R-D1の画質について語るのは難しい。
今回評価したのは、JPEGモードのチューニングがまだ終わっていなく、CCD RAWモードで撮った作例なら使ってもOKという、発売前のボディで撮影したということ。よって掲載するのはR-D1用の現像ソフトで作り出したJPEG画像である。多少のレタッチや露出補正はその段階でかけてある。
CCD RAWで撮った画像の現像用ソフトはPhotoshopのプラグインと、単体の現像ソフト「Photolier」の2種類の形態で提供される。
まとめて現像するバッチ機能も持っている。同じ条件で複数のカットを撮ったときに便利。
露出やホワイトバランス、色合いや輪郭強調といった機能の他、レンズによる周辺光量低下を補正する機能も持っている
もうひとつは、レンズ。R-D1はEPSON純正のレンズを持たない。最新のフォクトレンダーレンズはあるもののR-D1用というわけではないし、中には戦前に作られたライカレンズや、ライカのMマウント互換のレンズも多数ある。もちろんどのレンズも「デジタルカメラで使われる」なんて夢にも思わずに開発されている。よって、レンズの違いが画質にも大きな影響を与えるのだ。
特に周辺部の画質低下は分かりやすいところ。他にも写りのシャープさや発色の良さにも影響を与える。
ただ周辺部の画質低下については専用の現像ソフトでサポートされている。
その辺を考慮しつついうなら、画質はデジタル一眼レフカメラと比べても遜色ないと言ってよいだろう。
さてそんなR-D1だが、カメラとしての実用性はどうか、得手不得手はどうなのか。
一眼レフに対するメリットは、前述したようにシャッターを切った瞬間でもファインダー像がブラックアウトしない、ファインダーが明るくて見やすい、ピント合わせが正確に出来る、ミラーショックがないため手ぶれしづらい(これは本当に実感できた)、両目を開けて撮ることができる、などがある。気持ちの面ではメカぽくて撮ってて気持ちよい、見た目がシンプルで撮られる側に圧迫感があまりないというのもあろう。
デメリットもある。オートフォーカスやズームレンズが使えない。レンズは単焦点のマニュアルフォーカスのみだ。使えるレンズの画角が限られる。パララックスが大きいため、どうしても望遠レンズは苦手だ。パララックスが大きいため、マクロ撮影も苦手である。もちろん連写もできない。
画質面ではまった遜色ないし非常にきれいに撮れるが、実用性という意味では一眼レフの方が上かな。でも撮っていて気持ちがよいのはどちらか、といわれるとけっこう困る。R-D1の感触はかなり気持ちよいのだ。デジタルとかアナログとかそんなことを考えずに気持ちよく撮れる。
わたしは「ライカ」というブランドにもレンズにも「レンズ交換式レンジファインダーカメラ」という形態にも思い入れがまったくないので、ライカを使っている人や、ライカ系の古いレンズを持っている人と感じ方は違うかもしれない。でもR-D1にはデジタル一眼レフとは違ったよさはあると思う。実際、他のデジカメとは違った撮影の気持ちよさがある。
このクラシックなメカテイストならではの、手作り感覚の楽しさといってよいかもしれない。特にR-D1には作り手のこだわり満載なので、モノとして手に取りたくなる魅力も持っているのだ。
そんなわけで、MマウントやLマウントの古いレンズを持っていて、なおかつデジタルカメラに興味があるなら一度使ってみる価値はある。往年のレンズをデジタルで使え、しかもカメラもアナログ風の操作でデジタルならではの痛痒感がないのだ。メカ式ならではのビビッドな反応がよいのだ。
デジタルカメラのインタフェースは期待したタイミングでフィードバックがこないことがあるけど(ダイヤルを回してから項目が変わるまでほんの少しズレがあるとか)、R-D1はそんなこともない。
レンズは持ってないしレンジファインダーカメラを使ったことはないけどどうしてもR-D1が欲しくなったいう人は、現行のフォクトレンダーのレンズか、中古カメラ屋でMマウントのレンズを買ってきて付けて使ってみよう。いろんなレンズを使い分けてみれば「古いレンズの味」も分かってくるかもしれない。
でもなんだかんだいって、30万円ほどするシロモノ。デジタル一眼レフより高価だ。あくまでも機能や実用性重視ではなく、趣味……さらには「道楽のためのデジカメ」なのである。そう断言したい。「この道楽者!」とそしられつつレンズを揃え、首からぶら下げて街に出ていろんなものを撮るというのもまた乙なはずである。
なお、ライカ自身もデジタル版のレンジファインダーカメラの開発を表明している。デジタルカメラの世界でも、レンジファインダーカメラが生き延びていくのは確かなようだ。
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