最大600Mbpsの次世代無線LAN、家電への搭載は「早くても2007年前半」

» 2006年03月27日 20時38分 公開
[渡邊宏,ITmedia]
photo アセロス・コミュニケーションズ代表取締役 大澤智喜氏

 アセロス・コミュニケーションズは3月27日、次世代無線LAN規格「IEEE802.11n」についての説明会を開催。同社代表取締役の大澤智喜氏が2007年春には正式規格として批准が見込まれている、同規格の詳細について説明した。

 現在、無線LANとしては5GHz帯を用いる802.11aと2.4GHz帯を用いる802.11b/gが利用されているが、速度は802.11a/gの54Mbpsが上限。802.11nは100Mbps以上の速度実現を目指して物理層/Mac副層の双方について改良が加えられており、2006年1月にIEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers:電気電子学会)でドラフトが採択され、2007年4月には正式な規格として批准される見込みだ。

 物理層については最高600Mbpsまでの物理速度レートをサポートするほか、フレームについても、レガシーモード(802.11a/b/gと同じ)、ミックスモード(802.11a/gと互換性を持つ下位互換性モード)、グリーンフィールド(802.11n同士のみ通信可能な高速モード)の3つが用意される。

 周波数帯域の拡大(20MHz/40MHzの双方が利用可能)とドメイン上でのモード切りかえ(40MHzの上側波帯のみ、下側波帯のみといった利用もできる)、GI(ガードインターバル:データを時間的に一部重複させて送る仕組み)の導入(400ナノ秒/800ナノ秒が利用できる)が行えるなど、高速化のみならず利用に際しての柔軟性も高められている。

photophoto 802.11nの物理層の特徴(左)、必須項目とオプション項目(右)。40MHz周波数帯域の使用やグリーンフィールド、400ナノ秒のガードインターバルなどはオプションと定義されている

 周波数帯については2.4GHz/5GHz帯の双方が利用可能となっているが、国内運用におけるチャネル配置など詳細については未定となっている。「(電波運用を管轄する)総務省は積極的に動いていると思う。特に無線アクセスシステムについては世界標準に準じた考えを持っていると思うので、新規格の国内運用についても楽観的に考えている」(大澤氏)

 802.11nの物理層において最も特徴的なのが、最大4つ(4ストリーム)まで重複可能な空間多重技術の導入だ。これは複数のアンテナ/送受信機を組み合わせてデータ送受信の帯域を広げる無線通信技術「MIMO」(multiple input multiple output)の一種といえるが、802.11nのドラフトでは空間多重を「ストリーム」単位で表現することになっている点が異なる。

photophoto 802.11nドラフトによる空間多重の定義(左)、アンテナを3つ備えてもストリーム数が2つならば「2ストリーム」となる(右)

 ストリーム数を増やすことで速度をほぼ倍にすることが可能になっているため、4ストリーム(周波数帯40MHz/ガードインターバル400ナノ秒)では理論上、600Mbpsの伝送速度が実現する。理論値であるため、実際にパソコンなどで利用した際にもこの速度が保証されるわけではないが、パケットあたりの伝送能力も高められることから「802.11gほど理論値と実際の速度が異なることはないはず」(大澤氏)。

photo フレームフォーマットと周波数ドメインの関係。1ストリームのままでもガードインターバルの縮小と符号化率の拡張によって、802.11a/b/gより速度は向上している

 メーカーによっては「アンテナを2本ずつ」「送受信機を2つずつ」のような構成の機器を「2×2」など表現することも予想されるが、これは必ずしもその数で空間多重通信が行われているわけではない。前述したようにドラフトでは実際に多重化されている電波の数で表現することが定義されており、必ずしも「2×2」といった表記とストリーム数が一致するわけではないことには注意が必要だ。

 同社では802.11nのドラフト仕様に対応するチップセット「AAR5008」のサンプル出荷を開始しており、「当面は理論値300Mbpsを達成するチップの提供を目指す」という。帯域幅が広くなることでデータ量の多いHD映像の無線伝送も可能になるが、当初はPC向け無線LANルーターなどから導入が進みそうだ。

 「まずはリテールの無線LAN製品から導入が進むのではないかと思う。802.11nならば1ストリームでもHD映像の伝送を問題なく行えるが、家電製品への採用は速くても2007年前半になるだろう」(大澤氏)

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