では、2710の画質評価に移ろう。画質の評価には、付属ソフトの「HP ImageZone」のフォト印刷機能で出力したものを使い、ドライバの自動補正機能「HP Degital Photography」はすべてオフにしている。この機能には、デジタルフラッシュやスムージング、鮮明度などのパラメータがあるのだが、効果が強すぎるように感じる。通常はすべてオフで印刷したほうがよい。
言うまでもないが、写真印刷はフォトインクカートリッジを用いた6色モードで行いたい。発色のバランスがいいので4色でもそこそこの画質とはいえ、粒状感が目立つレベルだ。6色になると、発色に深みが加わり、緻密さと階調性が格段に高まる。
全体的な傾向を見ると、コントラストとシャープネス、インク濃度が高めで、かなり硬質な印象を受けた。赤系の表現が少し苦手なようで、高彩度の赤が色飽和しやすく、濁ったような色味になってしまう画像も見られた。人肌もどことなく冷めた雰囲気なので、ドライバのチューニングを見直してほしいところだ。
ところが、ドライバと同時にインストールされるメディアプロファイル(Photoshopなどから利用する、用紙に応じたICCプロファイル)を適用して、PhotoshopやPhotoshop Elementsから印刷すると、素材画像の色再現性が大幅に向上した。これらのアプリケーションを使っているなら、メディアプロファイルを使って印刷することをおすすめしたい。
また、2710のドライバはAdobeRGBモードを持っている。ドライバの設定だけで、AdobeRGBカラースペースの画像を、AdobeRGBのプリントカラースペースで印刷可能だ(セイコーエプソンの新型ドライバと同じ)。ドライバのAdobeRGBモードで出力したものと、Photoshop CS側でAdobeRGBカラーマネジメント出力したものを比較すると、前者のほうがややハイコントラストで明るめに印刷される。ドライバのAdobeRGBモードは、AdobeRGBカラースペースの中で若干の補正をかけて印刷しているのだろう。
次にスキャン画質だが、原稿色の再現性はほぼ正確で、明るさやコントラスト、彩度のバランスもよい。非常に残念なのは、画像によっては暗部で激しくトーンジャンプを起こし、諧調が破綻してしまう場合があったことだ。明確な法則性は見いだせなかったが、TWAINドライバでレベル補正(ヒストグラム)を行うと改善できることもある。
コピー機能やダイレクトプリント機能などに若干の不満はあるものの、総じて完成度は高い。ただ、機能をフルに使いこなすには、ある程度の習熟が要求される。初心者にとっては、設定などでハードルが高い部分があるのも否定できない。有線/無線LANインタフェースやグレーインクによる高品質なモノクロ印刷に魅力を感じるなら、それなりに高価だが購入する価値はあるだろう。
なお、2710の1つ下位となる「HP Photosmart 2610 All-in-One」も検討したい。2710と比較して、無線LANがない(有線LANはある)、液晶モニタが2.5インチ、自動両面印刷対応はがきトレイがオプション、という3点を除けば、2710と同じスペックと機能を持つ。
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