「お店にプリントをお願い」したい人の誤解を解くための新機能──エプソンのインクジェットプリンタ発表会

» 2006年09月26日 19時42分 公開
[長浜和也,ITmedia]

 セイコーエプソン代表取締役副社長の丹羽憲夫氏は同社のインクジェットプリンタビジネスの現状について、順調に推移した2005年の反動を受けて、2006年上期は減少となったが、下期になって上向き、6〜7%の成長が見込めると説明。また、2006年におけるインクジェットプリンタ売り上げの60%が複合機モデルで占めると予想し、全体で50%を超えるシェアを確保すると述べた。

 同社情報画像事業本部IJP事業部事業部長の遠藤鋼一氏は新製品で採用された新技術を説明。そのなかでとくに強調していたのが「Epson Colorの進化」「お店プリントに勝つ」「TVプリンティング」という3つのキーワードだ。

 Epson Colorは2005年に打ち出された技術で、人の顔を認識して画像補正を行う機能などが好評だった「オートフォトファイン! EX」や、耐久性に優れた「つよインク」、きれいな印刷結果を実現する写真用紙などで構成される。とくにオートファイン!EXはプリンタを選択する要因として重視する購入者が多かったそうだが、実際に使ったユーザーからは「もっと明るい肌色にしたい」「逆光補正で補正が効かないときがある」「逆光補正で背景が飛んでしまう」という意見が寄せられたらしい。この問題を解決するために2006年の製品では、「より好ましい肌色に近づける補正」「顔の大きさと背景のバランスを考慮した明るさ補正」を行うように改良が加えられている。

左が撮影したオリジナル画像で中央が2005年の製品で行った補正、そして右が2006年の製品で行った補正だ
発表会でセイコーエプソンが示した背景と顔のバランスによる補正の違い。2006年の製品では補正モードに「人物」と「背景」が用意され、人物モードで飛びやすい状況でも背景モードでは飛ばないように補正する

 エプソン製インクジェットプリンタの特色でもある「つよインク」も「発色性」「耐光性」「耐オゾン性」が向上するように改良した「つよインク200」が新製品から採用された。これについても遠藤氏は「耐光性は従来の2.5倍になって銀塩写真を凌駕し顔料インクに迫る。耐光性と耐オゾン性が向上して6色インクも4色インクも同等の保存性を実現したことで、ようやく“200年保存”をうたえるようになった」をアピールした。

蛍光灯に暴露して色があせていく「退色挙動」の加速試験データ。70%退色がひとつの目安となる。従来は25年程度でこの指標を切っていたのがつよインク200では50年経っても70%を上回っている
こちらは耐オゾン性を調べた暴露加速試験のデータ。従来ではオゾンに弱いシアンとマゼンダが12〜13年で70%程度退色するのに対して、つよインク200では25年経過してようやくシアンが70%を切る

 さらに遠藤氏は、高速印刷を実現する機能として従来からサポートしてきたMSDT(Multi Sized Dot Technology)に改良を加えた「Advanced-MSDT」を紹介。これはインク粒サイズが従来2pl(ピコリットル)、6pl、20plの3種類だった3Dot Size制御から1.5pl、2pl、6pl、13pl、20plの5種類に増えた5 Dot Size制御になったほか、ヘッド応答周波数の最適化を進めて操作速度を向上させることで、高速、かつ高画質の印刷を実現している。また、新たに搭載された高機能高速画像処理エンジン「REALOID」(リアロイド)についても、画像処理の並列化やPCに相当するハーフトーンの実現、印刷開始時間の短縮などの効果をアピールした。

インク粒のサイズを5段階で制御できるおかげで階調表現が4色インクでも6色インクに匹敵するようになった
2006年に登場した製品と従来モデルとの印刷速度を比較したデータ。従来モデルで十分な速度を実現していたハイエンドモデルもA4サイズ印刷では2006年モデルも速度が向上している

 今年の新製品では、ネットTVに接続できるプリンタが登場している。これについて遠藤氏は「プリンタの方向性はPCの周辺機器からフォトコンテンツの印刷に進み、これからはデジタルテレビ放送によるパブリックコンテンツの印刷に取り組む」とその意義を説明した。今回登場したネットTV対応プリンタ「PM-T990」は2007年度に大手家電メーカーが投入する予定の「ネットTV」とすでに発売されている松下電器産業の「VIERA」(松下TV仕様)に対応する。PM-T990は画面のハードコピーだけなく、データ放送内のデータ、ネットTVの画面、印刷用データ、テレビに表示させたメモリカード内の写真データなどの印刷が可能だ。

 エプソン販売代表取締役社長の真道昌良氏は、インクジェットプリンタの市場動向と新製品のプロモーションを紹介した。市場動向については、発表会の冒頭で丹羽氏が述べたように、前年度と比べて111.6%と市場が成長した2005年の反動とオリンピックとワールドカップの開催によって需要がAV機器へシフトしたために2006年上期は前年度91.4%と減少したが、好調な複合機とコンパクト機によって下期は前年の106.7%を見込んでいると説明。年末商戦の市場規模を前年比105%の206万台と見込む中、エプソンは52%以上のシェア確保を目標として掲げている。

 ユーザーに対する訴求ポイントとして真道氏は「おうちプリント」の名のもとに写真プリントの促進と「テレプリパ」のネーミングによるTVプリンティングの浸透を打ち出している。写真出力をDEPなどの店に依頼するユーザー層には「おうちプリント」の拡大を図り、写真出力をしないユーザー層には紙への印刷をうながす啓蒙を図っていく。

 このうち、プリンタではなく店に写真出力を依頼する層に対しては「一種の誤解」(真道氏)である「店に頼むとプロだから安心で写真はきれいで手間がかからない」といった不安を払拭するために、2006年の新製品に搭載された新機能をアピールし、「プリンタまかせで、ますますキレイ」というキャッチフレーズでユーザーに訴求していくと真道氏は説明した。

お店に写真の出力を依頼するユーザーと紙に印刷しないユーザーに対してエプソンは働きかけを強化していく
お店に依頼する人は「プリンタ出力よりも簡単できれい」と誤解している、とエプソンは考える。そこで新機能でプリンタも「きれいで簡単で安心」であることを訴えていくという

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