5.次はカット編集。ムービー毎に扱う部分のイン点アウト点を指定し、「カット」をクリックしていく。この「カット」という表現が紛らわしいのはちょっといただけない。実際には「選択部分を採用」といった意味合いなのに、削除してしまうような印象を与えてしまう。
6.必要があればチャプターを設定する。ムービー内でチャプターを切り換えたい部分を表示させて「設定」ボタンを押せば、そこでチャプターが切り替わるようになっている。
このように、編集機能は最小限に絞っているが、「必要な部分を切り出して見易いコンテンツとする」ためには十分である。
7.ここでDVD作成の準備に入るのだが、ビデオのモードとしては、Hyper DVDとDVD-Videoが選択できるようになっている。この2つの違いについては悩んでしまいそうなものだが、実はディスクのフォーマットとしては違いがない。
Hyper DVDを選択すれば450〜9000Kbpsの間でビットレートを設定できる。つまり、低ビットレートのムービーが作成できる。DVD Videoを選択すれば2500-9000Kbpsの間でしか設定できない。市販のDVDプレイヤーであれば「まず間違いなくサポートされているビットレート」に絞られるのだ。
音声については、DVD Videoを選択した時だけ、LPCMを選択することができるようになっている。
8.次の画面で実際に画面サイズやビットレートなどを設定すると、予想作成ファイルサイズが表示される。
9.次はDVDのメニュー画面。非常にシンプルなレイアウトで、前述のように1階層しか持つことができない。唯一できるカスタマイズは背景画像を変更すること。BMPやJPEGファイルを指定すれば、好みの画像をメニューの背景に設定できる。美しいものに仕上げるのは困難だが、とにかくムービーを閲覧したいのであれば十分だろう。
10.これで全て準備は整った。あとはエンコードするのみ。どのような素材であっても、トランスコードにかかる時間は非常に少ない。
さて、実際にデータをいくつかエンコード(トランスコード?)してみた。まずは2分28秒、88.6Mバイトの720×480ピクセルのMPEG-2ファイル。これを352×240ピクセル、音声64Kbps、ビットレート450Kbpsに設定し、Pentium M 1.4GHzのマシンで試したところ、2分10秒で完成(もちろんメニューまで含めて)。出来上がったVOBファイルは12Mバイトだ。わずか7秒のDVコーデックを使ったAVIファイルは20秒。結果のVOBは664Kバイト。5分のDivXファイルについては実に1分30秒で済んだ。
問題は結果のファイルである。450Kbps、352×240ピクセルでエンコードしたファイルがどんなものなのか……。まず、動きの速い部分はかなりブロック歪みが生じた。まあ、仕方ないといえば仕方ない。しかし、アニメなどの動きが少ない部分については、ほとんど問題ないレベルで再生できていた(動きが早くなるとやはりブロック歪みは目立つが)。
これらの結果を352×240ピクセルで再生する分には、そんなにマズくはないかもしれない。が、他の技術(Windows Mediaなど)と比較すると、かなりマズい。さらに、それをVGA相当のサイズ(2倍)で表示すると、かなり気になるレベルとなってしまう。さらに、民生用のDVDプレイヤーでテレビ出力ともなれば、普段きれいな画像を見ているテレビだけに、さらに粗は目立つ。
再生の互換性については、私は一台のプレイヤーで再生したのを確認したに過ぎないので、何とも言えない部分があるが、チェックすべきポイントとなるのは
といったところである。そもそも、「上限が何bpsまで」という点に関しては各社とも意識しているものだが、最低ラインについては、スペック上でなかなか明確にされていないものだ。このあたりはメーカーに問い合わせるか、小さなサンプルを作っておそるおそる試してみながらやるしかなさそうだ(このあたりの情報がホロンのWebサイトなどで提示してあれば嬉しいのだが……今のところ、少なくともDVD-R対応のPS2では再生できるという情報が出ている)。
画質や技術の先進性という点からだけレビューすると、このソフトの評価はあまり高くならない。450Kbpsの範囲であれば、すでに優秀なコーデックはもっとゴロゴロあるからである。
しかしながら、コンセプトがしっかりしており、「素早く、簡単に、より多くのムービーを、より多くの機器で再生する」「DVDビデオが短時間・高画質だけでなく、超長時間・エコノミー画質を選択できるようになった」という点にフォーカスされているのは素晴らしい。しかも、MPEG-2の規格に違反していない。規格違反と思えるのはGOPくらいだ。
以前、このサイトのコラムで、「MPEG-2のスペックは、互換性と実績以外の点ではMPEG-4より優れたものではない」というような主旨のことを書いたが、このツールは、「だから、その互換性が重要なんでしょうが!」と強烈に言い放っている。キワモノっぽく見られがちだが、実はよく考えられている。これは素直に認めなければならないだろう。画質云々で単純に評価してはいけないソフトなのである。とにかく、互換性を気にせずにサクサクとディスクを作りたい人にはいいだろう。
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