地球博に行ったなら三宅島にも行きなされWeekly Access Top10

» 2005年09月27日 21時12分 公開
[長浜和也,ITmedia]

 昨年同時期にとった夏休みにこんなことをしていた私ですが、今年は「純粋に」休日を三宅島で過ごすことにいたしました。

 島の南にある坪田と西に位置する阿古をベースに三宅島を見て回ったのですが、それぞれの地区では、多くの商店やスーパーが営業を始めていて、店内には多くの買い物客が訪れています。観光客の目には、ほかの伊豆諸島と何ら変わらない、平穏な島の生活が三宅島でも営まれているように映ります。

 三宅島をぐるっと手っ取り早く、かつ安価に観光するなら「島内循環都営バス」を使うのがいいでしょう。島の周回道路に沿って右回りと左回りにそれぞれ1日5便と、本数は少ないものの、いったん降りて次のバスがするまでの3時間半、じっくり見て歩くことができます。運賃は島を一周しても1000円かかりません(二日間有効のフリーパスも1200円で購入できます)。

 島の西に位置する「錆ヶ浜港入り口」から第1便バスが発車するのが8時1分。ちょうど登校時間と重なって、白シャツにちょっとダブつき気味のズボンをはいた男子高校生や、うほっ、短いっすね!というスカートをはいた女子高生でバスは満席になります。緑色の都営バスが高校生で埋まっている風景は東京の朝とさほど変わりません。

 三宅島の南には世界でも珍しい、海岸に隣接した淡水の沼「大路池」があります。近くには「アカコッコ館」があって、三宅島の野外観察の中心とも言える地区です。今回の火山活動でも大路池はそれほどダメージを受けなかったようです。簡易水道の水源であるこの池と浄水施設が健在だったことは島内生活の正常化にとって大変重要な意味をもっていたそうです。

 大路池から農林合同庁舎を抜け、三池高校前から再び左回り循環のバスに乗ります。バスは坪田集落を抜けて島の東にある三池集落に向かいます。坪田集落も商店は営業しており、家々は窓を大きく開け放ち、中には人影がそこここに見られます。

 坪田集落を抜け島の東南から東に向かう途中、バスは上り坂に差し掛かり、ほどなく坂のピークに到達して下り始めます。バスが緩やかに左へカーブし始めると道の右手の視界がいきなり開けてきます。そこは高濃度地域に指定されて立ち入りが禁止されている三池集落が一望に見渡せる場所でした。

 火山ガスによって生成する強い酸性雨によって、トタン屋根に穴があき、そこから入り込んだ雨水が天井や壁や床を腐らせてしまったために、今では柱しか残っていない家々が並んでいます。立ち枯れした白い木々と乱立する柱が遠めに「白骨化した巨大な生き物」のように見えてきます。バスは集落の中を駆け抜けていきます。報道で紹介されて有名になった「もう頑張れない。三宅島」の手書きメッセージが道路の右手にある塀に見えるのもここ三池集落です。

 この夏、豊かな森を潰して出来上がった期間限定「テーマパーク」に多くの日本人が足を運びました。人間の手で環境を制御することをテーマにしたイベントだったようですが、もし、ここで自然保護を意識するようになった人がいたならば、ぜひ、三宅島にも足を運んでみてください。ここでは「もし環境汚染(とくに大気汚染)が極度に進行したらどうなるのか」の結果を我々は実際に見ることができるのです。それと同時に、人間で制御することができない自然と、それでもそこで生きていきたい人間の執念にも触れることになるでしょう。

 なお、この手の文につきものの「写真」は一切載せませんでした。

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