Carriers at Warはキャンペーンモードを持たないので、次の海戦で「ヨークタウンが出てきて南雲はビックリ」という状況に陥らないのが残念であるが、その代わり、Carriers at Warは当時としては珍しい「自作シナリオツール」を用意していた。
このツールは初代のApple版では標準実装されていて、「マリアナ海戦の連合艦隊に熟練パイロットが操る烈風と流星を満載した信濃と大鳳を登場させる」という紹介記事に心躍らせていた私は、DOS版では別売りになったことを“購入してから”知っておおいに落胆したのを今でもよく覚えている(後日、CONSTRUCTION KITとして登場した)。
この自作シナリオツールのおかげで、世界中の海戦ゲーマーがCarriers at Warのためにシナリオを作成した。空母戦ゲームとして認識されるこのゲームだが、基地航空隊の運用や水上戦闘のサポートなどによって、総合的な海軍作戦全般を再現できる。
そのため、空母戦が発生しなかった欧州海域におけるシナリオも多数発表されている。これらのユーザーシナリオを編集してアップデートされたプログラム本体と一緒に収録したパッケージが後日出荷され、最終的にそれらすべてを1つにまとめた「THE COMPLETE CARRIERS AT WAR」が登場している。
Carriers at War、そしてCARRIER STRIKEの登場によって「やるべきことはすべてやった」と思ったのか、以降、米国において空母戦を扱ったPCウォーゲームは登場していない。とはいえ、Carriers at WarもCARRIER STRIKEも万全ではない。例えばボードウォーゲームの「FLAT TOP」と比べて「艦隊編成が自由にできない」「潜水艦の運用ができない」という面が挙げられるかもしれない。
しかし、PCを相手にしなければならないCarriers at Warでは、これらの実現はゲームバランスを取る上で難しいだろうし、これらの事象がないことはゲーマーの立場が「空母部隊指揮官」であるゲームにとってそれほど致命的な欠陥でない。
空母戦ゲームとしてそれよりも重要なのは「空母がそこにいるかいないか」といった状況が再現できないことにある。このあたりの状況になると、必ず戦闘が起こることが前提となる作戦級のゲームでは無理で、より高いレベルで「戦争指導」が求められる「戦略級」ゲームでないと発生しない。
ということで、次回は太平洋戦争の戦略級ウォーゲーム「Pacific War」を取り上げてみたい。
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