ケータイ動画も、ここに来てようやくMPEG-4に終息した感がある。特定の企業のフォーマットではなく、「標準」が採用されて良かった!……と思いたいのだが、そんなに簡単な話でもない。すべてに互換性があるわけでもなく、ファイルフォーマットは同じでも音声コーデックが違うために再生できなかったり、逆にコーデックは同じなのに、ちょっとしたフォーマットの違いで再生できなかったり、あるいは、同じキャリア内でも機種の違いによって再生できなかったり、上限のファイル容量によってダメだったり……。とにかく、いろいろな要素がある。これらを一旦、整理してみよう。
NTTドコモ(FOMA)のiモーションは3GP
かつてはWindows MediaのASFファイルを採用していたNTTドコモだが、現在のiモーションメールでは、MPEG-4ファイルフォーマットを元にした3GP形式が扱われている。基本的に15フレーム/秒までということになっている。
パソコンの動画をFOMAユーザーに送る場合には、QuickTimeを使って3GP形式に書き出し、どこかのサイトにそのムービーを置き、そこへのリンクのアドレスをメールに記述して送ることになる。ケータイ側からiモーションメールとして送る場合には最大100Kバイト。
KDDI(AU)のEZムービーは3G2
以前はKDDI独自のAMCフォーマットが使われていたが、現行機種では3GPP2(3G2)形式が使われている。この3G2、基本的には3GPと同じなのだが、ムービーを分割してダウンロードするための断片化機能というヤツがついている。
しかしながら、いくら「現行機種では3G2」といったところで、昔のAU機を使っている人は3G2を再生することができない。だから未だにAMCは生き続けている。3G2もAMCも、やはりQuickTimeで書き出すことができる。以前はKDDIが独自のAMCオーサリングツールを無料配布していたが、今はQuickTimeにおまかせ、ということのようだ。
ボーダフォンは「3GP準拠のMP4」
ボーダフォンは、以前は過去、Nancy形式を採用してきた。が、昨年から3GPについても採用するようになった。特にVGS(Vodafone Global Stand)というボーダフォンの国際ルールではNancyではなく3GPが扱われている。このVGSに則った機種では映像部分のコーデックとしてMPEG-4とH.263のいずれかを扱うことができる(普通はMPEG-4を使うだろうが……)。フレームレートは最大15FPS、ビットレートが最大64Kbpsとなっている。音声としてはAMRが使われる。基本的にはNTTドコモ向けの3GPも再生できるようになっている。
なお、着うたのサービスではMP3やAACを使った3GP/MP4が使われている。
MPEG-4系ケータイ動画フォーマットの種類 | ||||
キャリア名 | NTTドコモ | KDDI | ボーダフォン(VGS) | |
フォーマット | 3GP | 3G2 | AMC(オリジナル) | 3GP(ベースはMP4) |
ビデオコーデック | MPEG-4 | MPEG-4 | MPEG-4 | MPEG-4 |
H.263 | H.263 | H.263 | ||
オーディオコーデック | AAC | AAC | MP3 | AMR |
AMR | AMR | QCELP | ||
備考 | ・EZムービーLightは96×80ピクセルまで | ・現在は推奨していないが、着うたなどでは相変わらずメインのフォーマット | ・着うたではMP3、AACを扱ったMP4も採用、・Nancy、ASFなど、機種により他フォーマットもサポート |
というワケで、この3つのキャリアのケータイ動画はかなり「近い」仕様となったわけだ。特に最近のボーダフォン端末ではFOMA用の3GPムービーも読める。しかしながら、古い機種には「NancyはOKでも3GPは見られない」というものもある。だから、そう簡単にみんながハッピーになれる、というワケでもないのだ。
さらに、フレームレートやら画面サイズやらビットレートやらをどう設定すればよいか、という話については、「お持ちの端末に依存します」と答えるしかない。たとえば画像サイズとしては、128×96ピクセルを選んでおけばたいていの機種で再生できるが、176×144ピクセルがサポートされていない機種というものも、当然ある。こういった項目については、きちんとデバイス毎に調べるか、各キャリアの対応表とにらめっこしなければならない。
さらに、音声の大きさなども機種によって別々だから、「ちょうどいいボリューム」というものが存在しない。だからケータイ用のコンテンツプロバイダーは、機種毎にケータイ用のムービーをエンコードするという作業が必要になるし、だからこういうソフトも登場するのだ。
では、機種毎の設定は別として、パソコン上でケータイ向けにエンコードする際、「必ず効く」という項目はないだろうか?
一つあるとすれば、トリミングだ。320×240ピクセルや640×480ピクセルで再生した時に気にならなかった映像でも、ケータイ用にエンコードしてみるとガッカリすることが多い。見せたかったモノが豆粒ほどの大きさになってしまい、何が何だかわからなくなってしまうのだ。この際、背景の細かい部分は取っ払ってしまって、思いっきり「そのモノ」だけをエンコードしてしまおう。
例えばこの例を見てほしい。640×480ピクセルのムービーを元に、そのまま3GPに圧縮したもの「A」、320×240ピクセルにトリミングしてから全く同じ設定で圧縮したもの「B」である。
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