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充電代は抑えられた? “ノーSC縛り”の結果は――テスラで挑む「横浜→岡山」往復1500km旅【後編】走るガジェット「Tesla」に乗ってます(4/4 ページ)

» 2025年03月09日 14時30分 公開
[山崎潤一郎ITmedia]
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給油なら10〜20分で済むところを充電は2時間18分

 ところで、前編で約束した、スーパーチャージャー(SC)を使用せず、高速道路のSA/PAの充電器だけを利用した際のコスト比較の答え合わせをしましょう。結果は、一時退出しないでCHAdeMOだけを利用した方が約1000円安価だということが分かりました。

 もっと安価になると予測していたのですが、約1000円という差額に止まったのは、おそらく、TeslaのCHAdeMOアダプターの出力上限が50kWに制限されていることが原因だと思います。そのため、SC並の充電量を確保しようとすると、90〜150kWの大出力機の恩恵を受けることができず、30分×4回の充電が必要になり料金が高額にならざるを得ないからです。

 いくらゆっくり旅を掲げる筆者とはいえ、SA/PA内での充電に2時間を費やすのはちょっと抵抗があります。1000円程度の差額なら、一時退出をして深夜割引のリセットを受け入れても、SCを利用した方がユーザー体験としては正解であろうという結論を得ました。

目的地に到着するに足る必要最低限の充電量を確保するだけなら、CHAdeMO充電は2回で済み半額になるが、翌日の活動に必要な電力を確保しようとするとCHAdeMOは高額になる

 さて、旅の総括です。1500kmの旅全体の充電料金、ガソリン車とのコスト比較、充電時間比較などの情報は、以下の表をご覧ください。

往路編の表の再掲。ガソリン換算の対象車など、数値等の前提条件は往路編を参照されたし

 普段は新幹線を利用しているので、今回は約2年ぶりのModel 3での帰郷でした。オートパイロット(AP)のおかげで運転の疲れを感じることなく、快適な移動が可能だったのは言うまでもありません。

 ただ、エネルギー補給に費やす時間比較という点では、ガソリン車だと回数も少なく合計10〜20分で済むところを、5回、2時間18分を充電に費やしているので、そこはEVの欠点と言えます。ただ、充電中は、SA/PAやSC近くのお店で食事を取ったりトイレ休憩をしているわけですから、単純に時間だけを比較するものではないという思いもあります。

 そもそも、60歳代も後半になり70歳という通過点が見え始めた今、長距離移動において、目をつり上げて120km/hで攻めたり、パンパンに膨らんだ膀胱をだましながら1分1秒でも目的地に早く着こうなどとは思いません(笑)。実際、トイレ休憩のためだけに立ち寄ったSA/PAでも、土産店を徘徊したり、景色を楽しんだりして、気がついたら30分程度は普通に滞在しています。

 そういった意味では、年を重ねた人のクルマ旅において、EVという選択肢は決してネガティブな体験ばかりではないでしょう。ゆっくり旅を実践する上で、振動や静寂性など、ガソリン車より優位な面も多いわけです。前編でも紹介しましたが、車中で仮眠をとる場合もエアコンが使えるので安眠できます。冬季や夏季の車中泊だって可能です。筆者は、7月の蒸し暑い長野でエアコンを効かせた車中泊を経験しています。

 高速道路上の充電設備を管理・運営するe-Mobility Powerでは、昨今、以前とは比較にならない勢いで、90〜150kWhの高出力充電器を1つのスポットに対し複数器新設しています。また、サードパーティーが設置する市中の急速充電器も増加しています。従って、充電渋滞も起こりにくく、そういった面でのストレスや心配は改善されつつあります。Teslaの場合で言うと、国内のSCも120拠点を越え、今後も続々とオープンする予定です。

SA/PAで見かけることが多くなったe-Mobility Powerの90kW級充電器。最大6台が同時に充電できる

 筆者の場合、長崎までModel 3で往復3000kmの長旅の経験があります。その後、九州を再度観光で訪れていますが、そのときは飛行機とレンタカーを利用しています。定期的な帰郷の際も新幹線を利用します。その方がタイパという面で有利だからです。

 しかし、愛車での長旅は、公共交通機関を利用するのとは、まったく異なる体験を得ることができます。時間を犠牲にするだけの価値がそこにはあります。これからも、時間を作りModel 3を駆って長旅を楽しみたいと思います。

【追記】冬期の航続距離は2割減

 2024年末に兵庫県宝塚市に住む親族に不幸がありました。家族3人での移動であることや荷物があり、Model 3で横浜から出掛けてきました。好天に恵まれたものの、さすがに年末ということもあり、外気温は本稿の旅よりは日中で10度近く低いというEVには不利な条件でした。

 結果的に電費は、往路で146Wh/km(6.84km/kWh)、復路で155Wh/km(6.45km/kWh)と本稿の旅との比較で2割程度悪化しています。3名乗車であることも影響(本稿の旅は1名乗車)しているとは思いますが、冬期は航続距離が減ずるという、これもEVの現実です。

著者プロフィール

山崎潤一郎

音楽制作業の傍らライターとしても活動。クラシックジャンルを中心に、多数のアルバム制作に携わる。Pure Sound Dogレコード主宰。ライターとしては、講談社、KADOKAWA、ソフトバンククリエイティブなどから多数の著書を上梓している。また、鍵盤楽器アプリ「Super Manetron」「Pocket Organ C3B3」「Alina String Ensemble」などの開発者。音楽趣味はプログレ。Twitter ID: @yamasakiTesla


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