DaViDeo4 Proは日本向けの特別なバージョン〜開発元インタビューわかりたい人のための動画エンコード講座

» 2004年08月30日 12時13分 公開
[姉歯康,ITmedia]

 ホロンは9月にDaViDeo4 Proをリリースする。これは従来のDaViDeoの機能に加えて、DVDのWindows Media形式への変換、音声部分の音楽CDへの変換機能などを持ったソフトである。そのプロモーションのために来日した、開発元であるドイツのG DATA Softwareの担当者にDaViDeoについてのお話を聞いてみた。ご登場願ったのは、マネージング・ディレクター担当副社長のFridolin Rummel、セールスマネージャーのMichael Zimmer、開発を担当するパブリッシング・ディレクターのDirk Hochstrateの3氏である。

ドイツで第2位のウイルス対策ソフトベンダー

 日本ではDaViDeoが有名だが、実はG DATAはDaViDeoだけの会社ではない。むしろ、ビデオ関連ソフトウェアの開発に着手したのは最近の話で、元々はウイルス対策のソフトウェアなどを開発を手掛けてきた会社なのである。

Rummel氏 我々は、70人ほどのITカンパニーです。もともと、ウイルス対策のソフトウェアの開発・販売を行ってきた会社として、ドイツではポピュラーな存在でした。ポーランドに子会社を持っています。

Fridolin Rummel氏

 ドイツ国内ではシマンテックに次ぐ第二位のアンチ・ウイルス・ベンダーなのである。ウイルス対策ソフトAntiVirenKit(英語名AntiVirusKit)は1987年から存在する有名なソフトウェアなのだ。そのようなソフトを開発している会社が、なぜDVDリッピングのビジネスに着手したのだろうか?

Zimmer氏 私たちは、多くの人のためにスタンダードなツールをつくってきました。そして、ドイツ市場で写真、ビデオといったものが成功するようになりました。だからそこに参入しました。非常にロジカルな話だと思いませんか?

Hochstrate氏 ドイツでもたくさんの人がDVDのコピーに興味を持っていました。ところが、市場を見ると、すべてステップバイステップで、マニュアルで操作するツールばかり。我々は、お客さんがワンクリックソリューションをほしがっているだろうと考えたんです。それが2001年頃のお話です。

 現在、GDATAのソフトウェアは、ヨーロッパではドイツ、スイス、オーストリアなど、5カ国で販売されている。その他は日本と台湾であり、米国では販売されていない。

Zimmer氏 米国では当初、コピーライトの制限を考えて立ち上げないことにしました。ホロンさんのようなパートナーが米国にいないということもあります(笑)。

Dirk Hochstrate氏とMichael Zimmer氏

日本版だけに搭載されている

 では、彼等は日本というマーケットをどのように見ているのだろうか?

Hochstrate氏 我々はローカルプレイヤーですのでよくわからない部分もありますが、日本のほうが、より進んだユーザーが多いように思えますね。いつもホロンさんから「もっと機能を載せるように」と言われています(笑)。だからDaViDeoの日本語版は日本市場のための特別なバージョンになっているのです。

 実はDaViDeo4はすでにドイツでリリースされている。だが、4月にドイツに出たバージョンには、サウンドを拡張する機能はついていない。これは世界に先駆けて日本語版だけに搭載されている機能なのだ。さらに、エンジンなども高速化され、ポケットPCへの変換機能も追加されている。「まず日本でのリリースに新機能を搭載する」という海外ベンダーも珍しい(しかもバージョン名が変わっていないのだ……)。いかに彼等が日本を重視しているかということが見てとれるだろう。

 DaViDeoが持つユニークな機能に、彼等が策定した「Hyper Video CD」というフォーマットへの書き出しがある。Hyper Video CDとは、Video CDのフォーマットを用いていながら、ビットレートなどを可変にして、より圧縮率を高めたものである。厳密に言えばVideo CDではない。が、多くのVideo CDプレイヤーやDVDプレイヤーで再生できる、高画質なフォーマットである。何故このようなフォーマットを策定するに至ったのだろうか?

Hochstrate氏 インターネットでコピーフリークが参加しているフォーラムを見ていると、ユーザーがパラメーターをいじっている話題があったんです。これをシステマティックに操作できるソフトウェアがあったらいいのでは、と思ったというわけです。フリークだけでなく、みんなにとって便利なソフトウェアとしたかったんです。ユーザーの中では、DivXを使って高圧縮率でたくさんのムービーを一枚のCDに焼くユーザーに好まれているようですね。

 このHyper Video CDについて、ホロンのJAG山本氏は、「19インチ以内のディスプレイであればDVDと同等の画質と言ってもいいでしょう。私たちはディスプレイの大きさによって使い分けを進めています」と語っている。

マルチメディアが広がればDaViDeoも広がる

 最後に、今後の展開について聞いてみた。Mac版は今後も継続するのだろうか? そして、DaViDeoは今後、どのような方向に行くのだろうか?

Zimmer氏 もちろん、今後もMac版は継続します。Macのシェアは日本は7-8%と聞いていますが、ドイツでは4%程度です。マーケットは小さいのですが、だからソフトウェアもあまりない、競合もいないということも言えます(笑)。しかし、ニーズはあります。Macユーザーもリッピングソフトを欲しがっているのです。DaViDeoブランドは世界中で成功しています。今後、より改善していくことになります。DaViDeoはマルチメディア全体で広範囲利用できるソフトです。写真もカバーし、今ではPDAなどのモバイルもカバーしています。マルチメディアの市場が広がれば、それだけ対応していく分野がでてきますから、開発が止まるということはありません。

 ということは、今後は携帯を狙っているのだろうか?

Hochstrate氏 ドイツではムービー携帯というのはまだまだですね。日本は1、2年進んでいますから。個人的には、ウーム。携帯電話のムービーは複雑すぎて使いにくいと思うんですが……(笑)。

右が日本語版のDaViDeo4 Pro。左は欧州で売られているパッケージ

 ソフトウェア・ベンダーには様々なタイプのベンダーがある。こだわって一つのことしかしない頑固職人タイプのベンダーも少なくない。が、彼等はまったく違う。ユーザーの要求を受け入れながら、柔軟に対応していくタイプである。

 特に語ってはいなかったが、「ユーザーがハッピーになればそれでいい。当たり前でしょ?」というスタンスで開発しているということは、十分にわかった。だからこそ、日本向けに製品をカスタマイズするといったことも可能になるのだ。おそらく、今後のバージョンにおいても、ホロンとのコラボレーションの中で、「日本ならでは」の機能がどんどん付加されていくことになるのだろう。まずはDaViDeo4 Proを楽しみにしたいところだ。

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