8万9800円PCをメディアプレイヤーとして使い倒す工人舎のミニPCを再検証(2/2 ページ)

» 2006年11月24日 10時00分 公開
[坪山博貴,ITmedia]
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DivXやWMVでも動画を見たいっ!

 前ページではMPEG2ファイルを検証したが、DivXやWindows Media Video(以下WMV)といったMPEG2よりも高圧縮なコーデックでエンコードした動画ファイルはどうだろうか。一般にはMPEG2再生よりもCPU処理能力が必要とされており、4〜6Mbps程度のMPEG2が限界ではと思われる「SA1F」では荷が重いようにも感じる。最近は液晶ディスプレイを備えたポータブルDVDプレイヤーでもDivX対応の製品は増えたが、WMV対応の製品はほとんど見られない。

 また、DivX対応のメディアプレイヤーでもDivXでは120fps(Nullフレームを挿入し24/30fpsを混合)でエンコードされたファイルで音ズレが発生したり、「GMC」「Quater Pixel」などのオプションを有効にしてエンコードしたファイルは再生できない場合がほとんどだ。

 筆者はアイ・オー・データ機器の「AVLP-DVDG2」を利用しており、これでの再生を考慮して普段からエンコード作業を行なっているが、メディアプレイヤーを購入してから自分でエンコードした動画ファイルの中に、正常に再生できないものがあってぼう然とした人もいるのではないだろうか。ともあれ、PCそのものをポータブルメディアプレイヤーとして利用できるメリットは非常に大きい。

 まずはDivX 6.4をSA1Fにインストールし、WMPでDivXとWMVファイルを再生してみた。MPEG2での状況を考慮するとほとんど再生不能ではないかと思ったが、結果は予想を反するものであった。もちろんファイルごとの変化が大きいのだが、筆者の手持ちの動画ファイルでは1Mbps程度以下のビットレートであれば、さほど問題なく再生できる場合が多かった。DivXの120fpsやWMVの24-30fps混合ファイルでもとくにCPU使用率が大きく変化するということもなく、音ズレもない。この辺はやはりPCならではのメリットだろう。

ほぼ正常に再生が可能だったWMVファイルの例。冒頭でCPU使用率が100%に達しているのはファイルを先読みしてバッファリングしている関係だろう。ファイルは24-30fps混合で、エンコード(AVIUtilで自動フィールドシフト+WMV出力プラグイン使用)したものなので、実効で23.9fpsであれば再生に乱れはない。スキップフレームは冒頭のCPU使用率100%の部分でほとんどが発生しており、この部分では映像に若干のぎこちなさは見られた

こちらはWMVファイルで再生が紙芝居のようになってしまった例。平均ビットレートが高いわけではないのだが、全編で紙芝居のような表示になるケースが多く、視聴に耐えるレベルではなかった(あくまで1例ではあるが)

 DivXでは、ffdshowとMedia Player Classicでも確認してみた。WMP+DivX 6.4では時折映像がコマ送りになる平均ビットレートが1.2MbpsほどのDivXファイルを再生してみると、WMP+ffdshowはほとんどコマ送りになることがなく、実際にCPU使用率もぐっと低い。Media Player ClassicもWMP+DivX 6.4よりはCPU使用率が低く、映像がコマ送りになることもほとんどなかった。DivXに関してはffdshowを利用するのがベターと言えそうだ。

左からWMP+DivX 6.4、WMP+ffdshow、Media Player Classicで同じDivXファイル再生時のCPU使用率。WMP+ffdshowの組み合わせがもっともCPU使用率が低い。筆者がエンコードしたDivXファイルは解像度が512×384〜640×480ドット、ビットレートが800Kbps〜1.5Mbps程度がほとんどだが、WMP+ffdshowの組み合わせなら大半が実用レベルでの再生が行なえた

バッテリーの持ちは? Bluetoothヘッドフォンの利用は?

 ポータブルメディアプレイヤーとして利用するとなると、バッテリーの駆動時間も気になるところだ。そこでバッテリーフル充電の状態から液晶ディスプレイのバックライトの明るさを8段階の内の5段階目に設定し、2時間4分のMPEG2ファイルをSA1Fで連続再生させてみた。再生終了時のバッテリー残量は34%となっており、計算上は動画再生で3時間弱程度はバッテリー駆動ができそうだ。とりあえず映画1本見る程度なら十分なバッテリー動作時間と言える。

 一方、Bluetoothのステレオヘッドフォンを使う場合だが、まず筆者所有のMobileCast製「MPX3000RP」(P902i対応)、「MPX2000」、au W44T付属のBluetoothレシーバー(receiver01)は問題なく利用できた。また「MPX3000RP」と「receiver01」ではWMPのリモコン操作も問題なく行なえた。

2時間4分のMPEG2ファイル再生後のバッテリー残量(写真=左)。動画再生時はおおむね3時間のバッテリー動作と見てよさそうだ(液晶ディスプレイの明るさにもよるが)。SA1Fが採用するBluetoothスタックは多機能なBlueSoleil製だ(写真=右)。筆者が所有するBluetoothヘッドフォンは全て問題なく利用できた。

 もっとも、絶対的なCPUパワーがやはり足りないのか、Bluetoothでのステレオヘッドフォン利用時のCPU使用率は無視できないレベルにある。音楽再生に利用する分にはほとんど気にする必要はないと思うが、動画再生では影響が大きいのだ。例えばWMP+WinDVD 5ではMPEG2なら4Mbpsまではほぼ問題なく再生できたが、音声をBluetoothでステレオヘッドフォンへ出力すると、4Mbpsでもコマ落ちが発生した。CPU使用率で見てもはっきりと変化が出ている。動画再生時にBluetoothでステレオヘッドフォンを使うのはちょっと辛いかな、というのが正直な感想だ。

Bluetoothヘッドフォンを利用した状態でのMPEG2ファイル再生時のCPU使用率。左の画面が2Mbps、右の画面が4Mbpsだ。2MbpsでもかなりぎりぎりのCPU使用率になってしまっている

妥協は必要だがメディアプレイヤーとしても魅力の存在

 ここまでの検証で分かったように、制限はあるもののSA1Fは動画中心のメディアプレイヤーとしては実用レベルにある。もちろん“実用”のラインをどこに置くかにもよるのだが、筆者のようにほとんどのTV番組をSPモードで録画し、それをDivXやWMVなどでエンコードしてコンパクトに保存しておく、といったスタイルであれば、さほど不便を感じずに利用できるのではないだろうか。筆者の知人には、録画は最高ビットレート、DivXやWMVでもエンコードも画質重視で1Mbps超は当たり前なんて人もいるので、こういったケースではSA1Fはやはり非力である。

 メディアプレイヤーとしての利用ではなにかしらの妥協が必要だが、それでもWindows XPで動作するゆえのメリットが非常に大きいのもまた事実だ。加えて8万9800円という価格まで考慮に入れれば、セカンドPC兼ポータブルメディアプレイヤーとしては決して悪くない選択肢のはずだ。また蛇足だが、SD1Fは9.5ミリ厚の2.5インチHDDを採用(こちらの分解記事を参照)しており、メーカー保証が受けられなくなるとはいえ、現状でも160GバイトまでのHDDに換装できる点もメディアプレイヤーとしては魅力に映るのではないだろか。

 なお、本機の発売は12月1日から行われる予定だが、工人舎の直販サイトでSA1F00Aを予約すると、通常は1万円かかるHDDのアップグレード(40Gバイトから80Gバイトへ増量)が3000円で行える発売記念キャンペーンを展開中だ。

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