インテルが開発コード名「Merom」として開発してきたノートPC向けCPUは、すでに7月末にCore2 Duoとして発表されているが、本日からOEMベンダのノートPCに搭載されて実際に販売が開始された。Meromの基本的なアーキテクチャは、すでに市場に出回っているデスクトップPC向けCore2 Duoこと開発コード名「Conroe」とほぼ同じ(ConroeがMeromをベースに開発されているのだ)であるのだが、消費電力はConroeよりもずっと低く抑えられている。熱設計時の指標となるTDP(Thermal Desgin Power、熱設計消費電力)は35ワットと、Conroeの65ワットに比べて約半分だ。
今回は、同じ動作周波数のMeromと現行製品であるCore Duo(開発コード名Yonah)を搭載し、CPU以外の構成は同等なノートPCを使って、Core DuoとCore2 Duoでどの程度性能が異なるのかを検証する。
インテルは今年の1月に、それまで開発コード名「Napa」と呼んできたモバイル向けプラットフォームを、「Centrino Duo」のブランド名で投入した。Napaプラットフォームは、モバイル向けのCPUとしては初となるデュアルコアのCore DuoをCPUに採用し、新しいチップセットとしてIntel 945GM/同PM、無線LANにはIntel Pro/Wireless 3945ABGで構成される。チップセットと無線LANの平均消費電力が下がったため、従来のSonomaプラットフォームに比べて性能は上がっているのにバッテリー駆動時間が延びるという優れた特徴を備えていた。
今回発表されたノートPC向けCore2 Duo、つまりMeromは、このNapaプラットフォームの上でそのまま動作する。CPUをYonahからMeromに置き換えるだけでいいのだ。もっとも、この「そのまま」というのは、エンドユーザーレベルではなくOEMベンダレベルの話。OEMベンダはCPUを置き換えてMerom対応のBIOSへと切り替えるだけで、出荷時にCore DuoかCore2 Duoかを選ぶことができる。ただし、いわゆるTDPと呼ばれる熱設計時の指標はCore Duoが31ワットであったのに対して、Core2 Duoでは34ワットへと引き上げられている。このため、CPUを新旧交換する場合には、TPD34ワットを前提に筐体が熱設計されていることが前提になる。幸いにして、インテルがOEMメーカーに対して提供していたNapaプラットフォーム向けのデザインガイドでは、最初から34ワットを前提に設計することを推奨していた。ほとんどのノートPCメーカーは経済性の観点から34ワットで設計しているので問題になることはないだろう。
ユーザーが自分でCore DuoからCore2 Duoに交換する場合には、このように変更されてた熱設計と更新しなければならないBIOSが問題なる。ほとんどのメーカーはBIOSアップデートを公開している(Meromを搭載した製品が出荷された後で公開される可能性が高い)が、CPUファンなど熱設計周りには注意が必要だ。筐体が34ワットを前提に設計されていても、コストを抑えるためにCPUファンの材質などが31ワットで設計されていることもあるからだ(Core2 Duo搭載製品では、よい材質のヒートシンクなどに交換されている場合があるという)。従って、ユーザー自身でCore DuoからCore2 Duoへと交換するのはリスキーである。少なくとも保証期間内にやるようなものではない。
機能面を比較してみよう。Core2 DuoはCore Duoに比べて、L2キャッシュが2Mバイトから4Mバイトに、実行パイプラインの段数は12から14に変更されて同時命令実行が3命令から4命令に増えている。また、いわゆる「SSE4」と呼ばれる新しい命令セットを利用することで、メディア処理などの性能をさらに向上させることが可能になる。
製品名 | Core2 Duo | Core Duo | |
開発コードネーム | Merom | Yonah | |
製造プロセスルール | 65nm | 65nm | |
CPUコア数 | 2 | 2 | |
L1キャッシュ(各コア) | 64KB(32KB、32KB) | 64KB(32KB、32KB) | |
L2キャッシュ(各コア) | 4MB(共有) | 2MB(共有) | |
パイプラインステージ数 | 14 | 12 | |
同時実行命令数 | 4 | 3 | |
SIMD演算実行幅 | 128ビット | 64ビット | |
FSBクロック | 667MHz | 667MHz | |
機能 | EIST | ○ | ○ |
VT | ○ | ○ | |
XD | ○ | ○ | |
命令セット | インテル64(EM64T) | ○ | − |
MMX | ○ | ○ | |
SSE | ○ | ○ | |
SSE2 | ○ | ○ | |
SSE3 | ○ | ○ | |
SSE4 | ○ | - |
(記事掲載時にYonahコアでEM64Tの欄に○が記載されていましたが、正しくはサポートされていません。ここにお詫びして訂正いたします)
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