Intel、「2005年末までにすべてをデュアルコア化」

» 2004年05月10日 10時28分 公開
[IDG Japan]
IDG

 「デュアルコアプロセッサへの移行でシングルコアプロセッサのロードマップを破棄する」というIntelの決定は、同社がこの先、速度重視型の設計に依存せずにプロセッサ性能を向上させる後押しとなるだろう――アナリストは5月7日、このように評価した。

 この日、Intelの製品プランから投入が予定されていたプロセッサが2つ消された(5月8日の記事参照)。Intelの広報担当者は、Pentium 4の後継版とされていた「Tejas」と、Xeonサーバプロセッサの次期版「Jayhawk」の2つが開発中止になったことを明らかにした。代わりに同社は2005年末までに、サーバ、デスクトップ、モバイルの全シリーズでデュアルコア設計を採用する予定だ。

 デュアルコアプロセッサとは、文字通り、1つのダイに2つのプロセッサコアを搭載したプロセッサ。高クロックのコア1つではなく、比較的省電力のコア2つを使って性能向上を図れるため、半導体設計者はこの設計に関心を引かれている。

 Insight 64の主席アナリスト、ネイサン・ブルックウッド氏は、デュアルコアプロセッサへの移行は自動車のエンジンの移行と似ていると考えている。

 「これはシングルシリンダーエンジンからダブルシリンダーエンジンへの移行と同じだ。ダブルシリンダーエンジンの方が走りが滑らかで燃費が良い。大型シリンダー1基の代わりに小型のシリンダー2基を利用できる」と同氏。

 IBMとSun Microsystemsは、ハイエンドサーバ用デュアルコアプロセッサを投入済み。Intelもサーバプロセッサ「Itanium」シリーズをデュアルコア化する計画を発表している。

 デュアルコア設計によって、Intelは、今年2月にリリースした「Prescott Pentium 4」で直面していた消費電力の問題を解決することができる。PrescottはIntelが90ナノメートル製造プロセスを導入した初のプロセッサ。回路の縮小化に伴い、電力が熱となって回路から漏れてしまうため、消費電力は半導体設計者にとって深刻な問題となっている。

 Intelは製造プロセスが世代交替するたびに、ほとんどの場合クロック周波数と消費電力の管理をシンプルな手順で処理してきたと、Microprocessor Reportのケビン・クレウェル編集長は語る。

 同社は旧世代の製造プロセスの限界までプロセッサの周波数を堅実に引き上げ、新世代の製造プロセスの準備が整うと、新たなプロセス技術のメリットを活かしてより周波数が高くて消費電力の低いプロセッサを投入していたと同氏は説明する。

 しかしPrescottは先行モデルの「Northwood」と比べて、周波数が同じ場合により多くの電力を消費する。その一因としては新しい命令セットとキャッシュが追加されたことも挙げられるが、アナリストらは、90ナノメートル製造プロセスで発生する電流漏れは予想以上だと考えている。

 デュアルコアプロセッサに配置された各コアは、より周波数の高いシングルコアプロセッサと比べて低い周波数で動作できるため、消費する電力が少なく、優れた性能を発揮するとクレウェル氏。

 Intelの社長兼COO(最高執行責任者)のポール・オッテリーニ氏は昨年、Pentium 4は2004年末までに4GHzに達するとアナリストに語ったが、クレウェル氏は、Prescottの消費電力の問題はそれ以上の周波数を実現するのが極めて困難なことを示していると指摘する。

 Intelは、最終的に自社のサーバ・デスクトップ・モバイルプロセッサを、現在「Pentium M」プロセッサで採用しているBaniasアーキテクチャに移行させる計画だが、XeonとPentium 4の最初のデュアルコア版に関しては、現行のNetburstアーキテクチャを引き続き採用する考えだと、同社の計画に詳しい複数の情報筋が7日に明らかにした。

 Intelは安定した移行プロセスを求めるサーバ顧客の声を聞き入れる形で、サーバ製品向けの特別なテスト・検証を行うことになるだろう。新しいアーキテクチャとデュアルコア設計をいきなりサーバベンダーに持ち込むのは、要求が大きすぎるかもしれないと情報筋は語っている。

 Baniasアーキテクチャを基盤とするプロセッサは、Netburstベースのそれよりも小型で消費電力が少ない。Intelは2006年中に、Baniasアーキテクチャの派生版を自社プロセッサに標準採用する見通し。

 Illuminataの主席アナリスト、ゴードン・ハフ氏は、デュアルコアプロセッサのパワーの優位性は明らかだが、その性能については個々のコアを活用できるソフトが提供されるかどうかにかかっていると指摘する。

 同氏によれば、デスクトップアプリケーションは従来シングルスレッドだという。ソフトウェアスレッドはほかの命令ストリームに依存せずに動作できる命令ストリーム。

 デュアルコアプロセッサは個々のソフトウェアスレッドを同時処理できるため、シングルコアよりも速いスピードでマルチスレッドアプリケーションを実行できる点で優れているとハフ氏。ただシングルスレッドのアプリケーションを実行する場合は、ほとんどのケースにおいてシングルコアプロセッサのほうがデュアルコアよりも速いという。

 Intelは、既にハイパースレッディング技術でマルチスレッドアプリケーションの開発を支援している。ハイパースレッディングは、OSに対してコンピュータが2つのプロセッサを搭載しているように見せかけて、デスクトップ・サーバプロセッサの使われていない実行ユニットを活用するIntel独自の技術。

 この技術は基本的に仮想デュアルプロセッサシステムを構築するものだと、Microprocessor Reportのクレウェル氏。MicrosoftのWindows XPや現行版LinuxカーネルなどのマルチスレッドOSでは、この技術を利用して、異なる2つのタスクをより効率的な手法でPCで同時処理することが可能だという。

 開発中のマルチスレッドアプリケーションの数は増えており、また複数のシングルスレッドアプリケーションを同時に実行しているユーザーも、デュアルコアプロセッサがもたらす性能上の恩恵を受けるだろうとハフ氏は見込んでいる。

 さらにMercury Researchの主席アナリスト、ディーン・マカロン氏は、デュアルコア化に向けた動きによって、Intelは従来から持つ製造力の強みを発揮できるだろうと話している。デュアルコア設計を手がける半導体メーカーは、1つのチップに大量のトランジスタを搭載しなければならないが、この点で膨大な製造リソースを保有するIntelは競合企業を大きく引き離すかもしれないと同氏は見ている。

 なお、この1年「Opteron」サーバプロセッサで大きく注目を集めたIntelのライバルAMDは、自社のデュアルコアプロセッサに関する戦略について詳しく語ることを避けている。

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