富士通「FMV-BIBLO MT」に見るWindows 7 マルチタッチの“実用度”:元麻布春男のWatchTower(2/2 ページ)
Windows 7で新たに実装された「Windowsタッチ」機能に対応したPCが続々登場しているが、その使い勝手はどうなのか。富士通のノートPCでチェックした。
充実のインタフェースを標準で装備
タブレットPC/マルチタッチ機能以外で特筆できるのは、外部インタフェースが極めて充実していることだ。標準的なUSB 2.0端子が3基、ギガビット対応の有線LAN(Broadcom製)、IEEE802.11b/g/n対応の無線LANはもちろん、Bluetooth 2.1+EDR、IEEE1394(4ピン)、HDMI、アナログRGB(D-Sub 15ピン)、ExpressCardスロット(/54と/34対応)、メモリカードスロット(SDメモリーカード/メモリースティックPRO対応)と、12.1型ワイド液晶を搭載したノートPCとしてはフル装備に近い。
さらにセンサー類も、前述の指紋センサー、液晶のバックライトを調節する環境光センサー、HDDのヘッド退避用のショックセンサーを完備する。また底面の一部がダストカバーとして外れ、そこから空冷用通風路(ヒートシンクの排熱ダクト)を掃除することさえ可能だ。これだけの装備を内蔵したCeleronマシンは、ほかに存在しないのではないかと思う。ただし、マシンの骨格自体は、Core 2 Duoに合わせてできているようだ。なお、OSは32ビット版Windows 7 Home Premiumで、オフィススイートのOffice Personal 2007(SP2)がプリインストールされている。
ただ1つ気になったのは、内蔵のポインティングデバイスであるタッチパッド(フラットポイント)のマルチタッチ操作が標準でオフになっていることだ。アルプス電気製の多機能ドライバが導入済みで、ピンチズームやフリップナビゲーション、ピポッドローテーションなどの操作に対応しているものの、利用する際はマウスのプロパティで設定が必要になる。液晶ディスプレイに組み込まれたタッチセンサーとタッチパッドがマルチタッチ対応なので、ユーザーインタフェースの一貫性という点ではよいのだが、パッドのサイズは66(幅)×38(縦)ミリと小さめだ。
フォルダオプションの標準設定が異なる富士通製PC
さて、実際に使ってみての感想だが、Wacom Feel IT Technologiesを用いたスタイラスペンとタッチ機能は完成度が高く、スムーズな操作が可能だ。タブレットPCが登場した当初は、画面の解像度とデジタイザ/センサーの解像度のバランスがもうひとつよくなかったように思うが、年月を経てかなり改善されたように感じる。本体に内蔵可能なスタイラスペンも直径が9.3ミリと十分な太さがあり、持ちやすい(重量は約10グラム)。
他社と異なる富士通製PCの伝統的な特徴の1つは、インストールされているWindowsの工場出荷時の設定が、「ポイントして選択し、シングルクリックで開く」になっており、「ブラウザーのように、アイコンタイトルに下線を付ける」が有効になっていることだ(Windows 7の場合)。FMVシリーズを使ったり、店頭で触ったことがあるユーザーなら分かると思うが、Windowsデスクトップのアイコンに下線がついているのは、この設定を反映したものである。
他社のPC、あるいはマイクロソフトによるWindowsのセットアップデフォルトは、「シングルクリックで選択し、ダブルクリックで開く」になっており、アイコンタイトルに下線はない。ユーザーインタフェースとして、どちらが正しいとか、どちらであるべきか、というのは一概に言うことができないが、一般的な設定に慣れたユーザーは、富士通製のPCに戸惑いがちになる(この設定はコントロールパネルのフォルダーオプションにあるクリック方法で変更が可能)。しかし、このタッチ機能をサポートしたFMV-BIBLO MTシリーズに関しては、ダブルクリックの不要なこの富士通の設定がしっくりとくる。指先で画面上のアイコンを2回叩くより、1回触るだけでアプリケーションが起動する方が自然だ。
タッチ操作をアシストするユーティリティソフトウェア
本機に限らず、タッチ機能をサポートしたPC、あるいはWindows 7のタッチ機能における最大の問題は、タッチに最適化されたアプリケーションが少ない点にある。本機も含めタッチ機能をサポートしたWindows 7プリインストールPCの大半には、「Microsoft Touch Pack for Windows 7」という、一種のお試し版ソフトウェア集がバンドルされている。これはマイクロソフトのSurfaceプロジェクトで開発されたサンプルアプリケーションであり、テクノロジのデモとしては優れているが、それほど実用性が高いわけではない。
実用的なアプリケーションという点では、いわゆるお絵かきソフトや、写真の簡易レタッチソフトのようなものが主力で、本機にもCorel Paint it! touch for FUJITSUやマイフォトビューワーなどが付属する。これはこれで実用性は高いのだが、これにも増して実用性が高いのがプリインストールされている「タッチ操作パネル」だ。本機を起動すると、画面の右端に常駐しているランチャー状のアプリケーションで、下半分はIEやCorel Paint it!などを呼び出すショートカットとなっている。
出色なのはブラウザ(IE8)を起動すると、このタッチ操作パネルが自動的に「インターネットモード」と呼ばれる状態に変更され、IEの戻る、ウィンドウを閉じる、タブ操作、ブックマーク操作、スクロールなどを、タッチ操作パネル上のアイコンに触れるだけで行うことができるようになることだ。さらにブラウザの文字入力エリアを触れると、自動的に「タッチ文字入力」が起動する。
タッチ文字入力は、指先でのタッチを前提とした50音順のソフトウェアキーボードで、指先での入力を前提にする限り、Windows 7標準のソフトウェアキーボード(タブレットPC入力パネル)よりもはるかに使いやすい。その決め手は実用的な予測変換機能を持つことで、この携帯電話でおなじみの機能のおかげで、少ないタッチ数で日本語入力ができる。日本語では避けられない文字種の切り替えも容易で、URLの入力や日本語による検索語の入力を効率よく行うことが可能だ。見た目(デザイン)や機能のネーミングは改善する余地があると思うが、実用性は高い。
直販で買える、より高性能なCPUが欲しくなる
このようにハードウェア、ソフトウェアともに充実の機能を備える本機だが、弱点がないわけではない。それは重量と性能だ。12.1型ワイドという液晶ディスプレイサイズだけを考えると、本機は「モバイル」のカテゴリに入るが、ボディサイズは297(幅)×233(奥行き)×35.9(厚さ)ミリ、重量は2スピンドル構成時で2キロを超え、ウエイトセーバーを装着しても約1.89キロある。気軽に外に持ち出して、というわけには行かないのが残念だ。いわゆる「お家モバイル」用のマシンという位置付けなのだろう。
一方、性能面もそれほど高いとは言えない。すでに述べたように機能がてんこ盛りの本機だが、コンシューマー向けに買いやすい価格設定(実売15万円前後)を実現するために、CPUがシングルコアのCeleronとなっている。下位グレードのエンジンを搭載した高級車的な感覚で、どうしても非力さが否めない。性能はアプリケーションによって異なるが、半額以下で市販されているCULVノートPC並み(ただし本機のような多彩な機能は持っていない)という感じだ。システムに負荷をかけると冷却ファンのノイズも若干気になる。ボディに見合ったパワーが欲しいユーザーは、直販のWEB MARTでカスタムメイドモデルを選択し、Core 2 Duo P8700(2.53GHz)やCore 2 Duo T9600(2.6GHz)を選ぶ必要がありそうだ。
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