今年の春に登場したNVIDIA、ATIの新世代GPU。GeForce 6シリーズ(開発コード名はNV4X世代)にRADEON Xシリーズ(開発コード名はR4XX世代)を搭載するグラフィックスカードの価格は、長いこと「高止まり」の状況が続いていたが、先日、GeForce 6600が発表され、店頭に搭載製品が店頭に並び始めたことで、グラフィクスカードのメインボリュームともいうべき2万5000円台でも新世代GPUが利用できるようになった。
ミドルレンジの新世代GPUで一歩リードした感のあるNVIDIAだが、ATIからもGeForce 6600対抗のGPUで開発コード名「R410」ことRADEON X700ファミリーが先日「急遽」発表されている。
今回は、入手できたATIのリファレンスカードを使ってRADEON X700 Proのパフォーマンスを定番の3D関連ベンチマークを使って測定してみるが、そのまえに、RADEON X700ファミリーのスペックについて紹介しておこう。
RADEON X700ファミリーというだけあって、ラインアップとして上位モデルの「RADEON X700 XT」、ミドルレンジの「RADEON X700 Pro」、バリューモデルの「RADEON X700」の3種類が用意されている。RADEON X700ファミリーに置けるコアクロックとメモリクロックは以下のようになる。
動作クロック | RADEON X700XT | RADEON X700Pro | RADEON X700 | GeForce6600 GT | GeForce6600 |
コアクロック | 475MHz | 420MHz | 400MHz | 500MHz | 300MHz |
メモリクロック | 502MHz | 432MHz | 350MHz | 500MHz | 250〜300MHz |
(DDRデータレート) | 1.05GHz | 864MHz | 700MHz | 1.0GHz | 500〜600MHz |
メモリバス幅 | 256ビット | 256ビット | 256ビット | 128ビット | 128ビット |
Pixcel Pipe | 8 | 8 | 8 | 8 | 8 |
ライバルと見られるGeForce 6600 GT/ノーマルのクロックと比較すると、メモリクロックは同等かやや早めなのに対して、コアクロックは若干低めに抑えられている(エントリークラスを比較するとRADEON X700ファミリーのほうが高い)。
GPU内部の構成は上位モデルのRADEON X800ファミリー相当と言われているが、ミドルレンジということでPixelパイプラインはRADEON X800XTの16本から8本へ減らされている。また、プロセスルールはRADEON X300と同じ0.11マイクロプロセスを採用。
ハードウェア的にスペックダウンしているRADEON X700だが、そのPixelパイプラインの本数を別にすると、Hyper Z HDやSMOOTHVISION HDなどのビデオ出力の品質に関わる機能や、3Dcと呼ばれるパフォーマンスを落とさずに細密な3D描画を行う機能などはRADEON X800ファミリーと同等。
GeForce 6シリーズのように、サポートする機能は上位機種と同じように、パイプラインの削減と低く抑えた動作クロックでハイエンド、ミドルレンジの差別化を図っていることになる。GDDR3に対応し256MバイトまでのビデオメモリをサポートするあたりもGeForce 6シリーズと同様だ。ただし、メモリインタフェースは256ビット幅が確保されており、GeForce 6600GTに対して優位にたっている。
では、早速新世代ミドルレンジGPUのパフォーマンスを比較してみることにしよう。行うテストはITmediaグラフィックスカードベンチマークではおなじみの3DMark03にAquamark3。市販ゲームベンチとしてTOMBRAIDER angel of darklessとDOOM3を用意した。
軽負荷時から重負荷時に移行したときにどれだけパフォーマンスが低下するかを見るために、いずれのテストでも解像度(1024×768ドットと1600×1200ドット)とフィルタリング設定(アンチエイリアスと異方性フィルタリングを無効、もしくは4サンプル、異方性フィルタリングは8サンプル)に切り替えてテストを行っている。
なお、ATIはRADEON X700ファミリーについて“Build for more than just Doom III”と銘打って、わざわざDOOM 3との親和性をアピールしているが、これは、ドライバをDOOM 3にチューニングしたことを意味していると思われる。
