時間で予定人数に達したという。

「マンガの擬音語」をNFTアート化、先着制で配布 応募相次ぎ約1時間で締め切り 「ネジネジ」「ブニブニ」など3300種類

イラスト、画像はもはや気軽にNFT化できるものに

 イラストや画像をNFT化して配布・販売する例はもはや数えられないほど多い。NFTマーケットプレースには当たり前のようにイラストが出品されている。

 有名どころでは「えんとつ町のプペル」、香取慎吾さん、ドワンゴ(ニコニコ動画)などがNFTアートの分野に進出している。

キンコン西野氏、「プペル」外伝イラストをNFTオークションに オーナーは「Webサイト上に絵を掲載できる」

寄付すると香取慎吾さん作のNFTアートが受け取れる パラスポーツ支援のチャリティー企画

ニコ動の「左上アイコン」がNFTに 15周年企画で30人にプレゼント

坂本龍一さんは「Merry Christmas Mr Lawrence」を細切れにして出品

 音楽家の坂本龍一さんはピアノ曲「Merry Christmas Mr Lawrence」を1音ごとに細切れにしてNFTとして出品した。中には二次流通しているものもあり、価格は10万円から3000万円超えまで幅広い。

坂本龍一さんのNFT販売ページ

NFTがテーマの小説をNFTにした小説家

 小説家の沢しおんさんは、デビュー作「ブロックチェーン・ゲーム 平成最後のIT事件簿」をNFT化してOpenSeaに出品した。小説の本文をQRコードに変換し、画像としてNFT化したもの。読み込めば本文を閲覧できる。

沢しおんさんのNFT販売ページ

その他さまざまなものがNFTに

 これらの他、NFTマーケットを見てみると、ドット絵、AIが生成した画像、彫刻、YouTube動画、トレーディングカード、写真、習字、クイズ集、サイン色紙……などアイデア次第であらゆるものがNFT化され出品されている。

 NFTマーケットといえばOpenSeaが有名だが、日本国内でも暗号資産取引所「Coincheck」を運営するコインチェック(東京都渋谷区)やGMOインターネットグループがマーケットをオープン。取引環境はそろいつつある。

コインチェック、デジタルアイテム「NFT」の取引所を開始 所有権をブロックチェーンで証明、海外では75億円の価値が付く例も

GMO、NFT事業に参入 マーケットプレースを後日オープン

 一方、NFTは「法的な議論がまだ十分でない」「ファンアイテムが投機目的で買い占められる」「ブロックチェーンのマイニングは環境に悪い」「自分の作品が第三者に勝手にNFT化された」など問題も指摘されている。

 これらとどのように折り合いを付けるか次第で、22年以降の日本におけるNFTの受け取られ方は変わっていきそうだ。

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