「デル・モデルのコピーは難しい」――スティーブ・フェリス副社長に聞くバッテリー問題は影響なし(1/2 ページ)

» 2006年12月04日 00時00分 公開
[田中宏昌,ITmedia]

 スティーブ・フェリス副社長は、1999年にデルへ入社し、コンサルティングサービスやアメリカ地域の法人グループ担当副社長などを経て、現職の日本/アジア太平洋地域担当副社長に就任した。現在では、デル日本法人の取締役として経営にも名を連ねている。

――日本/アジア太平洋地域でのデルの現状を教えてください。

日本/アジア太平洋地域担当副社長のスティーブ・フェリス氏

フェリス副社長 日本/アジア太平洋地域(以下、APJ)では、大きな成功を収めています。直近の第3四半期では、アジアの主要地域で前年比、出荷台数ベースともに増大しており、とくに日本は前年比で2.6%シェアが拡大しています。

 APJ全体では出荷台数ベースのシェアが前年比で33%増えており、これはAPJの平均成長率の2倍以上にあたります。よく、デルモデルはアメリカ以外で通用しないという言葉を耳にしますが、それに対する答えはかなり明確に出ていると言えるでしょう。

 現在、事業拡大を続けていくために3つの部分に焦点をあてています。

 具体的には、製品ラインの拡充、顧客満足度の向上、全体的なコスト削減です。とくに直近6カ月では、デスクトップPC、ノートPC、サーバ、液晶ディスプレイなどすべての分野で新製品を投入してラインアップを拡大したほか、社内の調査では顧客満足度の向上が見られています。

 この3つの重点分野以外でも、APJではサービスやソフトウェア、周辺機器、エンタープライズの分野でも拡大を図っています。中でもソフトウェアと周辺機器では、前年比で売り上げが38%アップしています。日本では法人向けサービスの「デル・プロフェッショナル・サービス」やストレージの分野で顕著な伸びが見られます。

――日本ではPCシェアNo.1の座が見えてきていますが。

フェリス副社長 日本でのトップシェアは視野に入れていますが、まずは四半期ごとのビジネスを重視しています。四半期ごとにお客様の満足度と利益を上げ、それを繰り返していけば近い将来に獲得できるものと確信しています。お客様の満足度を高める――とくに法人市場でパートナーとして使ってもらえる製品や技術、サービスを提供するのが成功の鍵と考えています。

――日本のPC市場は芳しくありませんが、その中でデルが成長を続けている理由を教えてください。

フェリス副社長 日本はAPJで最も利益率が高い市場です。そして、売り上げ/利益の両面でも安定した成長を続けています。ほかのPCベンダーとの一番の違いは、デルダイレクトモデルにあります。ダイレクトモデルは、もともと流通コストや在庫コストを持たない低コストなモデルで、価格競争力の高い製品を投入しても利益を上げることができるのです。

 日本での一番の課題はIT市場がマイナス成長なことです。その中で、売り上げを増やしつつ利益を確保していくのが課題と言えます。ただ、市場は回復基調なので今後は期待しています。

――日本で一時期、顧客サービスの低下が指摘されましたが。

フェリス副社長 日本での重点分野の1つが、サービス満足度の向上です。社内の調査によると、事業の急拡大により日本でのサービス満足度は確かに一時的に下がったときもありましたが、現状ではすでに回復しています。

 ここ最近、日本でサービス・サポート面を強化すべく大きな投資を続けています。宮崎のカスタマーセンターや川崎のエンタープライズコマンドセンターの開設や拡張、テクニカルサポート要員やカスタマーサポートケア要員などを増員し、お客様の満足度の向上と維持を図っています。

――日本では法人に比べて個人/SOHO市場は弱いと思いますが、その点はどのように考えていますか。

フェリス副社長 APJ全体で見ると、法人よりも個人/SOHO市場のほうが成長率が高いのですが、日本では個人/SOHOと法人の成長率が約9%とほぼ同じです。

 今振り返ると、個人市場への本格参入がやや遅れていたかと思います。とくにノートPCは成長が著しかったにもかかわらず、的確な製品の投入が行えていませんでした。しかし、今年になって投入したXPSシリーズやLatitude D420などの製品がよい成績を上げています。デルの投資比率は、伝統的に個人・SOHOに対して15〜20%、法人が80%前後になっていますが、個人/SOHO向けに魅了的な製品を投入していくことに変わりはありません。

 現時点で具体的な計画はありませんが、日本のPC動向・トレンドはきちんと観察を続けています。タブレットPCやノートPC、液晶一体型のオールインワンPCといった分野で、今後の可能性を検討しています。

――日本でも注目を集めたノートPCのバッテリー問題ですが、業績への影響はありますか。

フェリス副社長 この問題については、冒頭でお話しした結果がすべてを語っていると思います。ノートPCの売り上げは顕著な伸びを示しており、事業に影響はなかったと考えています。最初こそ心配されたお客様が多かったのですが、事実を把握されたあとには当社の安全性やカスタマーケアの姿勢ついてご理解いただけたと思います。

 また、この件についてはダイレクトモデルの強みが十分に発揮されたと考えています。というのも、弊社の製品を購入したユーザーに直接コンタクトを取れるシステムを持っているからです。とくにリコールに該当するバッテリーをお使いのお客様へ直接、しかも迅速にコンタクトできました。これにより、最終的にはお客様の満足度向上につながったと思います。

 また、バッテリーを供給するソニーはよきパートナーであり、この件の前後でその位置づけに変わりはありません。

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