NECがこの秋モデルで投入した「VALUESTAR S」は、2006年春モデルの「VALUESTAR R」の後継となる液晶一体型PCだ。先のレビュー記事でも紹介した通り、同社の液晶一体型PCは、このVALUESTAR Sに加えて上位シリーズの「VALUESTAR W」が存在する。VALUESTAR Wは液晶ディスプレイのパネルサイズが32インチワイド/20インチワイド/17インチとバリエーションがあり、地上デジタル放送の視聴に重点を置いたシリーズなのに対し、VALUESTAR Sはパネルサイズが20インチワイド/17インチのみで、テレビ機能をアナログ放送に抑えたお手ごろなモデルとなっている。
なお、旧機種となる「VALUESTAR R」は、それまでの「VALUESTAR SR」から2006年4月にモデルチェンジを行ったばかりで、世代交代のタイミングが早いと思われるかもしれない。しかし、VALUESTAR RがVALUESTAR Wと同じボディ形状で、なおかつ秋冬モデルではローエンドとして実質的に統合されたという事情があり、矢継ぎ早の新モデル投入となったようだ。とはいえ、2005年の春モデルを最後に消滅した「VALUESTAR S」のシリーズ名を復活させただけあって、見どころのある1台に仕上げられている。
店頭販売用は全3モデルで展開されるが、ここではBTO対応でスペックを好みに変更できる同社の直販チャンネル「NEC Direct」の「VALUESTAR G タイプS」をピックアップした。
まず液晶ディスプレイだが、4:3のスクエアタイプにこだわっていたVALUESTAR SR/Rとは異なり、本機では20インチワイドと17インチスクエアの2種類のパネルが用意された。とくに、20インチワイドは解像度が1680×1050ドットと広いのがポイントで、同じ20インチワイドでも1360×768ドット表示のVALUESTAR Wと比べて約1.7倍もの情報量を誇る。PCの画面を表示させた時にドットが大きく感じることもなく、複数のウィンドウを開いて作業しても画面の狭さを感じずにすむのがうれしい。また、20インチワイド液晶は色再現域が広く、応答速度も8ms(白→黒+黒→白)と高速なスーパーシャインビューEX2液晶を、17インチがスーパーシャインビューEX液晶を採用しており、いずれも発色や輝度、視野角に関して不満はない。
内部のアーキテクチャも一新されており、CPUはデスクトップPC用のPentium 4/Celeron DからノートPC用のCore Duo/Celeron Mに変わった。これにより、消費電力の低減と同時に静音性も向上した。メーカーの測定では、同じサイズの液晶ディスプレイを搭載する以前のモデルと比べ、最大消費電力が約40%前後も削減できたという(20インチモデルの場合)。また、チップセットもIntel 945GZからATI Radeon Xpress 1250/IXP460となった。いずれもグラフィックス機能統合型のチップセットだが、後者はRadeonシリーズでおなじみの動画再生支援技術AVIVOをサポートすることでDVD-Videoなどの映像も鮮明に楽しめるのがポイントだ。ただ、拡張スロットは用意されていないので、購入後にグラフィックス機能を強化することはできない。
ちなみに、BTOメニューではCPUにデュアルコアのCore Duo T2300E(1.66GHz)とCeleron M 430(1.73GHz)が用意されている。また、PC2-5300対応のDDR2メモリは512Mバイト/1Gバイト/2Gバイト(いずれもSO-DIMM)、3.5インチのSerial ATA対応HDDは400/300/250/80Gバイトとなっており、光学ドライブはDVD±R DLメディアの書き込みをサポートしたDVDスーパーマルチドライブに固定だ。
ほかにも、無線高速化技術の「Super AG」や長距離化技術の「Atheros XR」に対応する無線LANモジュール(IEEE802.11a/g/b)を内蔵できるのがユニークだ。ちなみに、有線LANはギガビットLANをサポートしており通信環境に不満はない。
スペックに現れにくい部分だが、使いやすさを追求したという新デザインのボディにも注目したい。ボディサイズは616(幅)×293(奥行き)×435(高さ)ミリと20インチのVALUESTAR Wより幅が約9センチ、奥行きで6センチ、高さで3.5センチほど小型になっており、省スペース化に貢献している。また、ディスプレイの角度調節に関しては、左右がそれぞれ45度、上15度、下5度の範囲で自由に動かせ、スイベル時は円形の台座がスムーズに回転するようになっているため、力を入れることなく片手で調節できる。これまでのモデルは、スイベルかチルトのいずれかしかサポートしていなかったことを考えると、素直に評価したいところだ。
主要なコネクタ類を側面に用意しているVALUESTAR Wと異なり、本機ではすべて背面にまとめられており、ケーブルが横から張り出すことなく配線がスマートに行えるようになったのもうれしいところだ。
前面のパネルは3分割されており、左端のパネル内にはSDメモリカード/メモリースティック/xDピクチャーカード対応のメモリカードスロットや2基のUSB 2.0端子、4ピンのIEEE1394端子、サウンド端子、輝度調節ボタンが、右端のパネルにはDVDスーパーマルチドライブが収められている。中央部は、各種インジケータランプに加え、電源ランプやHDDのアクセスランプを消したり、録画時に液晶ディスプレイやスピーカをオフにする消灯ボタンや電源ボタン、テレビボタンなどを配置しており、アクセスしやすい前面パネルを余すところなく利用している。細かいところでは、ボタンやインジケータ類が、すべて日本語表記になっているのもユーザーフレンドリーと言えるだろう。
本体の底面にキーボードを収納できるスライドインキーボード構造は受け継がれており、VALUESTAR Wと同様にキーボードの出し入れに応じて特定のアプリケーションを自動起動する機能も加えられた。キーボード自体は薄型ながら、しっかりとしたタイピングが行える点も見逃せない。キーボードはマウスとともに無線式となっており、約3メートルまでの範囲で操作が行える。
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