試作機もある程度形になり、実際に動かしてプレゼンすると「これはいける」。疑問符ではなく確信できるほどになった。発表の場はWPC EXPO 2005とすることも決定した。
そこまでが約2年。形にする前までが1年半ほど、試作機ができるまで2、3カ月となる。いまでこそさらっと話すが、この2年間はアンダーグランドな活動であった。
「秘密基地をつくろう!」シリーズは、中国を拠点に製造される。ここにはもちろんコミュニケーションの問題含め、いろいろな問題があった。オーダーと違うものが上がってきてしまうこともあり、「もう一度つくり直してください」としているとWPC出展に間に合わない。ある程度ソフト側で吸収し、できない機能は使わないようにするなど、うまく制御できるよう工夫も必要だった。さらには向こうから送られてくる試作機も送付中に行方不明になったりもした。
「当局の検閲を受けました。すでに(笑)」
試作機送付時の送付状内容欄には普通「Sample」などと無難に記載するが、中国の製造メーカー側がそのままプロジェクト名の秘密基地を表す「Secret Base」と記載してしまった。1〜2日で届いてもよいものなのに、1週間も経っても来ない。日本行き全ての荷物が何らかの理由で止められた時期と重なったのか、「Secret Base」が引っかかったのかは定かではない。
「こんな意味深な内容の送付物なら仕方ないですかね。この文字だけで税関職員をも“ぐっ”とさせてしまったことになったのでしょうか。冗談ですが(笑)」(レッドちゃん)
「正直、めちゃめちゃ難しいことをやってしまったな」と池澤は言う。玩具メーカーとして「遊びとしておもしろくできるのか」という部分は非常に重要で、それを理解してもらうように創造していくのは困難だった。しかしその土壌は整った。あとはユーザーに楽しんでもらうだけである。
妄想……いいではないか。ひとりよがり……いいではないか。大人のくせに……いいではないか。こんなムダ使いして……いいではないか。それは「秘密基地をつくろう!」シリーズのキャッチコピーにすべて集約されている。
「司令官は、あなたです」
7月22日、司令官気分に浸り、白い目で見られている自分が思い浮かぶ。
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