インタビュー
» 2006年06月01日 00時00分 公開

開発者が語る「VGN-UX50の思想」 (3/3)

[長浜和也,ITmedia]
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拡張性に見るVGN-UX50の将来

 VGN-UX50の基板は小さい。ただでさえ小さいのに穴まで空いていて「基板担当としては、これだけ小さい基板にこれだけ大きな穴をあけられてしまうとモノが置けない」(鈴木氏)という状態でチップのレイアウト設計はさぞや大変だったろうと思われる。

基板の表にはCPUにノースブリッジにメモリ、裏にもサウスブリッジがその存在を主張するがこれらはソニーがどうこうできるものではない。そのため、電源回路で面積削減を目指すことになる

「基板の小型化においてCPUとチップセットはどう頑張っても(ソニーには)小さくできません。ここは削減できない面積。そこで、どこで頑張るかとなるとその裏側で頑張ることになります。多くの場合に省スペースのしわ寄せは電源回路に行きますが、電源回路の小型化とバッテリー駆動時間はトレードオフの関係にあります。一般的にバッテリー回路のコイルが大きいと効率は高くなりますが同時に体積も大きくなる。電源回路担当は設計開始時点で割り当てられた面積に回路が収まるかまったく目処が立たず、かなりプレッシャーを受けていたようです」(鈴木氏)

 VGN-UX50は512Mバイトのメインメモリを基板に実装している。メモリスロットを持たないため増設できない。バッテリー駆動時間と並んで購入を検討するユーザーが懸念を示しているところである。

「PCイコール拡張性という考えをユーザーさんは持っています。拡張性を持たせるためにメモリスロットの実装も検討しましたが筐体の大きさに影響してしまうため今回はできませんでした。512Mバイトで十分使えますが拡張できるというのは安心感にもつながるので将来的には解決していきたいところです」(鈴木氏)

 VGN-UX50本体の拡張性は実装されたCFカードスロットとメモリースティックスロット、それからUSB 2.0インタフェースに依存する。楡井氏によると「米国向けモデルではCFカードスロットがない代わりにワイヤレスWANのモジュールが内蔵されています」と大変興味深い話を明らかにしてくれた。残念ながら日本向けモデルでは「モジュールの搭載は可能です。しかし、国内のデータ通信環境は過渡期なので1つのものに決めて内蔵してしまうのはあまりよくないかなと。国内ではCF対応のデータ通信カードがたくさんあるので、今回はCFカードスロットを設けました」(楡井氏)というらしい。ただし、楡井氏は「もちろん将来的には内蔵というのはやっていきたいのと考えています」とも。

格子状キーボードのメリットとは?

VGN-UX50の搭載されたキーボード。格子状にきれいに並んだ配列が特徴。ストロークを求める声もあるが厚みが出てしまうため難しいらしい

 VGN-UX50に内蔵されたキーボードには、均一ピッチのキー(その姿や押した感触はボタンに近いが)が格子状に並んでいる。この配列にはどういう理由があるのだろうか。

 「VGN-UX50のキーボードは普通のPCよりキーを減らしています。でも、フルWinodws PCとして使う場合には絶対に削りたくないキーが並んでいるのです。ちゃんと打っていただきたいのでキーの大きさは確保したい。そうなるとこの長方形のきれいな配列がいちばんキーを大きく置けるのでこれにしようと。互い違いにしたほうがいいという話もありましたが、そうすると余分なスペースができてしまい一部のキーがさらに小さくなってしまうのでやめました」(楡井氏)

 しかし、そうはいっても[Enter]キーは大きくしてもよかったのでは、と意見するユーザーも多いと思う。開発スタッフも「そこはかなり悩みました」(鈴木氏)と語っている。

「ほかのキーを落として[Enter]キーを大きくするかかなり議論しました。しかし、快適さのためにはどれも落とせないねと。そういうことで最終的にこの大きさになっています」(鈴木氏)

 VAIO VGN-UX50のキーボードを評価しているときにとても気になったのが(ボタンのように押さなければならない感触ではなく)[Fn]と組み合わせて使うキーの使い方であった。とくに[F1][F2]などのファンクションキーはどちらも「左手親指」の守備範囲内なのに同時に押さなければならないため両手の親指はかなり無理な状態になる。「ほとんど使わないNumキーとファンクションキーを入れ替えればいいのに」と考えてしまうのだが、ここでも鈴木氏は「キーボードはいろんな人がいろんな使い方をするので」と興味深い理由を説明してくれた。

「通常のレイアウトから崩してしまうとドンドン変なキーボードになってしまうのです。そこを考えるとNumキーは移動できなかった。キーのなかの優先順位というのはあまりなくて、今までここにあったのをどうしてこっちに動かしたのか?という意見や、こんなキーを使うユーザーがいるんだ! ということがキーボードでは非常に多く、そういう意味でなるべく普段使われているキーボードの状況から動かしたくなかったのです」(鈴木氏)

 VGN-UX50の「液晶ディスプレイをスライドさせたら親指タイピングキーボードが姿を現す」というデザインを見て「W-ZERO3」を連想したユーザーも多いと思う。先ほども触れたようにVGN-UX50の開発は1年半前から始まっているのでW-ZERO3の影響も受けていない。 逆に「W-ZERO3を見てこういう形にニーズがあることを確認しました」(鈴木氏)「一瞬やられたとも思いましたが、市場としては広がっていくだろうから、むしろラッキーだなと思いました」(楡井氏)と、VGN-UX50にとってはプラスに働くと考えていたようだ。

「Origamiも含めて小さいものが注目を集めているのでタイミングとしてはよかったかなと。OSを含めてできることが違うのでユーザーさんの選択肢としていろいろあっていいのではないかと考えました」と鈴木氏が述べるまでもなく、携帯端末というカテゴリーで両者が比較されることは多い。この2台を並べたとき、VGN-UX50のアドバンテージはどこにあるのだろうか。

「普通のビジネスユーザーはWindowsを使っていると思います。VAIO type Uの一番のポイントは普段使い慣れているWindowsの環境をそのまま持っていけて、ユーザーインタフェースも小さいなかで使いやすくなるような工夫が施されているところです。なるべく違和感なく、これを持っていけば普段使っているWindowsがあるんだ、という安心感。PDAというハードは軽いけれど、どこまで何ができるのかって初心者ほどハードルが高いと思っている。そういうユーザーさんにはVAIO type Uはいつもと同じですよと言えるのです」(鈴木氏)

VGN-UX50を手にする楡井氏と取材の過程でバラバラにして「一山いくら」状態になったVGN-UX50を手にする鈴木氏

 これまで登場したVAIO type Uも発表された当初はユーザーから熱狂的に受け入れられるものの、実際のセールスとなるとなかなか思うようにいかないところもあった。VGN-UX50が登場した今では小型端末を取り巻く状況も変化しつつある。モバイルパワーユーザーだけでなく、「VAIO type Uはいつもと同じですよと言えるのです」と開発者が語るVGN-UX50は、より広い普通のユーザーにも受け入れてもらえる「創意と工夫」詰まっている。開発者の想いが多くのユーザーにどのように評価されるのか。それは出荷が開始されたこれから明らかになる。

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