対してグラフィックスカードは、GPU、とくにGeFroce 7800 GTXのマージンの幅が十分あるためか、今回のテストでもCommanderでも問題なく各種ベンチをこなすことができた。ただし、それだけで「定格11%」、例えばコアクロックなら430MHz×1.11=約477MHz相当のパフォーマンスか、というとそうならない可能性がある。先ほども説明したとおり「負荷にあわせて速さも変わる」D.O.Tだけに、重負荷状態なら速くとも、軽負荷状態ではひょっとして定格動作になっているかもしれない。
今回は、NX7800 GTXをD.O.T expressの「Commander」設定で動作させたときのパフォーマンスを「定格動作のGeForce 7800 GTX」「オーバークロックBIOSを適用したGV-NX78X256V-B」と比較してみる。
ベンチマークシステム環境 | |
CPU | Athlon 64 FX-57 |
マザーボード | MSI K8N Diamond |
メモリ | PC3200/512MB×2ch |
HDD | ST3160023AS |
OS | Windows XP Professional +SP2 |
ForceWare | 77.77 |
マザーボードで使われるD.O.Tはクロックや電圧を動的に設定してくれるが、グラフィックスカード用のD.O.T expressはクロックのみが変化する。MSIの説明によると、クロックはインテルのSpeedStepのように「階段状」に変化する。すでに説明しているように、D.O.T expressには6段階のプリセット設定が用意されているが、「階段状」に変化するクロックステップは、その用意されているそれぞれの設定に相当する。
例えば、ユーザーが「Commander」を選択した場合、クロックは定格から「Private」(定格1%増)、「Sergeant」(同3%)、「Captain」(同5%)、「Colonel」(同7%)、「General」(同9%)、「Commander」(同11%)の6ステップの間で推移し、ユーザーが「Private」を選択すれば定格とPrivateの2ステップでのみ変化する。
「何を持って負荷と為すか」について、現在のところ明確な情報がMSIから提供されていない。ただ、ベンチマークのグラフを見る限り、NV7800 GTXの結果は常時オーバークロック状態で動いているGV-NX78X256V-Bに対して、重負荷でも軽負荷でも劣ることはない。NX7800 GTXの結果だけに注目してもフィルタの有無やサンプル数の違いによって極端にパフォーマンスが落ちることはない。
グラフを掲載しなかったがAquamark3やDOOM 3、Farcry、Half-Life 2の結果もNV7800 GTXとGV-NX78X256V-Bは変わらない。描画処理をガリガリ行う3Dゲームを動かしている限り、D.O.T expressは常に最高速の状態にクロックを設定するものと考えていいようだ。
D.O.T expressが動的に(勝手に)クロックを変えてしまう(下げてしまう)、といってゲームのパフォーマンスに悪影響を与えないことは今回のテストで分かった。しかし、そうなると今度は「ならば、D.O.T expressを導入する意味は?」という疑問が出てくる。常に最高クロックで動いているなら、ほかのオーバークロック版グラフィックスカードと同じであるし、2D描画処理においては汎用のForceWareもクロックを下げる。
「どのような状況でD.O.T expresはクロックをどのくらいに設定してくれるのか」についてユーザーにも分かりやすく説明されると、このMSIのユニークなアプローチはもっと多くのユーザーに理解され、そして支持されるのではないだろうか。
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