FAXからスキャナ、無線LANまで使える多機能な複合機――HP Photosmart 2710 All-in-One(3/4 ページ)

» 2004年11月04日 08時00分 公開
[林利明(リアクション),ITmedia]

写真印刷は4色より6色が断然キレイ

 では、2710の画質評価に移ろう。画質の評価には、付属ソフトの「HP ImageZone」のフォト印刷機能で出力したものを使い、ドライバの自動補正機能「HP Degital Photography」はすべてオフにしている。この機能には、デジタルフラッシュやスムージング、鮮明度などのパラメータがあるのだが、効果が強すぎるように感じる。通常はすべてオフで印刷したほうがよい。

 言うまでもないが、写真印刷はフォトインクカートリッジを用いた6色モードで行いたい。発色のバランスがいいので4色でもそこそこの画質とはいえ、粒状感が目立つレベルだ。6色になると、発色に深みが加わり、緻密さと階調性が格段に高まる。

 全体的な傾向を見ると、コントラストとシャープネス、インク濃度が高めで、かなり硬質な印象を受けた。赤系の表現が少し苦手なようで、高彩度の赤が色飽和しやすく、濁ったような色味になってしまう画像も見られた。人肌もどことなく冷めた雰囲気なので、ドライバのチューニングを見直してほしいところだ。

4色、最大解像度
6色、最大解像度
最大解像度の出力だが、少々のザラつきが視認できる。記憶色系の色合いで、コントラストとシャープネス、インク濃度が高いので派手に見える
4色、最大解像度
6色、最大解像度
「赤」が苦手な一例。サルビアの赤で彩度が高すぎ、色飽和を起こすとともに色相も狂っている
  • 印刷サンプル3(白黒/グレーインク)&
  • 印刷サンプル4(白黒/6色インク)
6色、高画質、ドライバ「グレースケール」で印刷
グレーインク、高画質、ドライバ「グレースケール」で印刷
6色インクのモノクロ印刷と、グレーインクのモノクロ印刷を比較。グレーインクは完全にニュートラルグレーで表現しており、モノクロ写真としての雰囲気、クオリティとも申し分ない。6色インクのほうはマゼンタが強くかぶり、カラーっぽさが漂う

 ところが、ドライバと同時にインストールされるメディアプロファイル(Photoshopなどから利用する、用紙に応じたICCプロファイル)を適用して、PhotoshopやPhotoshop Elementsから印刷すると、素材画像の色再現性が大幅に向上した。これらのアプリケーションを使っているなら、メディアプロファイルを使って印刷することをおすすめしたい。

 また、2710のドライバはAdobeRGBモードを持っている。ドライバの設定だけで、AdobeRGBカラースペースの画像を、AdobeRGBのプリントカラースペースで印刷可能だ(セイコーエプソンの新型ドライバと同じ)。ドライバのAdobeRGBモードで出力したものと、Photoshop CS側でAdobeRGBカラーマネジメント出力したものを比較すると、前者のほうがややハイコントラストで明るめに印刷される。ドライバのAdobeRGBモードは、AdobeRGBカラースペースの中で若干の補正をかけて印刷しているのだろう。

ドライバのAdobeRGBモードで出力したAdobeRGBカラースペースの画像。コントラストが高めだが、赤の色調が正しくなり、素材画像の色に近い
Photoshop CSでメディアプロファイルを適用して出力したもの。ドライバのAdobeRGBモード出力よりコントラストとシャープネスが低くなり、より自然な画質となった。発色も素材画像にかなり忠実

 次にスキャン画質だが、原稿色の再現性はほぼ正確で、明るさやコントラスト、彩度のバランスもよい。非常に残念なのは、画像によっては暗部で激しくトーンジャンプを起こし、諧調が破綻してしまう場合があったことだ。明確な法則性は見いだせなかったが、TWAINドライバでレベル補正(ヒストグラム)を行うと改善できることもある。

全体的な発色は原稿に近い。シャープネスもほどよく、不自然なノイズも見られない。お盆に落ちる茶碗の影に注目すると、シャドウ寄りの諧調が完全に欠落している

とにかく多機能を望む人に

 コピー機能やダイレクトプリント機能などに若干の不満はあるものの、総じて完成度は高い。ただ、機能をフルに使いこなすには、ある程度の習熟が要求される。初心者にとっては、設定などでハードルが高い部分があるのも否定できない。有線/無線LANインタフェースやグレーインクによる高品質なモノクロ印刷に魅力を感じるなら、それなりに高価だが購入する価値はあるだろう。

 なお、2710の1つ下位となる「HP Photosmart 2610 All-in-One」も検討したい。2710と比較して、無線LANがない(有線LANはある)、液晶モニタが2.5インチ、自動両面印刷対応はがきトレイがオプション、という3点を除けば、2710と同じスペックと機能を持つ。

  • カラー印刷時間
印刷時間は、紙送り開始から排紙(トレイに落ちる)までを計測。専用フォト用紙のL判フチなし印刷や、はがきのフチなし印刷は、従来モデルより確実に速くなった。4色より6色が遅いのは当然だが、その差は思ったより少ない。プリンタ全体で見れば遅い部類だが、この程度なら我慢できる。最高画質設定の「最大dpi」と、準最高画質設定の「高画質」の画質差は、少なくとも目視では分からない。A4普通紙の文書印刷やWeb印刷は、相変わらず高速だ
  • モノクロ印刷時間
グレーインクを使ったモノクロ印刷の時間。モノクロ写真はA4で出力する人が多いので、A4の印刷時間も計測した。さすがに速いとはいえないが、あせって出力するようなものでもないので、それほど気にならないだろう。L判フチなしは、4色カラーとほとんど同じだ
  • スキャン時間
全面プレビューは、画像が表示されてCCDが戻り終わるまでのタイム。USB2.0 Full-Speedのわりには、全体的にかなり高速だ
  • コピー時間
コピー原稿は、日本HPの「プリンタ総合カタログ 2004 fall/winter」の5ページ目(HP Photosmart 2710 All-in-Oneのオーバービュー)。速度と画質のバランスは、デフォルト設定の「きれい」がもっともよい。「高画質」にしても見た目の画質は変わらず、「はやい」にするとインク濃度の低さが一見してわかる

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