もともと今回試用したX700のリファレンスカードにはCatalyst 4.9(ATIがDOOM 3向けチューニングを行ったとされるCatalystの公式バージョン)をベースにRADEON X700対応の改良が施されたベータ版ドライバが添付されていた。
しかし、このドライバを適用した状態で、なぜか動作が安定せず(ATIの広報からは“ドライバには問題はない。そちらのテスト環境に原因があるのでしょう”という回答をもらったが、筆者の知る限り、ほとんどのテスターの環境で似たような状況とのこと)、3DMark03、Aquamark3のみならず市販ゲームのTOMBRAIDER angel of darknessなどが動作せず。DOOM 3もtimedemoが動作するもののメニュー画面などの表示が異様にぼやけてしまうなど、まだまだ完成度が低いように思われた。
先日、ATIのWebサイトにアップされたCatalyst 4.10を試したところ、Aquamark3は依然として正常に終了しない(とはいえ、Aquamark3の描画処理自体は正しく動作している。どうも結果ログの出力処理の手前で不具合が起きているようだ)は、3DMark03やTOMBRAIDER AoDは正常に動作。DOOM 3もメニュー画面の表示や、これまでのCatalystでできなかった高解像度表示の各種設定が有効になっている(以前は高解像度で設定を行っても再起動すると低解像度設定へ強制的に戻されていた)。
「これなら、もういいでしょう」ということで、リファレンスカードの入手からだいぶ時間が経ってしまったが、ベンチマークでパフォーマンスを測定し、ライバル「GeForce 6600 GT」とその実力を比較してみることにした。
ATI側が中位モデルの「RADEON X700Pro」であるのにNVIDIA側が上位モデルとは不公平ではないか、とユーザーから突っ込まれそうだが、ノーマルGeForce 6600となると動作クロックが一気に低くなってしまうため、やはりここはGeForce 6600 GTと比較するのが妥当と思われる。
GeForce 6600 GTのほかには、価格的に競合しそうなGeForce PCX 5900搭載カードも取り上げた。GPUコア自体は2003年世代であるが、それでも当時のハイエンドGPU。動作クロックやパイプラインの数などは最新ミドルレンジに匹敵する。価格がこなれているだけあって、店頭では購入候補の一つとして迷うかもしれないので、ここでデータを並べることにした。
動作クロック | RADEON X700Pro | GeForce6600 GT | GeForce PCX 5900 |
コアクロック | 420MHz | 500MHz | 350MHz |
メモリクロック | 432MHz | 500MHz | 275MHz |
(DDRデータレート) | 864MHz | 1.0GHz | 550MHz |
メモリバス幅 | 256ビット | 128ビット | 256ビット |
Pixcel Pipe | 8 | 8 | 8 |
テストマシンのパーツ構成は以下のとおり、一連のベンチマークで取り上げたグラフィックスカードとデータを比較できるように使用パーツは共通にしてある。
ベンチマークシステム環境 | |
CPU | Pentium 4/540(3.2GHz) |
マザーボード | Aopen i915Gm-I |
メモリ | PC3200/512MB×2ch |
HDD | ST3160023AS |
OS | Windows XP Professional +SP1 |
グラフィックスカードのドライバは、前述のとおりRADEON X700 ProにはATIのWebサイトに上がっている最新のCatalyst 4.10を適用。対するGeForce陣営は、先日レビューで紹介したGeForce 6200のリファレンスカード添付のForceWare 66.81を適用した(旧機種のGeForce PCX5900でも正常に認識されている)。
なお、3DMark05では、VertexShader、PixelShaderともにモデルのバージョンを指定できる。今回、主役のRADEON X700 Proでサポートするバージョンがそれぞれ2.0と2.0bであることから、GeForce 6600 GTでも適用するバージョンをあわせて測定している。ちなみに、GeForce PCX 5900がサポートするのは、それぞれ2.0に2.0aとなるが、これはそのままそのバージョンで測定したデータを記載した。
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