出先での充電体験を試そうと大黒パーキングエリアに立ち寄り急速充電を実施しました。バッテリー残72%から始めた充電ですが、83%を越えたあたりで「充電異常」の警告が表示され、充電が止まってしまいます。一度、充電プラグを抜いて、再度、認証プロセスから試しましたが、結果は同じでした。
これは、日本発の充電規格であるCHAdeMOの「450Vの壁」が発生したためと思われます。国が定める電気設備の技術基準には、安全性を考慮して450Vという制限値が設けられています。ここにEX30のような高い充電性能を誇る海外メーカーの車両を接続すると、電流値(アンペア)が上昇しケーブルが発熱するなどの問題が発生します。
ボルボ・カー・ジャパンの広報も充電異常の表示は「バッテリーの電圧が450Vに達したため停止したものと思われます」とコメントしています。つまり、今回の充電異常は、EX30に問題があるのではなく、充電環境の問題というわけです。ただし、自宅などの交流電源で行う200V/16Aの普通充電であれば、80%を超えても問題なく充電は可能でしょう。
好印象のままに終えたEX30の試乗でした。EVだからというわけではなく、クルマとしても素晴らしいユーザー体験をもたらしてくれました。Googleに対応したインフォテインメントはもちろん、運転支援機能などの安全装備も申し分ありません。スポーティーでゴツゴツ感のある21年式Model 3と比較すると、車内の静音性や乗り心地は極めて快適でした。
ただ、オーディオについては音質やイマーシブ感でModel 3の方が勝っていると感じました。コストダウンとリサイクルを優先したため、スピーカーの数や設置位置に制限が課せられているからでしょう。フロントウェンドウの下にハーマンカードンのサウンドバーを設置することで制限をカバーしようとしています。
試聴は、各種サブスクサービスを利用しましたが、ロッシー音源である点を考慮しても、一般的なマルチスピーカーシステムを搭載したクルマと比較するのはかわいそうな気がしました。ちなみに、LFE(Low-Frequency Effect)再生装置としてのサブウーファーが搭載されているので低域もそこそこ出ています。
EX30は、バリューチェーン全体でのサステナビリティを大きく意識したクルマでもあります。実際、EX30のプレスリリースには、「EX30のライフサイクルアセスメントは、ボルボ EV史上最少のカーボンフットプリントを実証」とあります。そのためか、前述のスピーカー構成、再生素材を多用したインテリアの質感、パワーウェンドウ用スイッチの使い勝手の悪さなど、情緒的な価値や利便性を犠牲にしている部分もあります。
このあたりは、Volvoがこのクルマに込めた理念に共感するか否かで、見方が大きく変わってきます。筆者は、環境問題について意識が高いわけではありませんが、この理念は理解できますし、それを製品に可視化する形で反映させているのは立派だと思いました。
筆者は、次にクルマを乗り換えるチャンスがあるとしたら、他のクルマは眼中になく、Tesla一択だと考えていました。しかし、EX30の試乗を終えた今、そこに新たな候補が加わったことは付け加えておきます。
著者プロフィール
音楽制作業の傍らライターとしても活動。クラシックジャンルを中心に、多数のアルバム制作に携わる。Pure Sound Dogレコード主宰。ライターとしては、講談社、KADOKAWA、ソフトバンククリエイティブなどから多数の著書を上梓している。また、鍵盤楽器アプリ「Super Manetron」「Pocket Organ C3B3」「Alina String Ensemble」などの開発者。音楽趣味はプログレ。Twitter ID: @yamasakiTesla
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