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» 2006年12月18日 08時00分 公開

青山祐介のデザインなしでは語れない:NとEとCを忘れずに――NECデザインの取り組み (2/3)

[青山祐介,ITmedia]

空間への調和を意識した“フレンドリー”なVALUESTAR Sシリーズ

 NECの液晶一体型PCには、秋モデルで新たに追加された「VALUESTAR Sシリーズ」に対して、AV機器を意識した上位機の「VALUESTAR Wシリーズ」がある。Wシリーズの外観はかなりシャープなイメージなのだが、それに対しSシリーズはどのようなコンセプトを打ち出したのだろうか。

新登場のVALUESTAR Sシリーズ(写真=左)と上位機のVALUESTAR Wシリーズ(写真=右)

NECデザイン プロダクトデザイン 1 チーフデザイナー 鳴澤道央氏

 「VALUESTAR Sシリーズのコンセプトは、フレンドリーであることですね。“フレンドリーなスタイル”がどういうことであるか、というのをメインに考えました。“親しみやすさ”とか“優しさ”とも言えますね。さらには“空間への溶け込み”も考えてあります。

 とくに今までと違うのが、本体がかなり薄いという条件があったので、そこを最大限生かせるようにしたことです。横から見ればわかるかと思いますが、非常に薄い液晶部分とスリムな本体の部分とで軽く見せることができるのではないかと思いました。これまでの“塊が置いてあります”というよりも、非常に軽いイメージの“羽根”のようなものが空間に置かれていることを想定しました」(鳴澤氏)

 今回のSシリーズでは、従来の液晶ディスプレイのチルト(上下方向に首を振る)機構に加え、左右に首を振るスイベル機能が追加されたのが特徴だ。しかし、デザイン初期ではスイベル機構がなく、単純な形状からスタートしている。

 「VALUESTAR Sシリーズでは、製品の角を丸めた柔らかいイメージとは逆のスクエアなイメージのもの、操作面をユーザーのほうに向けるなど使いやすさを考慮したもの、そして、まったく考え方を変えた液晶ディスプレイの部分だけを動かすといったもの、と3つの大きく方向性の違うものでデザインを進めていきました。そして最終的に、ユーザーの使い勝手を考慮してスイベル機構取り入れたものに決まりました。その結果、液晶ディスプレイ部分だけを動かすのではなく、完全に本体と液晶を独立させて“軽く”見せたほうがいいということで、今回のような本体の上にチルト/スイベル機構を持った液晶ディスプレイを載せた形のデザインになったのです」(鳴澤氏)。


VALUESTAR Sのデザインスケッチ。液晶ディスプレイの設置方法で試行錯誤の跡が見える

パブリックなスペースで気軽に使ってほしい

――今回のSシリーズは、明るいホワイトという色や丸みを帯びたボディの造形から女性向けという印象を受けましたが?

鳴澤 性別にとらわれてしまうと、個人的に考える特定の女性が好むであろうとか考えてしまい、デザインとしては間違った方向に行ってしまうので、そういうことは考えていません。それよりも、デスクトップPCでは空間に対してどうか、というところが大きいですね。また、Wシリーズとの違いという意味だと、PCとしての性能や機能面(Wシリーズは地上デジタル放送に対応するが、Sシリーズは非対応)でも差がありますから、その辺を表現しているWシリーズに対し、Sシリーズのように気軽に使ってください、というものとでは、おのずとカラーリングや形状が違ってくるわけです。

――“置かれる場所”として、具体的に想定した空間というのはありますか?

鳴澤 個人の部屋に置かれることもあると思いますが、もちろんリビングに置かれたりすることもあると思います。“こういう色調のこういう空間”ということではなくて、いつも人が集まっている場所なのか、パーソナルな場所なのか、でも違うと思います。パーソナルな空間であれば、趣味性の高いものに囲まれて個人個人の好みが反映される、ということがあります。そういう意味で言うと、リビングに置かれても違和感のないような、あまりリビングの中で浮いたりせず空間になじむように、というのが今回のSシリーズのデザインですね。個人のスペースというよりも家の中でもパブリックなスペースというイメージです。

――そういう点で、SシリーズとWシリーズの違いはどこにあるのでしょうか?

初代VALUESTAR WシリーズのVW900/CD

鳴澤 初代Wシリーズは私が担当しましたが、26インチの大画面液晶一体型PCでサウンドにこだわるなど、どちらかというとAV機器のようなキャラクターがあったため、それを前面に出すためにカラーリングも今回のSシリーズとはまったく違うものになっています。当時は液晶一体型PCでの先進性を狙っていましたから、色で言えばシルバー基調でした。今回はそれと対極とは言いませんが、もう少し日常の道具というところを目指しました。

山口 初代Wシリーズでは、液晶一体型PCでテレビを内蔵していることもあり、ハイエンドマシン、フラッグシップ機という位置付けもあり、ちょっと男っぽくと言いますか、“AV調”という方向に持っていきました。それが基本になって、次のWシリーズでは32インチと20インチという2つの液晶サイズを用意しました。32インチはフラッグシップ的なAV調で男っぽく受け取られるところがあり、一方、20インチは現在のSシリーズに近いコンセプトにしました。それはインテリア性を考えて、同じWシリーズでも画面サイズで方向性を変えています。

 液晶一体型PCの方向として、“エンターテインメント性”と“インテリア性”という二面をデザインとしてどう表現していくかというときに、主に画面サイズというのが大事になってきます。大画面だとあまりインテリア性ばかり狙っても逆に浮いてしまう傾向がありますから、ベーシックなサイズである20インチはインテリア性を持たせて、ニュートラルなキャラクターになるカラーリングを選んでいくことになります。

――「エンターテインメント性」と「インテリア性」の境界となる液晶ディスプレイのサイズは何インチでしょうか?

山口 “大画面感覚”は時代によって変わっていきますし、画面サイズで区切るのは難しいところです。26インチモデルを発売した当時は、我々も大きい画面と思っていましたが、今では30インチを超えないと大画面をアピールできません。ただし、このクラスはパーソナルで使うにはやや大きめだと思います。そういう意味では、強いて言えば境目は20インチくらいでしょうか。30インチ前後からエンターテインメントを表現するのに最適な素材だといえるでしょう。

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