ある国ある地域の売れ筋商品を知るのにいい目安となるのが、その国のPCメーカーがそろえているラインアップだ。PCメーカーの名前さえ知っていれば、読者の皆さんもメーカーのWebサイトにアクセスすれば、中国に限らず、諸外国それぞれの「PC業界の動向」が見えてくるだろう。
IBMのPC部門を買収したLenovoについては、この一連の連載記事で紹介してきたが、いくら中国の業界No.1とはいえ、それだけで「中国のPC業界を知りました」というには数が少ない。では、中国にはPCメーカーがどれほど存在するのか。実際の売れ筋傾向を知る前に中国のPCメーカーを簡単に紹介しよう。
ガートナーは2004年第三四半期における中国のPCメーカー市場占有率について次のようなレポートを出している。
中国2004年第三四半期PCメーカー市場占有率(出典:ガートナー) | |||
3Q2004 | 3Q2003 | 年間成長率 | |
Lenovo(聯想) | 26.4% | 20.7% | 36.4% |
Founder(方正) | 10.3% | 6.1% | 82.0% |
清華同方 | 8.7% | 5.2% | 79.7% |
デル | 8.1% | 6.9% | 25.0% |
IBM | 6.0% | 4.5% | 40.9% |
HP | 5.2% | 4.3% | 30.4% |
その他 | 35.3% | 52.3% | -27.8% |
合計 | 100.0% | 100.0% | 6.9% |
これによるとLenovo(聯想)がトップだが、デル・HP・IBMといった米PCメーカーの上位に、Founder(方正)、清華同方という中国メーカーが存在する。この2社はLenovo同様、中国全土に小売店を持ち、PCをメインに、プリンター、デジカメ、mp3プレーヤー、USBメモリなどの周辺機器を販売する。
電脳街では中国PCメーカー3社の店舗数に差はないが、地方に行くとLenovoの店舗のみ、という街が多い。そのため、ユーザーからすれば、Founderと清華同方は(品質はおいといて)Lenovoに続くメーカーというイメージになる。
さらに、この上位3メーカーに続く中国PCメーカーも存在する。家電がメインで世界的に有名な「Haier」、同じく家電がメイン事業の「TCL」や「Amoi」、IBMのサーバ部門を中国で扱う「長城」(Greatwall)、昨年Lenovoに挑発的な価格競争に挑んだ「神舟電脳」「新藍科技」などで、上記に挙げたメーカーのPCは中国全土で売られている。
なお、このほかにもメーカーがあるにはあるが、これらは小規模で中国の一地区だけで販売している場合が多い。これらのメーカーは単に格安PCに特化しており、ラインアップも幅広くないためここでは割愛する。
中国のPCメーカーを把握したところで、それら中国製PC本体に搭載されるパーツベンダーの勢力傾向をみていきたい。
まずはCPUの話。日本にいると、VIAやAMDが「発展途上国でもPCが普及するような安価なCPUを提供する」とアナウンスしているのを聞く機会が多い。中国でもVIAやAMDの廉価版CPUを大量に採用しているイメージがあるが、実際のところどうなのだろう?
まず、安価なCPUとして思いつくのがVIAのC3だが、中国製PCにはほとんど採用されていない。調べてみるとLenovoなど一部のメーカーにおいて、激安ノートPC用や薄型軽量PCでC3搭載PCが用意されているにすぎない。しかし、低所得層が多い中国の市場においても、我々がイメージしているほどに多くのシェアを占めているわけではないのだ。
過去を振り返ってもP6コアのCeleronがインテルのラインアップに何とか残っている段階でも、Founder(方正)や神舟がノートPCを中心に(一部のデスクトップにも)C3を採用していただけ。
ちなみにLenovoの個人向けラインアップにC3搭載PCは存在しない(企業向けの薄型軽量PC「網鋭」シリーズでC3が搭載されているが)。中国のリーディングカンパニーであるLenovoでは「戦略的低価格PC」にAMDのSempronを採用している。しかも、これまた意外なことに中国のPCメーカーでLenovoだけがこのAMD製CPUを採用しているのだ。
加えて言うと、Athlon 64を搭載したPCも中国ではLenovoだけが販売している。Lenovoのラインアップにおけるインテル製CPU採用率は約半数程度となっているが、ほかのメーカーでは総じてPentium 4とCeleronが半々、といったインテル中心のラインアップとなっている。
中国PC市場における「CPU勢力図」の結論は、意外にもインテルの圧勝、といえるだろう。しかしPC1台の価値というのが日本人と中国人であんなにも違って、それでもC3やSempronを搭載したPCが売れないとは妙な話だ。これには中国人(に限った話でもないのだが)の消費者心理が影響しているのだ。
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