“写真を評価する”ためのプリンタ──諏訪光二が語るPIXUS iP9910の実力キヤノン「PIXUS iP9910」のすべて(2/2 ページ)

» 2005年03月15日 00時00分 公開
[ITmedia]
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自分の写真を突き詰めていくには大判プリントがベスト

ITmedia キヤノンのデジタル一眼レフカメラ対応のRAW現像ソフト「Digital Photo Professional」(以下、DPP)と、PIXUS同梱の簡単印刷ソフト「Easy-PhotoPrint」(以下、EPP)によるRAWデータのダイレクトプリント機能は、プロの目にはどう映りましたか?

諏訪 DPPとEPPを組み合わせると、TIFFやJPEGといったデータに変換することなく、RAWデータをダイレクトにプリントすることが可能になります。操作も簡単ですので、RAWデータで撮影しているユーザーにとっては見逃せません。

 しかも、途中にほかのアプリケーションソフトを介在させず、RAWデータをDPPからEPPに直接手渡せるため、煩雑なカラーマネジメントの設定を行う必要もありません。だから、これまでカラーマネジメントの設定が面倒だったAdobeRGBの画像でも、簡単な設定を行うだけで、カメラが捉えた広い色空間を忠実にプリントすることができます。

入力から出力まで同じ色域のまま忠実に再現できる、100%実用的なシステムと言えるでしょう。同一メーカーが入力(デジタル一眼レフ)と出力(プリンタ)の両方のデバイスを作る強みが出ていますね。

キヤノン製のデジタル一眼レフカメラに付属するRAW現像ソフト「Digital Photo Professional」。PIXUS iP9910に付属する簡単印刷ソフト「Easy-PhotoPrint」と組み合わせれば、RAWデータをJPEGやTIFFに変換することなくダイレクトにプリントできる。
「色調整」のプルダウンメニューから「忠実設定」を選べば、実際の被写体に忠実な色再現が行われるので、とりあえず色の調子を見たい場合にはこれを選ぶとよい。もちろんRAW現像ソフトとしての機能も充実しているので、露出補正やホワイトバランスなどを、プレビュー画面を見ながら細かく設定していくことも可能だ

DPPで調整したRAWデータを、ほかのファイル形式に変換せずダイレクトにEPPに送る。ほかのソフトが間に介在しないため、AdobeRGBで撮影した画像データも、面倒なカラーマネージメント設定を行なうことなく簡単に扱うことができる。カメラが捉えた広い色空間を、忠実かつ手軽にプリントできるというメリットは大きい。
なおEPPでは、フチありやフチなしの選択のほか、インデックスプリントも行えるなど、さまざまなレイアウト印刷が可能だ

ITmedia 話は少し変わりますが、現在インクジェットプリンタは、染料インクを使ったものと顔料インクを使ったものの2タイプが主流です。一般のユーザーに対して、諏訪さんはどちらのタイプのプリンタをお勧めしますか?

諏訪 顔料と染料にそれぞれ長所・短所があるのが現状ですね。巷でもよく言われていますが、やはり顔料インクは保存性に勝り、逆に染料インクは発色の点で有利です。とは言うものの、観賞用の写真をプリントしようと考えているなら、染料インクのプリンタで出力しても良いのではないでしょうか。プリントした写真を額縁などに入れて保存しておけば、染料インクでもほとんど色褪せることがないからです。特にiP9910で新たに採用された新型インク*2であれば、かなりの長期間にわたって鑑賞し続けることができます。

 ただ、これは染料インク、顔料インクともに言えることなのですが、プリント直後に額縁に入れたり、紙を何枚も重ねて放置したりすると、インクの定着が悪くなるので気をつけてください。プリント後は湿度の低い部屋で1日ほど紙を乾燥させ、インクがしっかりと定着させる必要があります。

*2 PIXUS iP9910が採用する新型インク(「BCI-7」シリーズ)と5種類の純正写真用紙(プロフェッショナルフォトペーパー/スーパーフォトペーパー/スーパーフォトペーパー・シルキー/エコノミーフォトペーパー/キヤノン光沢紙)を組み合わせることによって、アルバム保存100年、さらにプロフェッショナルフォトペーパーにおいては、フォトフレーム保存30年、室内保存10年を可能とする(各耐久年数はキヤノン測定条件によるもので、実際の保存・展示状況によっては異なる場合があります)

ITmedia 現状では、インクジェットプリンタはA4が主流ですが、いわゆる大判プリントの魅力とは何ですか?

諏訪 当然ながら、写真を大きくプリントできるという点ですね。大きくプリントできれば、それだけ写真に迫力が出て楽しさが増します。また、写真を大きく引き伸ばすと、その写真のアラも大きく見えてきますから、写真を学ぶのにも適していると思います。A3ノビで大きくプリントして、自分の写真を突き詰めていく。そのような試行錯誤ができるという点で、A3プリンタはアマチュアのカメラマンにとっても十分に役立つツールと言えるでしょう。

 A3ノビで質の高いプリントをするには、できれば800万画素以上の画像データがほしいところですが、600万画素クラスのデジタル一眼レフでも十分な解像力が得られます。デジタル一眼レフを使っているのならば、ぜひiP9910を使ってA3ノビプリントの楽しさを知ってほしいですね。

諏訪光二 Kohji Suwa



1968年、東京都生まれ。日本大学芸術学部写真学科を中退後、フリーの写真家に。各種雑誌での作品発表、写真教室講師などを行う。主に自然写真をモチーフとし、銀塩・デジタル双方の作品を発表。作品展、著書多数。また、作家のオリジナルプリントを販売する「写流プロジェクト」を設立。



諏訪光二オフィシャルサイト「Kohji Suwa PhotoART Gallery」


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